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【商社就活】#9 商社内定に向け学生時代に習得すべきこと(1) −創造力(デジタル・テクノロジー・リテラシー)

↓↓↓ 前回note ↓↓↓

【この記事で説明すること】
・商社において「デジタル・テクノロジー・リテラシー」の重要性が急速に増してきている背景について
・商社において求められる「デジタル・テクノロジー・リテラシー」の具体的内容と、その習得方法について


前々回は、「創造力」の一つの切り口である「学業」について、前回は、二つ目の切り口である「考え抜く力」について「思考のフレームワーク」を中心に説明しました。
今回は、「創造力」の三つ目の切り口である「デジタル・テクノロジー・リテラシー」について説明します。


1. 「デジタル・テクノロジーリテラシー」の重要性

現在は、「第4次産業革命」「Digital Transformation(DX)」の時代と言われています。この時代において、商社パーソンにとって最も必要とされているにもかかわらず、最も不足しているのが「デジタル・テクノロジー・リテラシー」であると言えます(「リテラシー」とは、本来「読み書き能力」のことですが、ここでは「知識等を活用する能力」と定義します)。

【考えてみよう】
「デジタル・テクノロジー・リテラシー」とはどのようなことでしょうか?


世の中全般においてこのリテラシーが必要とされていますが、商社においては、革新的なテクノロジーや膨大なデジタルデータの活用、さらにはマーケットインの発想により新たなビジネスを創造するために、このリテラシーが必要とされています。
現時点では、商社パーソンの「デジタル・テクノロジー・リテラシー」のレベルは総じて高くはなく、必要とされるレベルとのギャップは相当大きいと感じられます。

商社各社はその実態を十分に認識しており、デジタルやテクノロジーを統括する専門組織を作り、リテラシーの全社的な底上げを図るとともに、さまざまな研修や経験付与を通じて、個々の社員のリテラシー向上に注力しています。

しかしながら、残念ではありますがリテラシー習得のスピードや深さについては、個人差がかなり大きいと言えます。若手社員は、中堅・ベテラン社員に比べれば習得度合いは高いと言えますが、若手社員の中でも苦手な人が散見されます。「ダメな人は全くダメ」で、できる人とできない人の差が顕著に開いていくというのが「デジタル・テクノロジー・リテラシー」の大きな特徴とあると言えます。中堅・ベテラン社員は、「デジタル・テクノロジー・リテラシー」から逃げ切れるかもしれませんが、若手社員は逃げられません。

一番大事なことは「苦手意識」を持たないということです。商社に入社後も、この領域に対し「苦手意識」があるとすれば、相当苦労すると思われます。大学時代に少なくとも「苦手意識」を払拭し、少しでもこのリテラシーを向上させる必要があります。


2. 商社パーソンに求められるリテラシーの変化

リテラシーを「ビジネスリテラシー」「テクノロジーリテラシー」「デジタルリテラシー」の三つに分類し、時代ごとにそれぞれの重要性について説明していきます。

・ビジネスリテラシー:ビジネス上の課題を見つけ、解決するリテラシー(青)
・テクノロジーリテラシー:新しいテクノロジーを生み出すリテラシー(緑)
・デジタルリテラシー:デジタルデータを分析するリテラシー(黄)

商社パーソンの役割は、課題を見い出し解決することですので、「ビジネスリテラシー」を商社パーソンが身につけるべきリテラシーと定義します。


〜1990年代:トレード中心

ビジネスモデルがトレード中心だった時代に求められる「ビジネスリテラシー」は、トレードに関するリテラシー(貿易実務、語学力、交渉力、新規客先開拓など)が中心でした。
一方、「テクノロジーリテラシー」は主に製造業において、新商品の開発や工場のオペレーションの効率化等に必要であり、商社においてそこまで必要とされていませんでした。
また、「デジタルリテラシー」については、そもそも膨大なデータを収集・分析するのは、技術的にも難しくコストも高額であったため、その必要性は認識されていませんでした。

「ビジネスリテラシー」が、「テクノロジーリテラシー」「デジタルリテラシー」と重なりあう面積、つまり商社パーソンがビジネスの課題を見つけ、解決するプロセスにおいて「テクノロジーリテラシー」「デジタルリテラシー」を必要とする度合いは、当時は低かったと言えます。

