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自立した一人前のプロスポーツの本質とは?


今日の投稿は
どちらかというとスポーツ寄りの話ですが、

たくさんのフォロワーに
楽しんでいただけるように

汎用性を意識して書いてみましたので、
できれば読んでもらえるとうれしいです。

ちょっと長めですが、
少しの間お付き合いください。


■さて、

いきなりですが
投資」の話をしてみます。

企業は
成長する過程において、

銀行(または市場)から
お金を調達して投資を行います。

工場を建てたり、
製造機械を導入したり、

それら先行投資のための資金は
基本的に「借金」でまかなわれますが、

言うまでもなく

借りたお金はただ返しさえすればいい
というものではありません。

毎月毎年、
利子を払う必要があって、

要するに借りたお金は
増やさない限り利払いができない
ので、

そのために企業はひたすら
売り上げ拡大に邁進しなければならない

という息苦しい性質
を帯びることになります。


■借金せずに、

利益の一部を投資にあてるなど
健全な事業拡大を目指すべきでは?

という考えもありますが、

ちょっとしんどい(非現実的)
というのが昨今の流れ。

ある事業に必要なまとまった資金が
短期間で用意できればいいのですが、

大抵の場合、
数年の貯蓄期間が不可欠。

資金がたまるまでに
10年を要するとなると、

新事業のローンチは10年先
ということになります。

ところがライバル企業が
借金」をして

明日から早速
同じ事業を興したとしたらどうでしょうか?

10年後にはライバル企業に市場を独占されて、
参入の余地はなくなっているはず。

ビジネスは早いもの勝ち
なのです。


■一方

スポーツクラブの場合、
プロ野球やJリーグも一部そうかもしれませんが、

親会社が巨額のスポンサー費
(広告宣伝費)を負担する

という構図は
かなり僥倖といえるのかもしれません。

さすがに、どこもかしこも
無借金経営ということではないと思いますが、

一般的な企業経営と比較すると

「なにがなんでも前年比アップ」

という自転車操業に駆られるクラブ
ばかりではないでしょう。

最終着地が赤字になりそうだったら
追加の損失補填で帳尻を合わせることも珍しくなく、

比較的ゆるやかな雰囲気で
経営ができるスポーツクラブもあるにはあるはずです。


コロナ禍の6月、

Jリーグクラブの親会社に、
税務上の特例を認めるというニュースが流れました。

年度内に生じた赤字を
親会社が穴埋めした場合、

全額非課税の損金として処理される
という優遇措置
です。

つまりJリーグクラブは
今まで以上に

親会社からの資金提供
が期待できる環境が整ったといえます。


■スポーツクラブの投資と聞けば、

有名選手の獲得にかかる
移籍金や、

ハード面、つまりスタジアムや練習場の
建設費が思い浮かぶ。

一昔前だと、

顧客管理システムの導入費用も
考えられたかもしれませんが、

今や手軽にクラウド(しかもサブスク)で
システムを利用できるようになったので

大きな投資と言えば
上述の2点に絞られそう。

そして銀行からの借金ではなく、
親会社の広告宣伝費を活用すれば

スピーディに動けて
ライバルに先んじて

才能ある選手や監督を招へいできる。

※実際は親会社の「タテのライン」は突破しづらい、
つまりカネを使う承認を得るには少々時間が必要。


スタジアムは多くが行政の持ち物なので、
投資には不向きだとしても、

クラブハウスを

「市民の憩いの場」

というコンセプトで開発し、

食事ができて、遊べて、ゆっくりできて、
ちょっとした買い物ができる

「小さな街」構想

の新ビジネスは展開できそう。

いずれにしても大きなリスク(借金)
を背負うことなく、

思い切った投資に踏み切れる環境
が整ったという意味においては

クラブ規模が拡大する可能性が
格段に高まるといえそうです。


■横浜DeNAベイスターズ

の元社長である
池田純さん。

1年ぐらい前に
ホリエモンチャンネルに出ていました。

衝撃だった言葉は

「プロ化の意味、分かってますか?」

ラグビーのプロ化への懸念
として警鐘を鳴らしていました。


以下コメント要約(17’00”あたり)
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プロっていうのは、プロですからね。

