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【一口法話】世界が戦争へと向かう中で私たちは

▼この内容は動画でもご覧いただけます。

ロシアとウクライナの戦争や、ハマスとイスラエルの戦争が始まってしばらく経過しました。

戦争は一度始まってしまうと、中々止められませんね。

どちらかが一方的に勝ったり負けたりするか、もしくはどちらとも疲弊して妥協点を見出すまでは、戦争は中々止まらないそうです。

戦争をしてはいけないと思うのは、戦争になれば、戦争や国家が中心になり、一人ひとりの生活や願いは後回しにされてしまうことです。

「もう戦争をやめてくれ」「日々を穏やかに過ごさせてくれ」と、一人がどんなに叫んでも、その声は届かず、戦争を終わらせることはできません。

戦争になれば、一番影響を受けるのは、社会的に立場の弱い人たちです。

ガザでも食料が入らず、多くの人たちが飢えていますが、やせこけて今にも餓死しそうな子どもたちなどの様子を見ると、胸が詰まります。

流れてくるニュースを目にして、心を痛めている方も多いのではないでしょうか。

◆戦争は煩悩を剥き出しにする

戦争状態では、多くの人が怒りや憎しみ、悲しみ、恐怖などの感情を抱き、それに流されやすくなります。

仏教の煩悩という言葉を使えば、社会が煩悩剥き出しの状態になってしまうのが戦争です。

自分の身内が殺されれば、怒りや憎しみの感情がわくでしょうし、相手に攻められる状況の中で、相手を尊ぶことは難しいものです。

煩悩が剥き出しの状態では、力あるものが弱いものを虐(しいた)げても構わないという弱肉強食の論理で物事が動き、それが正当化されます。

一人ひとりが自らの生活を送ることができるのは、社会が安定していることが条件であることがよく分かります。

繰り返しますが、戦争になれば一人ひとりの生活や願いは後回しにされます。

しかしそれでも、人間は戦争を繰り返しています。

欲や怒りや愚かさといった人間の煩悩の根深さを思わずにはいられません。

どの国のどの方が言われたことかはっきりと思い出せないのですが、記憶に残っている言葉があります。

「私たちは戦争をしないために、あらゆる努力をする必要があります。あらゆる努力をしなければ、平和は実現しません。平和は当たり前ではありません。平和の有り難みが忘れられた時、人類は戦争を始めます。平和とは、それほど脆いものなのです。」

他国から攻められる脅威を感じれば、軍事力を増強しようと思います。

身内が殺されれば、怒りや憎しみに支配されてしまう私たちです。

何かをきっかけに戦争が始まれば、一人ひとりの生活や願いは後回しにされ、戦争を止めることはできません。

◆法蔵菩薩(阿弥陀仏)の願い

さて、浄土真宗で大切にされている『仏説無量寿経』(ぶっせつむりょうじゅきょう)というお経には、阿弥陀仏(あみだぶつ)という仏様の物語が説かれています。

お経によれば、阿弥陀仏はもともと一人の人間でした。

一人の人間であり、国王であった人が、生きとしいけるものの救済を願い、発心します。

その人が、後の阿弥陀仏である法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)です。

法蔵菩薩の願いとは、生きとしいける全てのものが互いに尊び合い、心安らかに日々を送れるような世界の実現でした。

法蔵菩薩の願いは、四十八願(四十八の願い)と言われるように色々ありますが、このような願いをおこしたと言っても差し支えないかと思います。

生きとしいける全てのものが互いに尊び合い、心安らかに日々を送れるような世界を実現するにはどうしたらよいだろうか。

そうした願いを実現するために、法蔵菩薩は考えに考え、とてつもない時間をかけて修行に励まれたと経典には説かれています。

このエピソードからは、全てのものが平和で穏やかに過ごせる世界の実現とは、それぼど難しいものであることが表現されているようにも思えます。

愛知県にある應仁寺(おうにんじ)というお寺には、法蔵菩薩が考えに考え、修行に励まれている様子を表した像があります。

「五劫思惟像」(ごこうしゆいぞう)と言われるその法蔵菩薩像は、やせこけ、憔悴しきり、頭を傾けて考えているような姿の像です。

私はまだ、この像を直接見たことはないのですが、映像や写真を見て息をのみました。

明治時代につくられた像だそうで、ルーツは富山県などにあるそうです。

もし機会があれば、愛知県應仁寺の五劫思惟像をご覧になってみてください。

ともかく、法蔵菩薩の「生きとしいけるものの救済」という願いを実現することの困難さが、こうした像からも感じとれます。

そうしたことを表現しようと作られたものなのか、不明ではありますが、私はその像を見て、そのようなことを感じました。

◆平和の実現には努力を要する

さて、法蔵菩薩が考えに考え、とてつもない時間をかけて修行に励まれたというエピソードからは、全てのものが平和で穏やかに過ごせる世界の実現とは、それぼど難しいものであることが表現されているようにも思えます。

私たちが民族や文化や考え方の違いを超えて互いに理解し合ったり、心安らかに日々を送れるような環境をつくることは、実はとてつもなく難しいことであることが思われます。

平和とは、あらゆる努力をしないと実現しないこと。維持できないこと。

一度戦争を始めたら後戻りはできないこと。そして一人ひとりの生活や願いは後回しにされてしまうこと。

終戦から七十数年が経つ日本で、私も含め戦争の本当の悲惨さを感じたことのない世代が多くをしめる現代において、こうしたことを私たちは今一度考える時期に来ているのではないでしょうか。

今世界は、戦争に傾きつつあります。

生きとしいける全てのものが互いに尊び合い、心安らかに日々を送れるような世界を実現したい。

そうした法蔵菩薩(阿弥陀仏)の願いの物語は、血で血を洗うような争いや、飢えに苦しむ人々の願いが投影されて生まれてきたものかもしれません。

そのような法蔵菩薩(阿弥陀仏)の願いを聞かせていただきながら、私たちもまた平和で穏やかな社会の維持のために、できることをしていくことが大事なことではないでしょうか。

そしてまた、この話を私たちにぐっと引き寄せると、家庭や職場や友人関係においても、良好な状態をいかに保てるのかという話にもつながります。

円満な家庭や、良い職場環境、人間関係なども、互いの努力なしにはできないということを思わされます。

平和の大切さや、周囲の良い環境づくりの大切さに思い至り、その実現のために、自分も少しはできることがあるのではないかと気付かされてくる。

お経の内容に触れ、阿弥陀仏の物語に触れることで、そういう視点や生き方が転換されていくということがあろうかと思います。

いかがだったでしょうか。

今回は、「世界が戦争へと向かう中で私たちは」というテーマで、お話をさせていただきました。

皆様、どのようなことを感じられたでしょうか。また是非、感想などもお聞かせください。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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