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海獣学者、クジラを解剖する をよみました

前のバッタの研究者の本読みましたが、バッタとはまた違う苦労を感じます。今回は日本の国立科学博物館に勤務されている方の本。

海の獣って、わからないことだらけ

クジラって見た目は知られているけれど、その生態はわからないことだらけ。
陸の動物みたいにカメラをしかけて観察とかも難しいし、望遠カメラとかも使えないし、川魚よりも行動範囲はずっと広いし、熱帯魚みたいに飼育するわけにもいかない。アシカやアザラシのように陸上生活も長い種は観察もできるし、イルカくらいの大きさであれば飼育もできるけれど、クジラみたいにずっと海中にいる上に深くまで潜ってしまったりする生物は観察が難しいから全然研究が進まない。

じゃあどうするのかというと、打ち上げられたクジラなどの海の獣を解剖して、胃の内容物とかから食性を推察したりする。たいへんだ。

日本の砂浜に打ち上がる海の獣は、年間300件!

海の動物たちが砂浜に打ち上がるのを『ストランディング』と呼ぶ。島国の日本では年間300件ほど起きている。つまりほぼ毎日、日本のどこかで、なにかしらが打ち上がっているのだ。
海に帰せるものもいるが、発見時で死んでしまっていることもしばしば。作者のお仕事は、この獣たちを解剖し、時には標本にすること。

クジラの標本って、やっぱり大変…

標本作りにも、色々な手段がある。
大事になるのは『骨から保存に際して余分となるものを綺麗に削ぎ落とすこと』なのだが、虫埋めたり煮たり、色々な手段が使われる。5メートルまでの生物であれば、国立科学博物館では煮るための機械(晒骨機)が存在するのだが、クジラの体長はそれよりも大きいことがほとんど。博物館まで持って帰るのすら難しい。
この場合どうするかというと、埋める。そして2年後くらいになると、ちょうどいい具合に骨格標本できる骨になっているのだ。だが、埋めすぎてもいけない。いけないのだが、予算の関係で掘り出すことができなかったりすることもある。砂浜に埋めた場合は、地形が変わってしまってなかなかみつからない場合もある。クジラの骨格はそうして、大変な苦労をして、国立科学博物館に展示されているのだ。

科博行った時、海獣を見る目が変わる本

という感じで、クジラの標本がとても大変な話が印象に残ってるが、クジラに限らない海の獣の話、そして標本以外にも生きてる海の獣の生態も語られている。アザラシの話もあって、科博とか水族館とか行きたくなる本である。ちなみに国立科学博物館は今は入場予約が必要らしいので、行く方はお気をつけて。私も3回目のワクチン接種が終わったら行こうと思う。

【おまけ】関連しそうで関連しない推し本 - 山のクジラを獲りたくて

関連しそうで関連しないちょっと関連する(クジラという語と出版してる文庫が同じ)本なのだが、山のクジラを獲りたくてという本もおすすめ。こちらは山のクジラ(クマ)を獲る猟師の本で、今さっき死に至った山のクジラを食べるために解体するのだが、海のクジラの解剖とは大きく異なるのが興味深い。


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