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あなたの商品に「意味」があるか?


書類関係が山のように残っていましたので、その処理に半日を費やしました。読み終わった本が4冊たまっていましたので、赤線を引いた箇所を別途まとめる作業も一気に。すっきりしてあらたな週に挑みます。こういう「やりかけ」の仕事が残っているとワーキングメモリが無意識レベルで消費されていくんですよね。つまり集中力が削がれるということ。なのでホントは前倒しで都度処理していくのがベストです。

さて、またまた古い図書をひっぱりだしてきて読みふけっておりました。「路上から武道館へ」は、10年近く前に読んだ本。そのときどきの流行りなどを取り上げたテクニック系の本ならもはや読み返す意味はあまりないでしょう。ですが本書は、成功体験における心理や思考を深掘りしたものであり、色あせない本質を楽しめます。具体を普遍化した書物はいつまでたっても陳腐化しません。

そしてこの物語。ごく普通の、一般的な女性が路上で歌を歌い、ファンを獲得して武道館ライブを行うという劇的なものです。お金もないし、時間もないし、才能もない。そうやってあきらめかけたのは著者も同じ。ですが、夢をかかげ、つらい思いをしながら努力を続けられたのは、彼女の歌が人々を勇気づけたり、元気を与えたり、生きる希望をもたらすということに気づいたから。

歌そのものも、もちろんすばらしいクオリティを担保していますが、それだけでは売れない時代です。よほど当人の認知度が高くないのであれば、売る前に「この世に存在しているかどうか」すら気づいてもらえません。では彼女は「何を売ったのか」?歌そのものを手段として、どんな目的を達成したと言えるでしょうか?

仕事で思うような受注がとれない。論文の執筆がすすまない学生。職場の人間関係に悩む女性たち。好きな異性が振り向いてくれない寂しさ。部活で試合に出られない辛さ。年齢や性別を問わず、いろんな人がかかえる目標と現状のギャップという苦しさを重ね合わせたかのような歌詞に魅了された人たちが彼女のファンになりました。

私はサッカービジネスに携わっていますが、飲食業界においてもそう。アパレルだって同じ。エンタメなら言うまでもありません。料理、デザイン、イベントの企画、そしてもちろんサッカーという競技性のレベルを高める努力を怠らず、それでいて「どんな価値を提供するのか」が言語化され、一貫性を持って発信され、価値を評価するファンが集まっているという構図。機能的な価値だけではなく、情緒的な価値、換言すると、役に立つだけではなく「意味あるもの」を提供できているかどうかが、現代の消費者に受け入れられる要因になるでしょう。

全部聞いたことはありませんが、「うっせぇわ」という印象的なフレーズの歌が、インターネットを介して多くのファンを引きつけているようです。下の娘が一生懸命歌っていました。娘が歌詞を理解するのはもう少し時間がかかるかもしれませんが、この歌も、メロディ、リズム、歌唱力といった機能的な価値を確保しつつ、共感、共鳴、共振という情緒的な価値を汲み取った人たちが再生回数を稼いでいると分析しています。今度聞いてみようかと思ってます。

私がいま携わっているサッカークラブも、ピッチ上の競技を売る、もしくはサッカーを前面に押し出したプロモーションから、その背後にある情緒的な価値を感じ取ってくれる人はそんなに多くないと思っています。というかそもそも、情緒的な価値が「何なのか」を言語化できているか?お客さんから見える、聞こえる、触れられる、クラブから発信されるすべてのメッセージに、情緒的な価値がブレずに一貫してのせられているかどうか。「意味ある」プロモ―ションづくりに尽力していきたいとあらためて感じている次第です。

久保大輔




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