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【就活】#6 あなたは「成長サイクル」を正しく回せますか?

今回は、成長にとって「Comfort Zone」から脱却し、「成長サイクル」を正しく回すことの重要性について説明していきます。

↓↓↓ 前回note ↓↓↓

これまで「成長」における「経験」の重要性と、「成長カーブ」の加速について説明しましたが、同じような「成長機会」があれば、誰でも同じように成長できるのでしょうか? そのような「成長機会」を通じて成長できる人とはどのような人でしょうか?

【考えてみよう】
成長できる人とできない人は、なにが違うのか考えてみましょう。

これまでの説明のとおり、「Growth Mindset」を備え、新しいことにチャレンジし、目標達成に向け最後までやり抜く「GRIT」を有している人の方が、当然のことながらより大きな成長が見込まれます。一方「Fixed Mindset」の人や途中で諦めてしまう人は、残念ながら機会が与えられても「成長」につなげることができず、機会を逃してしまったり、機会すら与えられないこともあるでしょう。

一言で言うと、「成長サイクル」を効果的に回せるかどうかが、「成長カーブ」を加速するための重要なポイントとなります。「成長サイクル」とは「目標→経験→振り返り→学び→目標→経験→……」というサイクルを指します。これから具体的に説明していきますが、まずは「Comfort Zone」について説明します。


「Comfort Zone」とは

①Comfort Zone:
「Comfort Zone」は、General Electric社のノエル・ティシーが提唱した概念ですが、居心地の良い慣れ親しんだゾーンのことを言います。このゾーンにいると、苦労なく何ごともこなすことができ、快適さを感じます。一方、新しい知識・スキルの獲得の必要がないことから「成長」は見込まれません。

②Learning Zone:
「Comfort Zone」の一歩外に出たところに「Learning Zone」(または「Growth Zone」や「Stretch Zone」とも言います)」が広がっています。このゾーンでは、多少の居心地の悪さやストレスを感じますが、目標達成のために必要な新たな知識・スキルの獲得は、努力すれば可能なレベルにありますので、成長するには適切なゾーンであると言えます。また、「Learning Zone」では、リスクは自分でマネージできる範囲内にあります。適度なリスクをとると人は成長します。よく「ストレッチした目標」とか「背伸びすれば届く目標」と言いますが、それはこの「Learning Zone」の中の目標のことを言います。

③Panic Zone:
さらにその外側には「Panic Zone」が広がっています。このゾーンでは、何をどうしたら良いか分からないほど目標の難易度は高く、リスクも自分ではマネージできません。ただ、歯を食いしばり気合いで乗りきれば、新しい知識・スキルの獲得はできないこともありませんが、望ましい状態とは言えません。

④Crisis Zone:
一番外側には「Crisis Zone」が広がっています。このゾーンでは、新しい知識・スキルは獲得できませんし、リスクも自分でマネージできません。精神的にも肉体的にもまさに危機的な状況と言えます。


4つのZoneの関係性を図で表すと以下となります。また、「新たな知識・スキルの獲得」と「リスクマネジメント」を2軸のマトリックスで表すとその次のチャートとなります。

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「成長サイクル」とは


次に、「成長サイクル」とは「目標→経験→振り返り→学び→より高いレベルの目標→より高いレベルの経験→……」と述べましたが、それぞれについて説明します。

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①目標
目標設定については、「内容」もさることながら「難易度」が重要となります。「Comfort Zone」を飛び出した「Learning Zone」での目標を設定することが望まれます。 私は大学時代、バックパッカーとして海外を旅しましたが、その動機は「このままではまずい、自分は変わらなければ」という焦りの気持ちによるものでした。つまり、このまま「Comfort Zone」に居続けていては「成長」はできないということを肌で感じていたのだと思います。実際バックパッカーとして貧乏旅行すると、正直楽しさよりも苦労の方が多かったです。でも、困難を克服し、少しずつ解放されていく感じがとても好きでした。旅行から戻ってくると、自分自身「成長」を実感できましたし、両親や友人からも「頼もしくなった」と言われたことを覚えています。

