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【一口法話】死んだらどうなるのか。6つの考え方

さて、今回は、「死後の世界観」について、ご一緒に考えてみたいと思います。

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「身近な人が亡くなって、今どうしているだろうか?」という疑問や、「自分自身が亡くなったらどうなるのだろうか?」という疑問は、誰しもが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

こうした「死後の世界観」、つまり「死んだらどうなるのか?」という問いは、人類が抱えてきた問いの中でも、最も大きなものの一つだろうと思います。

しかし、証明が難しいことでもありますし、自分が亡くなることはあまり考えたくはないことでしょう。ただし、「死んだらどうなるのか?」という問いに対して、何らかの答えを持っておくことで、安心したり、納得したり、死別の寂しさの中にも温もりが感じられるということもあるかと思います。

「死後の世界観」について、あまり体系立てて考える機会はないかもしれません。そこで今回は、短い時間ではありますが、ご一緒に考えてみたいと思います。

今回、参考にさせていただいたのは、伊佐敷隆弘(いさしきたかひろ)さんという方が書かれた『死んだらどうなるのか?』という本です。

この本には、「死後の世界観」には、大きく6つのパターンがあると記されています。「死んだらどうなるのか?」という考え方について、日本では大きく6つに分類できるのではないかと示されているのですね。

「死後の世界観」の6つの考え方を紹介しつつ、また浄土真宗ではどのように考えているのかも補足しながら、お話したいと思います。

◆死んだらどうなるのか?

「死んだらどうなるのか?」について、本ではこのように示されています。

①他の人間や動物に生まれ変わる
②別の世界で永遠に生き続ける
③すぐそばで子孫を見守る
④子孫の命の中に生き続ける
⑤自然の中に還る
⑥完全に消滅する

日本における「死後の世界観」は、おおよそこの6つに分類できるようですが、皆様どう感じられますか。自分が思っていたことに近いものはあるでしょうか。多くの人は、この6つの考え方のうちのいくつかが入り混じっているのではないかと記されていますが、いかがでしょうか。

簡単に、一つずつ見ていきましょう。

◆他の人間や動物に生まれ変わる

一つ目の「他の人間や動物に生まれ変わる」とは、「輪廻」の考え方があります。「輪廻」とは、迷いの世界を生まれ変わり、死に変わりし続けるという考え方です。

自分がおこなった行為などの影響により、死後人間に生まれ変わったり、畜生という動物などに生まれ変わったり、地獄に生まれ変わったりするというような考え方です。「輪廻」は、古来からインドでもあった考え方で、それを仏教でも採用し、日本に伝わってきた考え方です。

◆別の世界で永遠に生き続ける

二つ目の「別の世界で永遠に生き続ける」とは、仏様の浄土へ往き生まれるという考え方があります。そして、浄土真宗ではこの考え方をします。

浄土真宗では、この世でのいのち尽きれば、阿弥陀仏という仏様の力、はたらきによって、仏の国である浄土に往き生まれていくと考えます。浄土に往き生まれることを、往生と言います。そして、仏の国に往き生まれたら、安らかな仏のさとりをひらくと考えます。つまり、仏様になるということです。これを、成仏と言います。

こうした世界観が、「別の世界で永遠に生き続ける」という考え方に分類されます。

ちなみに、キリスト教の考え方も、この「別の世界で永遠に生き続ける」というところに分類されると、本では記されていました。

◆すぐそばで子孫を見守る

三つ目の「すぐそばで子孫を見守る」とは、日本に古来からあった考え方と言われます。

普段は、山の上から子孫を見守っていて、お盆に先祖などの亡くなった方が戻って来て、またかえっていくという考え方があります。

お盆にお墓参りやお盆参りをしたり、迎え火や送り火をするといった文化が、日本には未だにありますね。これは、亡くなった人が無になるのではなく、「すぐそばで子孫を見守る」という世界観に基づいた文化であると言えます。

そして、こうしたお盆などの考え方は、仏教的な考え方と思われていますが、もともとは日本に古来からあった考え方だろうと言われています。

また、この本には書いてはいませんが、浄土真宗の世界観でも、「すぐそばで子孫を見守る」という考え方に近い考え方があります。専門用語になりますが、「還相」(げんそう)という考え方です。

