人生芸術家
私は幼いときから、人生を俯瞰的にみがちだった。
自分自身、人生を生きている主体でありながら、同時にそれを自由に造形したい芸術家のような気分で、創造主として人生を完璧な芸術作品のようにしたいという強い思いを持っていた。
小学校の卒業論文のテーマは「満足」。
「余の辞書に不可能という文字はない」というナポレオンの名言を引用し、自分の無限の可能性と、約束されているかのような華やかな未来に何の疑いも抱いていなかった。
ただ、その頃描いていた「人生」は、偉人伝に書いてあるような、いわゆる波乱万丈な人生。波あり、谷ありが人生の醍醐味だと本気で思っていた。
しかし、その後、いろんな外の世界を見たり、近い人との別れを経験し、小学校のとき思い描いていた当初の夢からはいつの間にか逸れ、気づくと私のコントロールから完全に離れた、人生の側道に私は立っていた。
だけど、それはそれで、まっさらな台本に、また新しい人生のストーリーを紡いでいる気分で、楽しかった。
思いがけない出会い、別れ、そして夢のようにロマンティックな気分も味わった。全部、小学生の私には想像できなかった、予想以上の贈り物。
酸いも甘いもある程度経験した今、さすがに、今は波乱万丈の人生を求めてはいない。今思うと、それは単に苦しみへの憧れに過ぎなかった。
だが、幸いなことに、まだ私には結構な夢と、展望がある。
今、私はまだ何者でもないし、何も持っていない。
しかし、それだけに、まだこれからどんな人生も自由に生み出せると思っている。
これは数日前に28歳になったばかりの私の、まっさらな人生の記録。
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