ジュリアン・グリーンの《MOÏRA》ちょっと予想外だった

 若者の話ではあるけど、尊厳をどう扱うかとか言葉の捉え方の出発点から問うような話に見えた。どうして偏ってしまうのかとか、盲点とか、判然としない影色が、闇のような、ぼんやりした存在としての女性性の一部分(全てではなく、辺りを漂う要素としての限られた一面)と合わせて差し込まれて、投げかけられ、考えることを促すようだった。善悪とかバランスとかそういう問題とはちょっと違うことだと思う。
 だけど主人公が見ないようにしてるから踏み込まれきらないために、ここに出てくる女性たちやモイラは私には悲しかった。
(しばらく読んでいないために朧げな記憶だけど)それを、『甘い蜜の部屋』では解消してくれてたと思う。主題も書き手も時代もキャラクターの抱える背景や条件も違うけど。だから、全然違う話だけど、両方読むといい気がする。両方読んでほしい気がする。どちらかだと、どちらかしか分からない。両方読むと、少なくとも二つは分かる。それと、細部にわたって真摯に書こうとする書き手の眼差しの中の優しさにも気付かされる。この二つだけに絞られない、縛ってはいられないことも分かる。


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