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1990年代後半〜:トレード + 事業投資・事業経営

商社パーソンが備えるべき「ビジネスリテラシー」については、商社ビジネスにおける事業投資・事業経営の比重が高まってきたため、トレード関連のリテラシーに加え、投資や経営に関するリテラシーが急速に求められるようになりました。そのため青の面積は従来よりも大きくなります。

一方、「デジタルリテラシー」と「テクノロジーリテラシー」については、技術の進歩やインターネットの普及などにより、世の中においてその重要性は急速に増していきました(緑と黄の面積が拡大していきます)。ただし、商社パーソンが備えるべき「ビジネスリテラシー」と重なり合う面積は依然として大きくないため、この期間において、商社パーソンにとって「デジタル・テクノロジーリテラシー」は必須であるとは考えられていませんでした。
とはいえ今振り返ってみると、2000年代中頃以降は、資源価格高騰による「資源バルブ」にばかりに目がいってしまい、「デジタルリテラシー」「テクノロジーリテラシー」の重要性の高まりに注視してこなかったように思われます。この時期に、「デジタルリテラシー」「テクノロジーリテラシー」を磨く取組みを先んじておこなっていれば、2010年代以降のイノベーション時代を先取りできたのではないかと思います。

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2010年代後半〜:トレード + 事業投資・事業経営 + イノベーション/DX化

「第4次産業革命」や「Digital Transformation(DX)」の時代を迎え、ビジネスにおいてデジタルデータやテクノロジーの活用が必要不可欠となりました。エンジニアやデータサイエンティストの活躍の場が急激に拡大し、今後も拡大し続けることが容易に予想できます(緑と黄の面積がドンドン大きくなっていきます)。

この流れに応じて、「ビジネスリテラシー」における「デジタルリテラシー」や「テクノロジーリテラシー」と重なり合う面積が拡大していきます。このことは、商社パーソンは、ビジネスだけなくデジタルやテクノロジーについてもより深く理解することが必要となったということを意味しています。

商社パーソンは、エンジニアやデータサイエンティストになる必要はなく、彼らが有する高度な専門性や資格を習得することを求められているわけではありません。求められているのは、

①革新的なテクノロジーやデジタルを活用した「ビジネス構想」を描くこと②エンジニアやデータサイエンティスト等との間の「通訳者」として、また、彼らのパフォーマンスをマネージする「プロジェクトマネージャー」として、「橋渡し役」を果たすことです。


もう少し詳しく説明していきます。商社パーソンはテクノロジーやデジタルデータの「目利き力」が求められるようになりました。「目利き力」とは、どのテクノロジーやデジタルデータに優位性や将来性があるか、また、どの要素とどの要素を結合すれば革新的なアイデアを生み出せるかを見抜く力です。
この「目利き力」を使って、1) ビジネスサイドの課題やニーズをエンジニアやデータサイエンティストに的確に伝えること(=要件定義)、2) エンジニアやデータサイエンティストからの成果物を適切に評価し、適切にビジネスに活用することが求められるようになりました。


「ビジネスリテラシー」と「テクノロジー・デジタルリテラシー」の関係性を2軸で表すと以下のようになります。もともと商社パーソンは「ビジネスリテラシー」が高いわけですが、今後は「テクノロジー・デジタルリテラシー」も高めていく。
一方、「テクノロジー・デジタルリテラシー」が極めて高い人材については、現時点では外部人材に頼っていますが、いずれ内製化(社員化)していき、それらの人材が、商社というフィールドで「ビジネスリテラシー」を磨いていく。
このように、次世代商社においては、「ビジネスリテラシー」寄りか、「テクノロジー・デジタルリテラシー」寄りかの違いはあるものの、その両方のリテラシーを備えている人材の活躍のフィールドが急速に広がっていくと言えます。

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3. 商社におけるテクノロジーとデジタルデータ

以前お話ししましたが、商社パーソンの果たすべき本質的な役割は「生産性の向上」です。テクノロジーやデジタルデータの効果的な活用は、イノベーションを創出し、成果の拡大や投入資源の削減を果たし、生産性を大きく向上させることを可能にします。したがって、商社パーソンにとって、技術の進歩に伴い、「デジタルリテラシー」と「テクノロジーリテラシー」が必須となったわけです。