プロが
企業からお金をもらってたり
プロじゃない人が働いていたりというのは

プロじゃないですよね。

自分で意思決定できて
自分ですべてコントロールできて
自分で経営が回せる。

そういうところを
目指していかなければならない。

プロ化という言葉が先行して
実態が伴わないとなると、

半プロ化」でいいんじゃないか。

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(コメントここまで)


■かつて

毎年のように垂れ流す赤字を
親会社に補填してもらっていたプロ野球。

(全球団ではありませんが)

今はその限りではなく
甘えの構造は過去のものとなりましたが

社会や金銭のことを考える必要がない
という環境に置かれた歴史は、

ビジネスやマネジメントに関する
知見や経験の蓄積を大幅に遅らせました。


プロスポーツは、

ファンや企業に価値を提供して収益を獲得することで、経済的にも社会的にも自立した存在を目指すもの。

親企業の

金銭的、経営的支援と
管理のもとにあっては、

本質的な意味において
プロスポーツと呼ぶには不完全な存在。

それがかつてのプロ野球
ではなかったでしょうか。


この不完全を構成する要素として

誰を顧客とするのか
誰が経営を行うのか
商品価値は何か

など、スポーツ経営に関する
根源的な誤謬(誤解)がありました。


■親会社が

経営のイニシアチブを持って、

親会社および関連企業の
(スポンサー名義の)支援金を呼び込むなど

クラブが、その大半の収入を
親会社に依存していた実態
は、

不完全なプロスポーツであった
と言わざるをえない。

今は完全に自立して大きな成果をあげ

スポーツビジネスの模範的な存在
としてリスペクトされていますが、

かつてのプロ野球はまるで、

父親に畏れを抱き、支配され、
常にプレッシャーを感じながら、

一方でうまく甘えるすべを身に付けたため、
大人になれなかった子どものよう、

といっては言い過ぎかもしれませんが、
当たらずと雖も遠からず、

ではないでしょうか。


■Jリーグ

にたくさんの資金がまわって、
各クラブが潤って、

規模を拡大していくことに
反対する人はいないでしょう。

僕ももちろん賛成で、

米国や欧州に匹敵する
巨大なスポーツ市場に成長してほしいと

心から願っている人のひとり。

ただ、
池田さんが指摘したように、

「半プロ」つまり「不完全なプロスポーツ」を
いかにして自立させるかは

無視できない大きな課題として
目の前に横たわっています。

親会社に守られて
お金の心配をせずに経営ができるということはつまり、

ファンがいなくても
クラブが成立する仕組み
でもあり、

それは本質的な意味において
プロとは呼べません。

誰を顧客とするのか
誰が経営を行うのか
商品価値は何か

クラブの存在価値、
成否のすべてを決定するのはファン。

ファンの創造と拡大を続ける認識や意識が甘く、
その活動も極めて中途半端なものになってしまえば、

かつてプロ野球が苦しんだような
同じ轍をふむことになります。


■ケインズ経済学でいうところの

公共投資という形で
外から強制的に資金を注ぐ景気刺激策のように、

大企業がクラブへの
「財政出動」を可能にすれば

一定の効果が期待でき、
同時にこの理屈からすると

ファンに増税を課したり、
Jリーグが財政赤字に陥ることはありませんので、

ケインズ経済学の泣き所である
インフレや赤字の問題もクリアでしょう。

軍需産業(公共事業)に
莫大な資金を投下したことが、

大恐慌を解決した真の主役として
「第二次世界大戦」の存在が語られることは余談として

経済学的な観点から見ると、

市場に大きな資金を
(強制的にでも)投下することは

縮小均衡から抜け出すチャンスとなり
消費拡大を期待できるのです。


■ゼロから

ファンを獲得し、メディア露出を増やし、
テレビ放送を実現し、放映権を得て、

より広く社会的認知、
共感を得ることで関心層を更に広げ、

スポンサーシップやライセンス収入
を得ることに全精力を投入する。

資金が潤沢になって
経営が楽になったとしても、

自立した一人前のプロスポーツの本質
を忘れることなく、

これからもより一層力強く
発展を続けてほしいと願っています。


長くなりましたが
最後まで読んでくれて

ありがとうございました!

それではまた明日。
おつかれっした!




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