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会社員は守られているようで実は守られていない

スポーツクラブは、現場とフロントという二つのセクションが存在します。現場はチーム、選手や監督、トレーナー、通訳などが所属する場所。多くがプロ契約を結んで、アウトプットを評価されて契約を更新、または満了となるシビアな世界です。

一方フロントとは、マーケティングや営業、広報、運営といった、いわゆる社員と呼ばれる人たちがクラブチームの売上を作ったり、チームの露出を高めるための宣伝活動を担ったり、試合会場での運営業務を任されています。一般的には正社員で構成されるセクション。転職を希望しないかぎりは原則、定年まで勤務できます。

ときに「雇用」の違いが軋轢を生むことも。一年契約と終身雇用を比較すると、安心感があるのは後者という人は少なくないかもしれません。極端な話、何もしなくても、ただ出勤するだけでお金をもらい続けることができると揶揄されることもあり、それが現場の人との間に齟齬を生む遠因になりえます。

もちろん、会社員が真剣に仕事をしていないわけはなく、クラブチームでも身を削る思いで日々仕事に集中している人はたくさんいます。プライドを持って働いているという意味では、選手と何ら変わりません。信念があれば堂々としていればいいのですが、なぜか必要以上に萎縮。その様子がより一層、現場からの視線を厳しいものにしているような気がします。

私は今、個人で活動する中でフロントの仕事に携わることがあります。ですが今は、現場との境界線を感じることなく、垣根なくコミュニケーションが取れるように。それもこれも契約形態が一緒からなのか、とにかく以前に比べて一切の壁を感じなくなりました。

そもそもですが、会社員が副業を禁止されるなど、会社の外で社会資本人的資本を積みますことができない日本の就業の在り方に、私は一定の距離を置いています。会社にロックオンされて、「一生面倒見るから外で余計なことするな」と言われているような気さえ。ですが会社員であれ個人事業主であれ、将来に備えて、スキルや評価評判を蓄えてリスクヘッジするのは当然のことで非難される言われはありません。

正社員としてその会社に留まり続けることは、一見すると盤石で将来安泰、という見え方がしなくはありません。ですが、VUCAな現代社会において未来は誰も予測できず、大企業に所属されているからといって未来の安心を担保されていると考えるのはちょっと傲慢です。前述した通り、だからこそ会社の外に信頼と、そして外でも通用する技術や知識を蓄えておくこと。より自由な雇用形態でいる方が、将来に対して反脆弱、つまり強固な足腰を築くことになると思われます。

現場とフロント。もし、私が書いたような、雇用形態によって微妙な軋轢が生じているのであればもったいない気もします。勘違いであればそれでいいのですが、そうでないなら雇用のあり方を見直すことは、よりよいクラブ経営を実現するための一考になると思われます。

久保大輔




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