​生産性向上

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1990年代までは、商社は「情報」において優位性がありました。その優位性は、他業界に比べ早い時期から海外進出を果たし、一足先にグローバルネットワークを構築したこと、また、幅広い領域におけるビジネスの展開を通じて、多種多様な顧客との接点があることによるものです。商社はこの情報の優位性を十二分に活用し、交渉を有利に進めたり、新たな価値を顧客に提供したりして、「情報」を利益の源泉の一つとしてきました。
しかしながら、1990年代後半以降、インターネットの普及、技術の進歩、グローバル化の進展によって、商社の持つ情報の優位性は徐々に失われていきました。
一方、技術の進歩に伴い、センサー・画像・動画・音声などからのデジタルデータが大量にかつ安価で取得できるようになり、デジタルデータの価値が急速に高まってきています。どのようなデジタルデータをどのように収集し、それをどのように分析し、どのようにして消費者ニーズの把握や業務効率化に役立ていくかが重要となってきているのです。
つまり、利益の源泉が「情報」から「デジタルデータ」にシフトしていったわけです。

一方、商社における「テクノロジー」については、従来は主として投入資源(ヒト・モノ・カネ)を削減するために活用してきました(上記表の左下)。また、高い技術力を有するベンチャー企業に対する投資という形で「テクノロジー」と関わってきました。
現在は、テクノロジーを活用し、革新的なビジネスモデルの創出やビジネスプロセスの構築(上記表の右上と右下)を図り、生産性向上を実現していくことが求められるようになりました。

​「デジタルリテラシー」「テクノロジーリテラシー」が商社パーソンにとって必須となった背景について理解してもらえたと思います。次に、大学時代に習得すべきリテラシーについて説明します。


4. 大学時代に習得すべきデジタル・テクノロジーリテラシー

①興味関心・情報収集

繰り返しになりますが、デジタル・テクノロジーの領域は、他の領域に比べて苦手意識を持つ人が多いように思われます。「なんだか難しそうだ」という先入観や、「常に進歩していて、ついていけない」といったあきらめからくるものだと思われます。しかし、「食わず嫌い」であることがほとんどのように思います。
まずは、身近にある「不便だな」「面倒くさいな」「非効率だな」「あったらいいな」と思うことを見つけ出し、それらを解決するサービスやモノがすでに世の中にあるとしたら、それらにデジタルデータやテクノロジーがどのように活用されているかについて興味を持つことから始めてみてはどうでしょうか?

【例1】
渋谷でコインロッカーが見つからず困ったことがありました。やっとの思いで空きロッカーを見つけましたが、荷物が大きすぎて入りませんでした。
このような不便さを感じている人は多いと思いますが、この不便さを解決したのが、ecbo株式会社が提供している「Ecbo Cloak」というサービスです。これは、「荷物を預けたい人」と「荷物を預けるスペースを持つお店」をつなぐシェアリングサービスです。
コインロッカーを探す手間を省き、確実に荷物を預けたいというユーザーのニーズと、余ったスペースを有効活用し、副収入を稼ぎたいという店舗等のニーズを、検索・予約・決済機能を持つシステム(「Ecbo Cloak」)が結び付けたというわけです。荷物はコインロッカーに預けるものという先入観を取り払った点も素晴らしいと思います。
https://ecbo.io

【例2】
海外旅行に行った際、いくら現地通貨を持っていったらよいか悩みました。基本クレジットカードを使うので、それほど現地通貨を必要としませんが、現地通貨が足りなくなると再度現地で両替しないといけませんし、多すぎると日本円に再び換金するか、タンスの中で眠ってしまうことになります。
このような不便さを解決したのが、株式会社ポケットチェンジが提供する「ポケットチェンジ」というサービスです。ポケットチェンジは、空港や駅などの公共の場に設置されたATMのようなマシーンです。このマシーンは、余ったコインや紙幣を電子マネーやギフトカード等に、簡単かつ安全に交換してくれます。海外旅行から帰ってきた日本人や、訪日外国人旅行者に重宝されています。
https://www.pocket-change.jp/ja/

