音で絵を描く作曲家とVikingur Olafsson(ヴィキングル・オラフソン)
先週の土曜日は、パンデミックが始まって以来初めての音楽コンサートに行ってきました。
ロンドンは、全面的・段階的なロックダウンもかなり長く続いていたため、こうやって多くの人々がコンサートホール(今回は、South BankのQueen Elizabeth Hall)に集まっているのを見るだけで、感激でした。
ピアニストは、アイスランド出身のVikingur Olafsson(ヴィキングル・オラフソン)。
今回の曲目は、モーツアルト、バッハ、リストという良く知られている作曲家に加えて、私自身は、今まで耳にしたことのなかった、イタリアのヴェネツィア出身のGaluppi (バルダッサーレ・ガルッピ)。ライブ演奏だと、2つのピアノ間の移動や、演奏を終える際のちょっとした手の動きから、音楽家の中で音楽が余韻で続いているのが見えたりして、音が人とともに息をしているのが見える気がします。
コンサートは、BBC(イギリス国営放送)のサイトのここから聴くことができます。
ヴィキングルさんを知ったのは、BBC Radio 4のFront Rowプログラムでした。
Front Rowプログラムは芸術、文学、映画、音楽、メディア等の最新のものを紹介するもので、このラジオを聞かなければ知ることもなかったであろう芸術家に出くわします。インターネットサーチでピンポイントで探すこととは違う、このランダムぶりがラジオのいいところだと思います。
彼はArtist in residenceということで、イギリスのロックダウン中にアイスランドの首都レイキャビクのコンサートホールから複数回登場したのですが、彼の音楽に対する説明はとても詩的で的確です。一番気に入っているのは、ジャン=フィリップ・ラモーとクロード・アシル・ドビュッシーについて語り、ピアノを弾いたときです。イギリス在住でないと聞けないのかもしれませんが、BBCのサイトのここより聞けます。
ヴィキングルさんは、ラモーとドビュッシーが生きていた時代は100年ほど違うけれど、2人の共通点は、どちらも当時の伝統的な音楽界の作曲家たちからかけ離れた未来派で、文学や詩、絵からインスピレーションを大きく受け、音で絵を描き、まるで音に手で触れられるかのような感覚を呼び起こす、と表現していました。
ラモーの「The Dialogue of the birds (鳥たちの会話)」
一羽の鳥が僕の右手に、もう一匹の鳥が左手に。
二羽の鳥が追いかけっこをして、話をしているのが聞こえてきます。
ドビュッシーの「snowflakes are dancing(雪の結晶が踊っている)」
本当に雪が窓の外を舞っているのが目の前に見えるよう。
雪がしんしんと降り積もる音が聞こえます。
まるで、雪の結晶にまで、実際に触れられるかのような感覚。
ぜひ、目をつぶって聴いてみてください。
ドビュッシーの「La Fille aux cheveux de lin(亜麻色の髪の乙女)」
ハープのような響きも聞こえ、夢を見ているかのような音楽だけれども、手で触れられるかのような感覚を呼び起こす。
ヴィキングルさんの静かで情熱的な説明にピアノが続くと、聞きなれていたと思っていた曲が、まるで初めてその曲を発見したかのような喜びを与えてくれます。
Youtubeのヴィキングルさんの公式チャンネルでも、インタビューや演奏が聴けますので、ぜひどうぞ。
音楽に強い人々は、言語にも強い印象があるのですが、ヴィキングルさんの英語も聞きやすいです。
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