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習慣の動物


40%のデフォルトを利用する

小説家の村上春樹氏はあるインタビューでこう語っている。

とにかく自分をペースに乗せてしまうこと。自分を習慣の動物にしてしまうこと。一日十枚書くと決めたら、何があろうと十枚書く。

習慣を形成することは、今日明日でできることではないが、一度、それが形成されてデフォルトにしてしまえば、これほどに怠惰なことはない。

モチベーションに関係なく、日々の日常となり、やらないと気持ち悪くなる。

やらないといられなくなる。

そこまで持っていくのが理想である。

はじめに村上春樹氏の言葉を引用したが、自分を習慣の動物にしてしまえば、迷いがなくなるのである。

「やるか、やらないか?今日は気分があまり乗らないな」とか、「部屋が散らかっているけど、仕事から帰ってきて疲れているから、また明日でいいや」と毎回、気分によって行動が決まってくると、その都度、決断を迫られることとなり、脳のリソースが無駄に消費されることとなる。

習慣の動物と化してしまえば、「やるか、やらないか」は消去され、「やる」という一択しかないわけだがら、認知的負荷はなく逆に楽になる。

そして習慣づくりとは、

反復やドリルを通して、慣れた合図への一貫した反応を身につけ、成功するたびに自分に報酬を与える方法をいう。

方法は数多くあるが、その中から効果的とされるTipsを紹介したい。

相乗り

である。

どういうことかというと、そもそも人は毎日の行動の約40%を習慣に頼っているという。
1日のほぼ半数が意識していない無意識レベルの行動に拠っているのである。

40%にも及ぶ、その既に習慣となっている行動に形成したい新しい習慣を結びつける。

つまり、「相乗り」させると、抜群に結果が良くなるというのである。

相乗り戦略

例えば、片づけの習慣を始めたいとする。

朝起きてコーヒーを飲む習慣がすでにあるならば、食器を選ぶ際についでに最近使ってない食器を探してみて、いらなそうなものを処分するとか、お湯をわかしている数分間に冷蔵庫内とかキッチン周りのいらなそうなモノや食材を処分する行動を相乗りさせるといった具合である。

また、毎日その日に着る服を選ぶというのも、なんとはなしに習慣である。

この服選びという既存の習慣に、クローゼットの片づけ習慣を相乗りさせる。

選ぶ際に同時に最近着ていない服や、下手したらここ数年も袖を通していない服があれば、自分と対話してもう着ないようなら、譲るか捨てるか、寄付したりする。
ついでにクイックルワイパーでさっと床掃除したり、洗濯物をこのタイミングで畳んだり、ハンガーにかける。

既存の習慣は日々の生活に根差しているものなので、今後もそうそうになくなるものではない。
ほぼ無意識レベルへと昇華されているので、「やるか、やらないか」という選択はなく、「やるか」一択となっているので、そこに少しちょい足しするのである。

こうしたものに、ちょいっと新規の習慣を相乗りさせてあげると、脳は「一つ二つくらいの新しい習慣はしょうがない。それくらい訳ないさ」と騙されてくれるのである。

こうして、素の状態から新規の習慣を生活に滑り込ませるよりも、断然と身につきやすいのである。

わたしはこの「相乗り」戦略を利用して、トイレ掃除と風呂掃除を習慣としてみて、功を奏している。

わたしが住んでいる地域は、火曜日と金曜日が燃えるゴミの日であることから、その日にゴミを捨てるという当たり前の習慣に相乗りさせる形で、朝起きてトイレに行く際に準備しておいた掃除用具一式を使って、ルーティンの掃除を行い、そのままゴミとして捨てる。

入浴もこれはもう習慣となっている行為であり、まず間違いなく毎日行うものである。
我が家では、最後に入浴した人が風呂掃除をすることになっているが、浴室をスポンジで洗うと同時に床のタイルもそのまま洗うことになっている。
そして、最後はコストコのマイクロファイバークロスで壁面の水滴を拭き上げるのが仕上げとなる。
こうすれば、湿潤環境にある風呂場がカビの温床となるリスクも減るし、床も毎日洗うことで、ヌメリとは無縁となる。

汚れてから、イヤイヤながら重い腰を上げてやるよりは断然と負担が軽くなったのである。
汚れる前にやるから気持ちも穏やかでいられる。

加えて、燃えるゴミの日である金曜日に合わせて、その前日の木曜日に排水溝の掃除を兼ねることとしている。
そこで出たゴミは翌日には、燃えるゴミとして処分されることとなる。

この相乗り戦略を使ってからは、忘れるということがなくなり、自分を習慣の動物化に成功できている。

正直、めんどくさいな、やりたくないなという気持ちは全くないといえば嘘になる。
相変わらず残されたままであるが、これはどうしようもない自然に湧き上がってくる感情として、抵抗はせずに俯瞰してやり過ごす。
習慣の動物として粛々とやるのみである。

毎日、服を選ばないとか風呂に入らないなんてことは、ほぼないのだから、ここにちょいと新しい習慣を付け足すのは訳ないのである。

この戦略を紹介している書籍『自分を変える方法』(ケイティ・ミルクマン/ダイヤモンド社)の著者も実際にこれを利用しているという。

著者が母親になりたてのとき、忙しくジムに行けなくなると、新しい毎日の運動習慣を始める必要性を痛感したという。

そこで、すでに確立していた習慣を探してみたのである。

利用できそうな既存の習慣として、「朝の洗顔」があったので、そこに「7分間のワークアウト」を相乗りさせてみたところ、以来ほとんど毎日欠かさずに続けているという。

この戦略はそれほど労せずともに、習慣形成へと結びつく。

人間の怠惰な性質を逆手に取った手法であり、行動経済学でいうところの「ナッジ」(軽くつつく、そっと押す、ある行動をそっと促す)である。

人がつねに行こうとしてしまう「最も楽な道」が、むしろ習慣形成においては慣れ親しんだ歩きやすい道となるのである。

習慣が継続できないで悩んでいる人には、おススメのTipsである。

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