このように、身近な課題を解決してくれる優れたサービスやモノはいくらでもあります。単に便利だなと思うだけでなく、どのようなビジネスモデルで、どのように収益を上げていて、どのようにデジタルデータやテクノロジーを活用しているのか、インターネット等で調べてみると大変勉強になると思います。

これらはミクロ的にデジタルデータやテクノロジーを捉えた場合の事例です。次にマクロ的に見ていきましょう。商社パーソンは、マクロとミクロの両方の視点が求められます。

ここで言うマクロ的な視点とは、時代の変化を見極め、予想するということです。ある革新的な技術・サービス・商品が生まれたとします。それらが今の世の中にどのような利便性を与え、将来の世の中をどう変えていくかについてマクロ的な視点で考えてみるのです。

【例1】
Amazonは、創業者ジェフ・ベゾスが、1990年代後半、書店をECしたところからスタートしました。取り扱う商品は何でもよく、本を選んだのは、品質管理にそれほど気を遣う必要がないといった理由からです。当時、本は書店等で買うのが当たり前の時代でした。本のECがここまで一般的になるとは全く予想がつきませんでした。
その後、Amazonはビジネスを多様化し、グローバルベースで業容を急激に拡大しています。取扱商品の拡大、データベースビジネス、フルフィルメントby Amazon、Whole Foodsの買収、ネットとリアルの融合などです。いまやAmazonのサービスが生活の至るところに普及しています。
一方、Amazonの成長の過程では、既存の小売業の反発や、個人情報の取り扱いに関する課題など、乗り越えなければならない課題がたくさんありました。今後もさまざまな課題に直面すると思います。Amazonは、今まで世の中をどう変えてきて、今後どう変えていくのかについて考えることは、ビジネスを理解する上で、大変勉強になると思います。
【例2】
Uberも大変興味深い企業です。シェアリングエコノミーの先駆けとなった企業ですが、スキマ時間を活用して小銭を稼ぎたい運転手と、車を所有することなくもっと便利に移動したいというユーザーのマッチングを、テクノロジーを介して実現したのです。私もニューヨーク駐在中、イエローキャブが街中を走りまわっていましたが、それでもその利便性からUberを使っていました。規制の壁や、既存の業界(=タクシー業界)との軋轢、安全性・信頼の確保という課題が次から次へと発生しましたが、それらを乗り越え成長を続けています。また、Uberと同じコンセプトのビジネスとして、こちらも皆さんご存知、コロナ禍で大活躍しているUber Eatsがあります。
Uberに代表されるシェアリングエコノミーは今までの世の中をどう変え、今後どのように変えるか、Amazon同様、それを考えることはたいへん意味のあることだと思います。


②EXCEL

次は、もう少し実務的な話です。EXCELについてです。

最近は、スマホしか使ったことがなく、PCをあまり使ったことがない人が増えたと聞きました。一方会社では、PCがまだまだ主流です。PCではEメールに加え、EXCEL、WORD、Power Pointといったソフトウェアを使い、表計算やレター・プレゼン資料の作成などをおこないます。一日中PCの前で仕事をする人も少なくありません。したがって学生時代からPCに慣れ親しんでおく必要があり、特にマスターしておくべきスキルはなんといってもEXCELです。
EXCELは、商社で働く上で(他の業界でも同様かもしれませんが)必要不可欠なスキルで、学生時代に基本的な操作について習得しておくべきと考えます。将来、EXCELに代わるもっと便利なツールが開発されるかもしれませんが、EXCEL自体もドンドン進化し使いやすくなっており、EXCELで業務のかなりの部分を遂行することができるので、少なくともむこう10年ぐらいは業務におけるEXCELの重要性は変わらないと考えています。

