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【舞台感想】ルパン三世たぁ俺がことだぁ/新作歌舞伎「流白浪燦星」

12月15日に新橋演舞場にて新作歌舞伎「流白浪燦星」を見てきました。


歌舞伎版「ルパン三世」

白浪とは盗賊のこと。「流白浪燦星」と書いてルパン三世と読みます。
あの劇画やアニメで有名なルパン三世が安土桃山時代に居たら?という荒唐無稽な設定です。
ルパン三世が安土桃山時代(秀吉の晩年として1590年代?)にいたとして、そしたらおじいさんのアルセーヌ・ルパンは大航海時代の序盤に活躍した人になってしまう???ってくらいに笑。
なんですが、「細けぇこたぁいいんだよ」ってことでサクッと物語世界に入っていけるのが歌舞伎の良いところかな。

14日に観劇する歌舞伎座の「天守物語」が夜の公演のため宿泊は必至、翌15日はどう過ごそうかなぁと考えておりました。
宙組が公演するなら滑り込めないかなぁとギリギリまで粘ってみましたが中止となってしまったので気になっていたこの新作歌舞伎のルパン三世を見ることに決めました。

そんなかんじで気軽にチケットを取ったのですが、これが期待以上によかったです。
エンタメに振り切った初心者でも楽しめる舞台でありつつしっかり歌舞伎!!でした。

石川五右衛門の楼門五三桐(「絶景かな絶景かな」)に峰不二子の花魁道中、「白浪五人男」を模したルパン・次元・不二子・五ェ門・銭形の口上まである贅沢三昧な出し物でした。
他にも歌舞伎の名シーンを彷彿とさせる場面や有名なルパン一味の決めゼリフもふんだんで「待ってました!!」と心で快哉を叫びまくりました。
「ルパン三世」はテレビアニメを毎週見ていた世代でだいたいのキャラクターや決めゼリフは知っているつもりですが、おそらく私にはわからないけれどコアな笑いもとっていたみたいで原作ファンは嬉しいだろうなぁと思いました。

筋書きは荒唐無稽ながら筋が通っていて風刺も効いているし傾城糸星あたりの物語は思わず涙したりして。
決戦の舞台が伊都国(糸島)なのも福岡県民としては嬉しかったです。
糸星=いとほし(愛おし)=伊都☆☆☆・・なるほど。頭いいなぁ。と脚本とネーミングにも感心。

早替りに本水とケレンもたっぷり、荒唐無稽に傾奇いて江戸時代の芝居小屋ってこんな感じだったのかも。
浄瑠璃はもとより大薩摩も聞けてそれもびっくり。
歌舞伎役者の矜持も感じられ感心しつつ、これでもかのエンタメ三昧で大満足でした。

しかし宝塚歌劇では18世紀末のフランスでマリー・アントワネットやカリオストロ伯爵と絡んでいたし、歌舞伎では安土桃山(16世紀末)で石川五ェ門に真柴久吉(豊臣秀吉)と・・。次なるルパン三世はどこでどういう演出で見られるのかなぁと新たな楽しみもできました。

CAST

ルパン三世☆片岡 愛之助 愛嬌たっぷりの愛之助さんらしいルパンでした。やっぱりもみあげはないとね。声もアニメに寄せていて達者。巻き舌の「ルパァ~ン三世」や「不二子ちゃ~ぁん」が聞けて最高でした。
石川五ェ門☆尾上 松也
 まだルパンの仲間になる前という設定。やっぱり楼門五三桐やるんだ~~~からのいつものルパン三世の五ェ門スタイルへの早替えに爆上がりしました。傾城糸星との仲はさすが二枚目、せつない場面も見どころでした。
次元大介☆市川 笑三郎
 ルパンがだたの理解不能なお調子者に見えないのは次元のルパンのセリフへの返しやフォローなどでルパンの真意をさりげなく言葉にするからこそなんだなぁと思いました。紙巻煙草ではなく煙管、トレードマークの顎鬚はそのままにハット代わりに伸び放題の(にしてはきれいに揃っている)月代。やっぱり次元はダンディでニヒル。股旅姿の道中合羽の裏地が緑でおしゃれでした。
峰不二子☆市川 笑也
 ルパンとの関係性、敵役との関係性、やっぱり不二子はこうでなくちゃ。不二子のテーマにのせた2幕頭の花魁道中は見応えがありました。あの高下駄であの優雅さ。素敵でした。
銭形警部☆市川 中車
 愛之助さんルパンなら中車さんが銭形でしょ。と思っていたらそのとおりに笑。銭形警部が銭形刑部に。投げ銭も寛永通宝じゃなくて永楽通宝に。その永楽通宝を染め抜いた着物がおしゃれ。テンガロンハットの代わりに変わり烏帽子、手にする十手はむしろ先祖返り??? ていうか銭形警部のおじいさん銭形平次(江戸時代)との関係は??とか考えても仕方がないか。細けぇことは・・(以下略)

傾城糸星/伊都之大王☆尾上 右近
 見ているだけでうっとりの花魁姿。ゴージャス&マーヴェラス。嫋やかな花魁とラスボスの早替えにびっくりしました。(個人的に9年前に見た愛らしい亀姫が・・と)大詰めの五ェ門との場面は泣けました。
長須登美衛門☆中村 鷹之資
 見るからに忠心の端正な侍姿で話す内容がぶっとんでいるギャップに萌えました。
牢名主九十三郎☆市川 寿猿
 役名に齢が~老美男子寿猿さんがこの役名で牢名主として舞台に存在することが楽しくて思わず笑みが・・。ルパン三世のことはご存知じゃなかったらしいのも流石です。
唐句麗屋銀座衛門☆市川 猿弥
 丸菱商事の部長さんが唐句麗屋さんに??あれ逆かな(わかる人にはわかるネタらしい「VIVANT」?)。
真柴久吉☆坂東 彌十郎
 北条時政の生まれ変わりと言われていたのは「鎌倉殿の13人」で演じられていたからですよね笑。さすがの久吉(秀吉)で説得力ありありでした。

2幕頭の片岡千壽さん演じる通人萬望軒さん(マモーではないの?)の説明もためになって面白かったです。
あらゆるところで初心者にやさしい演目でありがたかったです。
これは皆でみてワイワイやりたい演目だなぁと思いました。
(お正月に家族で見逃し配信見ようかな)

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