見出し画像

あなたはどちらの本を受けとりますか?


あなたが道路を歩いていたとします。突如見知らぬおじさんが近づいてきて、「まさか私じゃないよね」と逃げるように歩いていたらやっぱりこっちに来る!そしていきなりこう言われたらどう思いますか?

「この本、おもしろいのでよかったらどうぞ!」

笑顔で差し出された本。さてあなたはこの本を受けとるでしょうか?おじさんは、ひょっとしたらどこかですれ違ったりしてるかもしれませんが、明確な記憶がありません。ほぼ初対面。どこの誰だかさっぱりわからない相手です。言うまでもなく、差し出された本は得たいが知れない

では次のケースだったらどうでしょうか?

あなたがいつも親しくしている友だち。付き合いはもう3年ほどになるでしょうか。仕事では同僚であり、日々切磋琢磨。プライベートではよき相談相手であり、仕事だけではなく恋愛や趣味のことも話す間柄です。そんな友だちが先日、こんなことを言ってきました。

「この本、おもしろいのでよかったらどうぞ!」

営業で成果が出せず、ずっと悩んでいたあなた。友だちはいつも成績優秀で、先月はついにエリアトップの受注額をたたきだしました。対照的なあなたの状態は当然、友だちにもお見通し。声をかけてくれて話を聞いてくれました。差し出された本はマーケティングの本。あなたの悩みを聞いた友だちが、一生懸命考えた出したソリューションでもありました。

自明ですが、前者は「怖くて受け取れない」後者は「ありがとうといって満面の笑みで受け取る」という帰結になるでしょう。明らかに腑に落ちるこの事例。ですがなぜかビジネスの現場ではこの違いが見えにくい。解像度がやたら低くて、平気で前者的な販売をしてしまいがちです。

最近は減りましたが、ひと昔前は「メルマガ」は売り手の主な発信ツール。メールアドレスの取得は、売上に直結する大切な資産であり、いかにして顧客からアドレスを聞きだすかは、ビジネスにおいて決定的に重要なファクターでした。苦労して手にいれたアドレスの山。あとはそれを使って「売り込む」だけでした。

ですがメール受信者(顧客)は、いつどこで誰にメールアドレスを教えたかなんて覚えていません。購入するために必須だからやむなく登録したものであり、そこに明確な意思はありません。「私にメリットがあるんだったら、メアドを提供してもいいよ」といったトレードオフを確認したうえで快く差し出した個人情報ではないはず。

届いたメールは既読スルー、もしくは既読にもせずゴミ箱行き確定です。「こんなにたくさんのお客さん(アドレス)に告知してるのになんで売れないの?」と首をかしげる情報提供者。もうお分かりだと思いますが、売り手のミスは「おじさん」を演じてしまったことです。

ビジネスでは、時間をかけて土壌を耕し、共感のタネをまき続けることで、長い時間をかけて花を咲かせる。そんな継続的、かつ一貫性のあるコミュニケ―ションが求められます。メッセージは双方向で交わされ、顧客とはより深いレベルでつながり、気の置けない「友だち」であるかのようなリラックスできる関係を築くこと。

より深いレベル」とは、お金を払ってもらって商品を手渡すだけの、一度きりの関係ではないということです。信頼や絆、信仰といった感情的なつながりをベースとし、その上で消費にサービスを届けていく。「売り手への信頼の積み重ね」と「収益の積み上げ」が同期するのが、上述した「友だち」に代表される、エレガントなビジネスです。

「おじさん」になるか。
「友だち」になるか。

本を受けとってもらうために、どちらのスタンスを志向すべきか。答えは明らか。今ではメルマガよりも、SNSやオンラインサロンでしょうか。私もそろそろ始めます。備忘のため。そして自戒を込めて。

久保大輔




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?