EXCELを習得すべき理由は三つあります。

1)生産性向上に直結する
2)データ分析やファイナンス分析、事業投資や事業経営に必要になる
3)EXCELを学ぶ時間をセーブし、他の学習に時間を費やせる

1)生産性向上に直結する
EXCELは、「使えるレベル」を超え、「使いこなせるレベル」にまで習熟すると、間違いなく生産性向上に寄与します。「使いこなせるレベル」というのは、マウスではなく、ショートカットキーを活用できる、手作業ではなく関数等を駆使できるというレベルです。10時間かかる仕事を、EXCELを駆使し1時間で終わらせることができれば、9時間の労働時間をセーブできます。この9時間を別の付加価値の高い仕事にまわせば、生産性は間違いなく向上します。

2)データ分析やファイナンス分析などに活用
EXCELは、データの集計・加工というレベルを超え、より高度なデータ分析やファイナンス分析にも活用することができます。また、事業投資や事業経営をおこなう際のマストスキルでもあります。

3)他の学習の促進
EXCELを大学時代に習得しておけば、入社後にその分、別の学習に時間を費やすことができます。商社に入ると学ぶべきことは山ほどあります。前倒しして学べることは大学時代に学んでおき、商社入社後は、商社でしか学べないことに注力していく必要があります。

では、どのようにEXCELを学ぶのがよいでしょうか?EXCELに関する本やサイトはたくさんあり、どれでもよいと思いますが、私がオススメするのは以下です。

・長内孝平(2019年)『できるYouTuber式 EXCEL 現場の教科書』インプレス.
・Youseful / 人材教育の図書館 


いずれも、商社出身であるユースフル株式会社の長内孝平社長が提供するコンテンツです。EXCELでは驚くぐらいさまざまなことが効率的にできますが、商社の業務で使われる機能は限定的です。長内さんのコンテンツは、商社での勤務経験を踏まえ、商社で使われる、より実践的な機能を効率的に学ぶことを可能にします。また、長内さんは「コンテンツミックス」という学習法を採用しており、情報の要点をつかむのに向いている「本」と、情報の流れをつかむのに向いている「動画(YouTube)」を組み合わせた学習方法を提唱しています。是非、業務の効率をあげるためにEXCELを学んでもらいたいと思います。

WORDは、頻繁に使用する機能は限定的で、使いこなすのにそれほど難しいものではありません。自分でも十分学習できますし、会社に入ってから研修があるはずですので、学生時代にそこまで勉強しなくていいと思います。ゼミ等のレポートが書けるレベルでとりあえず十分だと思います。

Power Pointについては、まずはロジカルシンキングを学び、複雑なことを分かりやすく整理するスキルを身につけることが先です。それを表現するツールがPower Pointです。頭の中が整理できれば、あとはそれをどのように分かりやすく伝えるかの世界になってきます。


③専門知識の習得

「デジタル・テクノロジー・リテラシー」を高めるためには、それらに関連する基本知識を、幅広く継続的に学ぶ必要があります。当然のことながら、社会人になった後も学びを継続していく必要がありますが、時間に余裕のある大学時代に、大学の授業やMOOC(Massive Open Online Course:インターネット上で誰もが無料で受講できる開かれた講義)などを通じて、積極的に知識の習得に努めるとよいでしょう。

JMOOC: https://www.jmooc.jp
Coursera: https://ja.coursera.org

学ぶべき領域は、「確率・統計」「人工知能(AI)・ディープラーニング」「プログラミング」などですが、デジタル・テクノロジー領域に限らず、幅広くさまざまのことを学んでいくと良いと思います。


④ソーシャルメディア・HP

FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアについては、みなさんの方が詳しいと思いますので、説明は割愛します。昨今は、ソーシャルメディアがマーケティングのツールとして活用されていますので、最新の動向を注視していくと良いと思います。
HPについては、私自身、WordPressやWixなどのHomepage Builderを使って作成しています。HPの制作を通じて、デザイン、マーケティング等について多くのことを学んでいます。実際自分自身でHPを作ってみると何かしらの気づきが得られるかもしれません。


⑤ベンチャー企業でのインターンシップ

デジタルデータやテクノロジーを活用したビジネスをおこなっているベンチャー企業に、長期インターンシップで参加してみるのも良いと思います。そもそも課題を認識するプロセスや開発プロセス、課題が発生した場合の対処方法など、学ぶべきことは多いと思います。


