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【質の探求】保育の質評価スケールの種類と活用法

この記noteは、
・保育の質について知りたい
・評価スケールについて知りたい
・自分の保育を見直したい
・保育室で子どもが遊びにくそう
など,保育士や保育士を目指す学生、保育に関わる教育者、そして保護者の皆様に読んでいただきたい内容となっています。

保育の質を向上させるために何が必要か、具体的な方法や評価の意義について考え、実践に役立てていただければと思います。

保育の質とは何か?

保育の質を測るものではない

保育の質とは何かを考える際には、単に子どもたちが楽しんでいるか、安全であるかといった表面的な要素だけでなく、教育的効果や情緒的な成長、社会性の発達など、幅広い視点から捉える必要があります。私自身、保育士として現場で働き、保育士養成校の教員として様々な園を見てきた経験から、保育の質が子どもたちの将来にどれほど大きな影響を与えるかを実感しています。

保育の質を一言で定義するのは難しいですが、総じて言えるのは「子どもたちが健やかに成長し、学びを深めるための最適な環境とプロセスの提供」と言えるでしょう。

保育の質の構造

保育の質は多面的な要素から構成されます。具体的には以下のような要素が挙げられます。


環境の質:物理的な環境や設備、教材などが含まれます。子どもたちが安心して遊び、学べる環境を整えることが重要です。

プロセスの質:保育士と子どもたちの相互作用、日々の活動の質などが該当します。保育士の関わり方や活動内容が子どもたちの成長に大きな影響を与えます。

構造的質:保育士の資格や経験、保育士と子どもの比率、施設の運営方針などが含まれます。これらは保育の質を支える基盤となります。

野澤 祥子・淀川 裕美・高橋 翠・遠藤 利彦・秋田 喜代美(2017).乳児保育の質に関する研究の動向と展望 東京大学大学院教育学研究科紀要,56,399-419.

例えば、ある保育園では、保育士一人当たりの子どもの数が少ないため、一人一人の子どもに対してきめ細やかな対応ができる環境が整っていました。また、保育士たちが定期的に研修を受け、最新の保育方法を学び続けることで、質の高い保育が提供されている園もあります。こうした環境やプロセス、構造の質が一体となって、初めて質の高い保育が実現されるのです。

評価スケールの意義

保育の質を評価するためのスケールは数多く存在しますが、それらは保育の良し悪しを単に判断するためのものではありません。多くの研究者が口をそろえて言うように、評価スケールは現状を把握し、改善点を見つけ出すためのツールであり、それ自体が目的となるものではありません。

保育現場での評価スケールの活用例

新・保育環境評価スケール1〈3歳以上〉

例えば、新・保育環境評価スケール1〈3歳以上〉は、3歳以上の子どもたちの保育環境を評価するためのツールです。このスケールを使うことで、環境の改善点を明確にし、質の向上を図ることができます。


保育コーチング: ECERSを使って

同様に、保育コーチング: ECERSを使ってでは、具体的な改善方法や実践例が豊富に紹介されており、現場での活用に役立ちます。


新・保育環境評価スケール2〈0・1・2歳〉

私が保育士として働いていた頃、評価スケールを使用して保育の質を見直す機会が何度かありました。例えば、ある日の活動後に新・保育環境評価スケール2〈0・1・2歳〉を使って振り返りを行ったことがあります。この評価スケールを使うことで、保育士同士でのコミュニケーションが深まり、改善点を具体的に話し合うことができました。例えば、「午前中の自由遊びの時間に、もっと多様な遊具を提供することで、子どもたちの創造力を引き出せるのではないか」といった具体的な改善案が出ました。


新・保育環境評価スケール3 〈考える力〉

また、新・保育環境評価スケール3 〈考える力〉を使って、子どもたちの思考力や問題解決能力を育てるための環境を整えることも重要です。


「保育プロセスの質」評価スケール

「保育プロセスの質」評価スケールは、保育プロセスそのものの質を評価するスケールです。保育士と子どもたちの相互作用や日々の活動の質を評価し、改善点を見つけるためのツールです。


育み支え合う保育リーダーシップ

育み支え合う保育リーダーシップを参考にしたリーダーシップの実践例も紹介します。ある保育園では、リーダーが保育士たちと定期的に対話を行い、協働的な学びを促進する取り組みを行っていました。例えば、リーダーが主導となり、保育士たちが互いに学び合うためのワークショップを開催し、最新の保育方法や子どもたちの発達に関する知識を共有しました。このような取り組みを通じて、保育士たちは自己成長を実感し、保育の質が向上していることを実感していました。


サブスケールごとに評価する

活用例について、スケール内の全ての項目に対して評価を行うことのほかに、保育者自身が気になることや、意識したいこと、改善したい内容に基づきサブスケールを選び、そのサブスケールに焦点を当てて評価と改善を行うという方法もあります。全ての項目を対象にすると膨大な時間と手間がかかって、長期的で計画的に進めないと途中で嫌になってしまう。このような内容をわかりやすく修正して内容に盛り込んでください

おわりに

保育の質を向上させるためには、評価スケールを活用して現状を把握し、改善点を見つけることが重要です。しかし、全ての項目を評価するのではなく、保育者自身が気になることや意識したい内容に基づき、サブスケールを選び、そのサブスケールに焦点を当てて評価と改善を行う方法もあります。全ての項目を対象にすると膨大な時間と手間がかかり、長期的で計画的に進めないと途中で嫌になってしまうこともあります。このようなアプローチを取ることで、保育の質をより効果的に向上させることができるでしょう。

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