浄土真宗では、この世でのいのち尽きたものは、仏様の浄土に往き生まれ、仏のさとりをひらくという世界観があると言いました。そしてその後、再びこの世に還り来て、縁のある方々を仏縁に導くはたらきをするという考え方があります。こうしたこの世に還り来るさまを、「還相」と言います。この「還相」の考え方も、「すぐそばで子孫を見守る」というものに近い考え方かと思います。

◆子孫の命の中に生き続ける

四つ目の「子孫の命の中に生き続ける」とは、儒教の考え方だと説明されていました。

儒教では、先祖と自分と子孫の命が、連続した生命体であると捉え、自分が亡くなっても、その「子孫の命の中に生き続ける」と考えるようです。先祖から自分、子孫へと連続している一つの生命体があり、その中の一部が個人だという考え方をするようです。この連続した一つの生命のことを、「家」と呼ぶそうです。

儒教というと、私たちに直接は関係ないもののように感じられるかもしれませんが、一周忌や三回忌などの法事は、儒教の考え方が仏教に取り入れられたものとも言われます。また、位牌も儒教の影響があると言われています。先祖を大事にするという感覚も、こうした儒教の影響があるかもしれませんね。

◆自然の中に還る

五つ目の「自然の中に還る」とは、「死ぬと自然の中に広がって溶け込む」というような考え方です。

亡くなった後は、風や土や海や、木や花や落ち葉のような自然の一部となるというような考え方です。遺された方は、亡くなった方の存在を自然の中に見出すということもあるでしょう。

「自然の中に還る」とあるように、人間とはもともと自然の一部であるとか、もともと自然の中にいたという考え方が前提となっているようです。この考え方の起源は、よく分からないそうですが、人間が持っている死生観の中でも最も古いものかもしれないと記されていました。

樹木葬や海洋散骨や、生まれた場所で眠りたいといった考え方などは、この世界観が背景になっているように思われます。

◆完全に消滅する

六つ目の「完全に消滅する」とは、死後は何もないという考え方です。

しかし、そう考える人でも、亡くなった方のお墓参りをして話しかけたりする場合もあります。

「死後の世界観」について、6つの考え方を見てきました。このうちの一つだけの考え方の人もいるかもしれませんが、多くの人は、この6つの考え方のうちのいくつかが入り混じっているのではないかと考察されていました。

それはなぜなら、日本にはもともと子孫を見守るというような考え方があり、その後の6世紀頃に仏教や儒教の考え方が日本に伝わり、16世紀にはキリスト教の考え方も日本に伝わりました。長い時間の中で、様々な考え方が地層のように、私たちの中に積み重なり、混ざり合って捉えているのではないかと、この本では指摘されています。

皆様は、「死後の世界観」について、どんな考え方をしているでしょうか。

最初にも申しましたが、「身近な人が亡くなって、今どうしているだろうか?」という疑問や、「自分自身が亡くなったらどうなるのだろうか?」という疑問は、人類が抱えてきた問いの中でも、最も大きなものの一つだろうと思います。

浄土真宗においては、阿弥陀仏という仏様がいつも見護っておられ、私たちがこの世でのいのちが尽きた時には、必ず浄土へ迎え摂ってくださるという世界観をとても大切にしています。

娘様を若くして亡くしたお母様に、以前お話を伺ったことがあります。「娘が亡くなって、寂しくて寂しくてたまりませんでした。でも、娘が亡くなった時に、阿弥陀様の手に包まれて往ったのかなと思えた時に、救われた気持ちになりました」。そのようにおっしゃっていました。

また、浄土真宗の教えに熱心な方が、病院で最期を迎えた時、家族に見守られながら、皆で「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」とお念仏を称えながら亡くなっていったそうです。その時、その亡くなった方は、「ああ、阿弥陀様」と言って息を引き取られたそうです。

「死後の世界観」に対して、何らかの答えを持っておくことで、私たちは安心したり、納得したり、死別の寂しさの中にも温もりが感じられるということがあるかと思います。今回の話から、そうしたことを考えてみる一助にしていただければ幸いです。


合掌
福岡県糟屋郡 信行寺(浄土真宗本願寺派)
神崎修生

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