②経験
どんな困難や障害があったとしても、最後までGRIT(やり抜く)することが「成長」にとって不可欠です。目標は必要に応じ軌道修正しても構いません。期限までにやり遂げることが肝要です。

③振り返り
途中の段階や終了した段階で、自分自身の「経験」について「振り返り」します。「内省(リフレクション)」とも言います。やりっぱなしにしないということです。うまくいった時もいかなかった時も、振り返りすることが「成長」につながります。

④学び
「振り返り」を通じて、どうしたらうまくいくのか/いかないのかについて「教訓」を得ます。そして次のストレッチした目標を設定していきます。


この「成長サイクル」を口で説明するのは簡単ですが、実際に「成長サイクル」を「一人」で効果的に回していくのは容易ではありません。理由は、「目標」「経験」「振り返り」「学び」の各ステージにおいて「落とし穴」があるからです。「落とし穴」とはたとえば次のようなことです。

①目標
そもそも目標設定しない。Comfort Zoneの目標を設定してしまう。やる気を出しすぎてPanic ZoneやCrisis Zoneの目標を設定してしまう。つまりLearning Zoneの目標を適切に設定するのがいかに難しいかということです。

②経験
「忙しい」ことを言い訳に進捗がズルズルと遅れてしまう。間違った方向に進んでしまう。途中であきらめてしまう。

③振り返り
やりっぱなしにして振り返りしない。正しい方法で振り返りしない。

④学び
振り返りから教訓を引き出せない。間違った教訓を引き出してしまう。次のストレッチした目標設定につながらない。


たとえば海外留学を例にとってみましょう。最近、留学する人が増えました。面接をしていてもかなりの割合で留学しています。日本から飛び出し世界に羽ばたくことは、大変望ましいことだと思います。
一方で、本来の留学目的は、語学力の向上、多様性の理解、自己の確立などですが、留学すること自体が目的となってしまい、具体的な目標設定ができていない人が散見されています。このような人は、留学したということだけで満足してしまい、語学力もたいして上がらず、他国からの留学生や留学先の国の人との接点を積極的に持たず、いつも日本人とつるんでしまいます。その方がComfortableだからです。

このように、「成長サイクル」を「一人」で効果的に回すことは、多くの人にとって容易ではないということを認識してください。ではどうしたら「成長サイクル」を効果的に回すことができるでしょうか。それは「メンターを持つ」と「成長の見える化」の二つです。


メンターを持つ

会社では、上司・先輩・人事部など(ここではまとめて「メンター」と呼びます)は、「成長サイクル」を効果的に回せるよう、社員一人ひとりをサポートします。上司などは、成長サイクル(「目標→経験→振り返り→学び」)において、「ストレッチした目標の付与 ⇒ 進捗確認と相談 ⇒ 振り返りの促進 ⇒ 建設的なフィードバック」をおこない、社員の成長を後押しします。メンターの役割は以下のとおりです。

①ストレッチした目標の付与
Comfort Zoneを抜け出しLearning Zoneの目標を設定しているかどうか? 「一皮むける新しいチャレンジ」に関する目標を設定しているかどうか? を確認する。

②進捗確認と相談
目標達成が予定どおり進捗しているかどうか? 間違った方向に向かっていないか? を確認する。必要であれば目標を軌道修正する。GRITするのに障害があるのであれば取り除いていく。

③振り返りの促進
「やりっぱなし」になっていないか? 成功や失敗を振り返っているか? を確認する。

④建設的なフィードバック
教訓を引き出すため、建設的なフィードバックを与える。

このように会社においては、社員の「成長」に対する上司などの果たす役割は極めて大きいと言えます。

では、会社に入社する前は、「メンター」はいるのでしょうか? 高校生までは親、兄姉、学校や塾の先生、部活の顧問などが「メンター」としてその役割の一部を果たしてくれるでしょう。大学生の場合、ゼミの教授や、部活の顧問、サークルの先輩などがサポートしてくれると思いますが、会社の上司のように、その人の「成長」に責任を負うわけではありません。また、組織に属していない人はなかなか「メンター」を見つけることは難しいです。「成長サイクル」を効果的に回すサポートをしてくれる人を、いかに見つけるかが課題であると思います。