⑥プログラミング

私は、「プログラミング」は商社パーソンを目指す学生にとって必要なスキルであるとは、現時点では思っていません(プログラミングは将来的に商社パーソンにとって必要なスキルになる可能性はありますが、現時点では、できなくても業務にまったく支障はありません)。

商社パーソンは、プログラミングによって、自分自身で一からシステムやアプリを構築することが求めれるわけではありません。商社パーソンに求められるのは、「プロジェクトリーダーとして、外部人材や外部ベンダー(外部業者)を活用し、システム構築プロジェジェクトをリードしていく」ということです。今後ますますこの役割が重要になってくると思われます。

プログラミングを学ぶ具体的なメリットとしては、

1)システムベンダーと対等に話ができるようになる。システムベンダーとの会話では、専門用語がたくさん出てきます。それらをよく理解していないと、ベンダーのペースで話が進んでいってしまい、システム化を通じて本来解決したい課題が、結果として解決できないという事態に陥ります。

2)システムベンダーに対し、適切な発注をおこなえるようになる。システムで、できることとできないことを理解した上で、課題解決に向けた「要件定義」をおこなう必要があります。そうしないと「あればいいな」という程度の機能をドンドン追加し、コストが膨れ上がってしまうことになります。システム構築に数億円費やしたけど、実際に使う機能は限定的というのはよくある話です。また、システムベンダーのアウトプットを適切に評価できるようにもなります。

このように、今後ますます重要となるシステム化のプロジェクトリーダーの役割を果たすためにプログラミングの知識があるとなお良いと考えます。

それ以外では、

3)プログラミングの習得を通じて、データの収集、蓄積、処理の方法を学ぶことができます。昨今、データ活用の重要性が叫ばれていますが、すぐに「分析」や「予測」に使えるだけの十分なデータが、使える形で蓄積されているケースは、残念ながらあまりありません。今後、データーを活用した分析・予測をおこなっていく上で、プログラミングの知識が必要となると思われます。

4)プログラミングは、ロジカルシンキング(論理的思考力)を養うのにも効果的です。プログラミングとは、コンピューターに指示するための言語のことを言います。自分の思い通りにコンピューターに動いてもらうには、プログラミングを通じて、コンピューターに、具体的にかつ簡潔に、正しい順番で指示をする必要があります。
また、仮説を立てる力を養うのにも効果的だと思います。プログラミングは仮説と検証の繰り返しです。まず、どのようにコードを書けば、コンピューターは正しく動いてくれるか仮説を立て、うまく動かなければ、なぜうまくいかなかったのか検証する。この繰り返しです。この繰り返しを通じて、より精度の高い仮説を立てられるようになっていきます。

プログラミングの習得には時間と根気が必要となります。一番良くないのは、やる気まんまんで始めてみたものの、途中で挫折してしまうことです。プログラミングをやるのであれば習得するまで続けるか、もしくはまったくやらないかのいずれかが良いと思います。中途半端が一番良くありません。


先に説明した通り、商社パーソンが備えるべき「ビジネスリテラシー」の中に、「テクノロジーリテラシー」や「デジタルリテラシー」がかなり入り込んできています。大学時代の優先順位としては、「人間性」や「多様性」を磨き、人としての器を大きくしていくことの方が高いものの、「テクノロジーリテラシー」や「デジタルリテラシー」の向上は、他者との差別化にもつながり、商社に入ってからの活躍の可能性を広げていくものですから、大学時代に「苦手意識」を払拭し、必要な知識・スキルを習得しておくことが求められます。


【まとめ】
・これからの商社では『デジタル・テクノロジー・リテラシー』はマストであると認識する。
・デジタル・テクノロジーに対する苦手意識を払拭する。
・苦手な人は、興味関心を持ち、情報収集することから始めてみる。
・EXCEL、専門知識の習得は、可能な限りおこなう。
​【参考文献】
・長内孝平『おさとエクセル』YouTube. 
・Youseful / 人材教育の図書館 https://www.youtube.com/channel/UCRpRQ48LGfMpYojZo7Srabg


当方が考える『次世代商社における求める人材像』

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次回は、【商社就活】#10 商社内定に向け学生時代に習得すべきこと(2) −多様性 です。お楽しみに!


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