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あなたの振る舞い、大丈夫ですか?


前職はサッカークラブでマーケティングを担当していました。2部リーグだったのでスタジアムは空席が目立つ。売上もなかなか上がりません。わりと勉強好きで、本を読んだりセミナーに出たり、留学までしてたので知識は蓄えられてたと思います。現状と理想のギャップが想像できるようになると、私は次第に、改革を志向することになります。

画期的な仕組みが浮かんだ。売上アップのプランが見つかった。マーケティングを本格的に導入したい。組織を改編したい。クラブにメリットがある提案だからきっと喜ばれるに違いない。熱く語り続けました。ところが反応は芳しくなく、むしろ迷惑がられて断られ、聞き流されたり、冷ややかな態度をされて孤立感を感じました。

皆さんにも私にも、経験や学びから信じている価値観があって、組織においては伝統や文化に根差した考え方が存在しています。そしてそれは、時代遅れだったり、硬直してたり、どう考えても成果が出ない考え方だったりもします。ですが、その人や組織にとっては「支え」になっている大切な考え方でもあります。

仮に、いくら私のアイデアがすばらしくて、イノベーションを起こすものだとしても、組織や人がコミットしている信念に対して「間違っている、こうしましょう」といっても、反発されるだけです。両者の間に齟齬や軋轢がうまれ、反発は増幅していくばかりです。では反発をおさえ、アイデアに耳を傾けてもらうためにはどうすればよかったのでしょうか。

相手が自分で考えて、自分で決めるように促すこと。

自分ごととして想像できる問いを投げかける。たとえば「今までと同じことをして現状を変えられるでしょうか?」「もし売り上げが上がるとすれば、どんな可能性に挑んでみますか?」といった問い。「今のままで満足ですか?」という問いかけです。

組織や人の価値観に真正面から立ち向かわないことが大切。どんなに私やあなたの考えた正しくて、持論が優れていたとしても関係ありません。相手を怒らせてしまったあとに状況を改善するのは至難の業です。遠回りで、まどろっこしいかもしれませんが、聞き手が自分で選択するきかっけとなる疑問を投げかけてみることです。

「多くのデータでは、こうすることが有効ですが、それでもこのままでいきますか?」

このひと言が人を動かすきっかけになります。真っ向勝負をさけて、聞き手が冷静に現状をみつめて、どうすべきかを考えさせること。つまり「自分で考えて決める」という行動を促すために、聞き手の不安をちょっぴりあおるような疑問を投げかけてみることがポイントです。

また、意外と知られていないのが「人は自分の力を甘めに見積もる」というダニング=クルーガー効果と呼ばれる認知バイアス。皆さんは人に好感を抱かれるタイプでしょうか?傾向によると、この質問を聞いた7割の人は「真ん中より上」と回答してしまいます。おそらく読者の皆さんも、けっこうな割合で「自分はまぁまぁ、ほどほどに好かれるタイプ」と評価したはずです。

ですが統計学上、7割の人が真ん中より上というグラフは存在しません。私たちは自分の容姿、発言、行動を高めに評価する傾向があるということ。これを踏まえたうえで以下を見ていきましょう。仮にあなたが、かつての私のように改革を志向し、組織をどうにかしたいと思っているとして、どう振る舞えば好意的に聞いてもらえるでしょうか?

●真面目な表情をする
●ジェスチャーは控えめに
●淡々と冷静に、落ち着いて話す
●専門用語を組酢する

こうすれば周囲にリスペクトされて、自分の考えを受け入れてくれる。信頼されて、自分の発言を尊重してもらえる。少なくとも私は、このように考えて、上記のようなふるまいを心がけてきましたが、これがダメでした。これらふるまいはすべて間違い。話し手の特に目立つ1つの特徴によって、聞き手が相手の印象を決めてしまう心の動きを「ハロー効果」といいますが、ハロー効果がネガティブに働いてしまいます。

●楽しそうな表情で、はっきり話す
●相手の目を見て、何度も相づちを打ちながら
●ジェスチャーを使って説明する

こういったふるまいを心がけるだけで、相手に与える印象をコントロールできるそうです。主観的な頭の良さ、好印象なイメージは、ハロー効果を引き起こす分かりやすい特徴によって決まってしまう。深刻な顔で話すよりも楽しげに、わかりやすい言葉でゆっくり語りかけるほうが、聞き手は好印象を抱くようです。

自分はいい印象を持たれている、そんなバイアスを捨てて、話す内容よりも自分の態度を意識すると相手の心をつかめるということ。ここ数年は観察に徹してきましたが、そろそろ動いていこうかと、アイデアを提案していこうと画策中の私ですが、過去の自分を反面教師として、したたかに振る舞おうと、備忘として、メモ代わりに今日のnoteをまとめてみました。

久保大輔




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