成長の見える化

「成長を見える化」するということは、成長を「言語化」「定量化」するということです。成長は感覚的で抽象的なものですが、それを極力「言語化」「定量化」することによって、以下のような効果が見込まれます。

・現在の自分の立ち位置や、自分の強みや弱みを把握できる。
・成長をより実感できる。
・さらなる成長へのモチベーションに繋がっていく。

成長の「言語化」とは、以前はどのような状態であり、それが何を通じてどのように変わったかを具体的に「言葉」で表すことです。日常生活は日々過ぎていきますので、「言語化」は意識しないとできません。先ほどの「成長プロセス」の振り返りの部分に該当しますので、振り返りをする際に、経験や成長を「文章」に落とし込むのが効果的です。

成長の「定量化」とは、成長を「数字」で表すということです。技術の進歩により、スポーツなどの世界では技能を「定量化」する便利なツールが出始めていて、効率的に技能をアップするのに活用されているようです。ビジネスの世界でも今まで不可能であったスキルの定量化が少しずつ可能になってきています。新しいツールに要注目です。


これまで「成長」について説明してきました。最後に「成長」に関し、私の経験を踏まえていくつかアドバイスを送りたいと思います。

①やる気にさえなれば、チャンスはいくらでも自らつかみ取れる世の中になりました。その結果、Top of the Topの学生は自らチャンスをつかみ、そのチャンスを最大限に活かし、学業・スポーツ・芸術等において世界レベルで活躍する人が出てきています。また、学生時代に起業し、社会課題の解決に向け自ら具体的アクションを起こしている学生もいます。大変頼もしく思います。
一方、このようなTop of the Topの学生と、その一段下の学生(といっても日本ではTopレベルと言われている学生ですが)との差がドンドン広がっている印象を持っています。より多くの人が「Growth Mindset」を持ち、自ら成長機会を見つけ、実際に行動に移し、貪欲に成長を続けてほしいと思います。

②社会人になると、さまざまな領域において幅広く深く学び続けなければなりません。比較的時間に余裕がある学生時代に「学び」ができない人は、日々業務に忙殺される社会人時代に「学び」ができるはずはないと心得る必要があると思います。

③大学入試では、希望する大学・学部に合格することが目標だったと思います。その結果、第一志望に合格した人もいれば、そうでない人もいると思いますが、大学入試の結果そのものに満足して終わっていませんか?大学入試には「問題」があり「答え」があります。もちろん地頭の良し悪しが結果に影響しますが、問題の解き方・答え方を身につけた人が良い結果を得ます。一方、社会人の仕事には、目の前に問題(=課題)もなければ模範解答もありません。自ら課題を見つけ、自らその課題の解決方法を探し、自ら解決することが求められます。社会人として働くことは、大学入試とは別物であると理解する必要があると思います。

④会社では、上司・先輩・人事部などが「成長サイクル」を効果的に回すことをサポートしてくれます。繰り返しになりますが、学生の場合は自らそのサイクルを回すか、自らサポートしてくれる人を見つける必要があります。いずれにしても自らアクションを取ることが問われるのです。


最後になりますが、「Comfort Zone」からの脱出は、日常生活でも同じことだと思います。いつも同じ友達と一緒にいませんか?いつも同じことばかりしていませんか?普段と違うことを意識的にするようにして、日常生活がより刺激的なものとなることを願っています。


【まとめ】
・「成長サイクル」とは「目標→経験→振り返り→学び」のことである。このサイクルを効果的に回すことが成長につながる。
・「目標」については、Comfort Zoneを飛び出してLearning Zoneの目標、すなわちストレッチした目標を設定するのが、成長につながる。
・「成長サイクル」を効果的に回すために、信頼のできるメンターを見つけるのが望ましい。
【参考文献】
・松尾睦(2011年)『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社.
・金井壽宏(2002年)『仕事で「一皮むける」−関経連「一皮むけた経験」に学ぶ』光文社.

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