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クラシック音楽と似ている曲あれこれ

クラシック音楽を聴いていると「あれ?この曲何かに似てない?」というものに時々出会います。
それが引用なのか、たまたまなのか、無意識に似てしまったのかはわかりません。
ただ、耳に残るフレーズってあるんだなと思うわけです。
そこで今回はそうした中から私が興味をそそられたものをいくつか紹介してみましょう。


CMソング① 亀田製菓

まずは鉄板ネタ、亀田製菓のCMソングです。
これは元ネタもご存じの方がおられるかもしれませんね。

似ている曲はプッチーニ作曲のオペラ『ラ・ボエーム』第二幕幕切れでの合唱です。
そりゃ、旋律の魔術師プッチーニの曲なら頭から離れなくても仕方ありませんね。

ご紹介する映像は、いつも生き生きとした舞台を提供してくれる素晴らしいオペラ劇場(有名な建物ばかりじゃなく)のシドニーオペラハウスでのライブです。

CMソング② 長谷工グループ

これも印象的な曲ですよね。長谷工グループのCM「わかるんだ」シリーズ。
リズムの独特さ(4拍子と3拍子の変拍子)がネットで話題になったりしてました。

このCMソングも似ている曲があります。
またしてもプッチーニの曲『グローリア・ミサ』より第二曲“グローリア”。
さすがキャッチーなメロディの天才です。
しかもこちらは安定の4拍子。

民謡を引用したつもりが著作権侵害

次は少し変わったエピソードです。
ご機嫌なイタリアの歌『フニクリフニクラ』はご存じでしょうか。
日本では童謡『鬼のパンツ』で有名な曲です。

この曲と似ているのはリヒャルト・シュトラウス作曲の交響的幻想曲『イタリアから』の第四楽章です。
これはシュトラウスが『フニクリフニクラ』をナポリ民謡だと思って主題を引用したのですが、実はこれが大間違い。
『フニクリフニクラ」はナポリの登山電車のCMソングとして作曲されたものでした。

つまりこれはCMソングにクラシック音楽が似てしまった珍しいパターン。
著作権侵害訴訟を起こされ敗訴したシュトラウスは、この曲が演奏されるたびに元の作曲者に著作権料を払う羽目になってしまったとのことです。

名曲から名曲へ

ここからはCMソングを離れてクラシック音楽同士の類似曲を見てみましょう。
はっきり引用かはわかりませんが、耳に残る曲というのは再び出てきてしまうものなのでしょうか。

まずはモーツァルトのオペラ『魔笛』からパパゲーノの登場シーン。
イントロの最後のフレーズを覚えておいてください。
歌が始まったら一旦ストップでいいです。

次にベートーヴェン交響曲第九番『合唱』の第四楽章です。
バス歌手がソロで歌った後に合唱が続いて、オーケストラが締めくくるところを聞き逃さないでください。(動画が始まって数秒です。)

ほんの一瞬似たところを見つけたからって何てことはありませんし、クラシック音楽で似たフレーズなんか無数にあります。

ですがベートーヴェンは『魔笛』の音楽を愛していました。
『合唱』のメロディに“素朴さ”を求めた彼が、パパゲーノの歌に似た音楽を使ったのも納得できる気がします。

ライバルの曲に似ちゃったかも?

最後は音楽史上最大のライバル関係モーツァルトとサリエリの曲です。
まずはモーツァルトのオペラ『イドメネオ』から最終場面の合唱。
このオペラは彼がウィーンにやってくる直前の1781年にミュンヘンで初演されています。

動画開始から数秒間のフレーズを覚えておいてください。

もう一つはサリエリのオペラ『オルムスの王、アクスール』から第四幕でアスパージアが歌うアリア「この希望が」です。
映画『アマデウス』でサビの部分が取り上げられていますので、動画の出だしをよく聞いてみてください。

同じですよね?
(このアリア“Come fuggir... Son queste le speranze”の全曲はこちらで聞けます。)
この約7分の歌のサビは約1分とあまりにも短く、しかもこの可愛らしいフレーズは2回しか出てきません。
もったいないですね。

それでも映画の中のサリエリなら「やったぞ!素晴らしいメロディを思いついた!」と喜んだでしょう。
映画の中でもこの曲が終わると彼は大喝采を受けています。

ですが!
この曲は前に紹介した『イドメネオ』の後に作曲されているんですよね。
この曲が作曲されたのは1787年。
元々その年にパリで大当たりした『タラール』をウィーンで上演するにあたり、追加されたアリアです。
つまりモーツァルトの6年後というわけです。

もちろんサリエリが盗作したという根拠はありません。
こんな感じのメロディが当時の流行りだったのかもしれませんし、もしかしたらモーツァルトも他の作曲家の曲を拝借したのかもしれません。

そもそも史実のサリエリは映画みたいにモーツァルトと敵対していたわけでもなかったようです。
「サリエリさ~ん、パクりましたね?」「バレた?ごめん!」みたいなやり取りがあったのかもしれません。

「そっくり」探しに何の意味があるのか?

クラシック音楽での「そっくり」作品を探すだけならネットに膨大な数の例が挙げられています。
たまたま似ている曲を挙げたところで、それだけで意味があるとは言えません。

ですが想像してみてください。
リヒャルト・シュトラウスが「しまったな。あんなノリのいい歌が民謡のはずがないよな。」と悔しがるところ。
若い頃聞いた『魔笛』の音楽が、第九を作曲していた時は既に耳が聞こえなくなっていたベートーヴェンの耳に蘇ってくるところ。
(映画のキャラクターですが)サリエリがモーツァルトをライバル視しながら、それと気づかずに同じフレーズを使ってしまっているところ。

勝手な妄想とはいえ、クラシック音楽って何だかドラマがあるなって感じませんか?
CMソングが似てしまうのもそれだけ耳に残る曲だっていうことですよね?
そういうことを感じていると私は「クラシック音楽っていいな」と改めて思ってしまうわけです。

皆さんも音楽をただ聞くだけではなく、そこからいろんな妄想をしてみると、また楽しさが広がるのではないかと思います。

 
といったところで今回はここまでです。
別の記事で「似たようなプロットの映画」を取り上げたものも書いています。
ご興味がありましたらぜひ読んでみてくださいね。
それではまた!


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