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【商社就活】#2 商社における成長とキャリア

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今回は総合商社における「個の成長」についてご説明します。

【この記事で説明すること】
総合商社における「キャリア」と「成長」について

さっそくですが質問です!

【考えてみよう】
商社は「成長カーブ」を加速させるのに適した職場かどうか、理由も含め考えてください。

私は、この問いに対する答えは「Yes」だと確信しています。さらに他の業界に比べてもその度合は高いと推測します。その理由は次の通りです。以前、「70:20:10の法則」について説明しましたが、これは、成長の70%は「経験」から、20%は「他者」から、10%は「研修」から得られるという法則です。商社は、70%を占める「経験」について、他の業界に比べ幅広く深い成長機会が豊富に用意されている業界であると言えます。また、商社にとって「人材は財産」であるため、20%の「他者」に関しても、会社や上司・先輩の「人を育てる意識・関心」は総じて高く、10%の「研修」に関しても、各社ともかなり充実した研修プログラムを持っているからです。​


【考えてみよう】
商社における一般的なキャリアとはどのようなものだと思いますか?


商社の一般的なキャリア

商社の一般的なキャリアは、20〜30歳代は、非連続的な成長機会(=一皮むける新たなチャレンジ)を意図的・計画的に付与され、かつ、上司と共に「成長サイクル」を効果的に回して、連続的な成長を遂げていきます。「成長カーブ」が最大限加速するよう、「非連続的な成長」と「連続的な成長」を効果的に組み合わせていくのです。当然ながら社員自身が「Growth Mindset」を備えていることが大前提となります。

40歳代になると適性の見極め期間は終わり、自分の得意分野を深掘りするようなキャリアを築いていくようになります。多くの社員にとって、商社におけるキャリアの最終ゴールは「経営人材」であると言えます。「経営人材」としてグループ会社を含む企業価値の極大化や業界の再編などを担っていくことになります。ただし、キャリアのゴールは「経営人材」だけではありません。ある特定分野(商品・業界・海外エリア・機能など)の「スペシャリスト」や、今後はイノベーションを引き起こす「イノベーター」も必要になってきます。商社におけるキャリアは多岐にわたるのです。


商社の豊富な成長機会


70%を占める「経験」に関し、商社には成長機会が豊富にかつ多様にあり、「成長」という観点で非常に恵まれた環境が用意されています。このことは極めて重要なポイントですので、具体的に説明します。

​以前ご説明した通り、神戸大学大学院金井教授によると「一皮むける経験」は、以下の11点に整理されます。

①入社初期配属段階の配置・異動
②初めての管理職
③新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ
④海外勤務
⑤悲惨な部門・業務の改善と再構築
⑥ラインからスタッフ部門・業務への配属
⑦プロジェクトチームへの参画
⑧降格・左遷を含む困難な環境
⑨昇進・昇格による権限の拡大
⑩ほかのひとからの影響
⑪その他の配属・異動、あるいは業務

上記「⑪その他の配属・異動、あるいは業務」を商社の実態にあわせ具体的に記載すると、以下のようになります。

⑫リーダー経験
⑬出向経験
⑭グループ会社の社長経験
⑮経営企画・経営管理
⑯営業部門間異動

商社では、役職に就かずとも「リーダー」として周囲を巻き込み課題を解決することが求められます。すべての社員が「リーダー」としての自覚を持つ必要がありますが、会社としても意図的に「リーダー経験」を付与することがあります(⑫)。
商社はグループ連結経営を推進していますので、さまざまな目的でグループ会社に出向するケースがかなり多いと言えます(⑬)。たとえば、若手であれば育成目的であったり、中堅であればマネジメント職への登竜門としてグループ会社の社長経験を付与するケースもあります(⑭)。本社に限らずグループ会社における経営企画・経営管理を経験する機会もあります(⑮)。従来は「商品・業界のプロ」を育成するため一つの部門の中でローテーションするケースが多かったですが、昨今は、バリューチェーン、プラットフォームの構築やイノベーションの創出が求められるようになり、幅広い視野や経験も必要となってきます。そのため今後、営業部門をまたぐ異動は増加すると思われます(⑯)
これらの「一皮むける経験」が複数組み合わされることにより、「成長カーブ」はさらに加速していきます。特に④海外勤務と他との組み合わせです。たとえば、「④海外勤務 × ③新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ × ⑯社長経験」すなわち、海外でグループ会社の社長を務め、新規市場開発のミッションが与えられるということです。④海外勤務が多い商社は、より成長機会が多いと言えます。

次に、商社における「一皮むける経験」の具体的な内容を見ていきましょう。この「一皮むける経験」の紹介を通じて、商社の業務やキャリアのイメージが湧いてくることと思います。代表的なものをいくつか記載します。


【入社10年目ぐらいまでの若手社員】

①入社初期配属段階の配置・異動:

会社によっては、一部の内定者の配属先が内定時に決定するケースがありますが、基本的に配属部署は、本人の希望と適性に基づき会社が決定します。最初に配属された部署では、「指導社員」と呼ばれる先輩社員が、社会人としての基礎や基本的な業務を教えてくれます。その後、少しずつ難易度の高い仕事を任されていくようになります。

入社後数年間は、将来、一人前の商社パーソンとして活躍するために不可欠な基本的な知識やスキルを習得します。
たとえば「受け渡し」です。「受け渡し」とは、営業の先輩方が契約してきた商品の船積みの手配、お客様への配達手配、代金の回収などの業務です。また、課の予算や決算の管理を担当します。商売の基本となる「モノ」と「カネ」の動きを徹底的に学んでいきます。
担当業務は2年程度で計画的に変更され、幅広い知識・スキルを習得することになります。

・社会人としてのプロ意識の醸成
・商社パーソンに求められる基本動作や基本知識・スキルの習得
・社内プロセスの理解
・さまざまな人とのコミュニケーション力


④海外勤務(海外実習生としての派遣):

・異なる環境下に身を置くことで自分自身を見つめ直すこと
・異文化の人とのコミュニケーション力(異文化理解、語学力向上、人間関係構築)
・グローバルな視点でものごとを捉えること


⑥ラインからスタッフ部門・業務への配属(職能部署へのUTR(=U-Turn Rotation)):

・専門知識の習得、全社的視点の獲得、社内プロセスの理解


⑬出向経験(担当者としての育成目的):

・ビジネスの現場経験
・さまざまなタイプの社員との協業経験


【入社10年目以降の社員】

②初めての管理職:

・部下の成長や、家族を含む部下の人生を背負うという責任の重さの実感。
・組織パフォーマンスに対する責任(営業組織であれば「数字」に責任を持つ)
・組織・人材マネジメント(組織運営、部下・後輩の活用・成長支援)の経験
・一段上のレベルの視座の習得


③⑦プロジェクトへの参画・新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ:

・全方位で戦略を立案し実行すること
・チームメンバーの考え方を学ぶ。自身の能力・スキル・知識の限界を知る
・成功体験、苦労・失敗体験からの学び
・ビジネス構想力の醸成。リーダーとして関係者を巻き込み、プロジェクトの完遂に向け引っ張っていくこと
・事業の目的達成のため、効果的・効率的に組織を構築し運営すること


④海外勤務:

・異なる価値観をもつ人材のマネジメント経験
・カンパニー横断的な守備範囲の広さにより視野・知識・経験の拡大
・日本よりも高い職位で仕事をすることで、上位職の視点を身につける
・マネジメントとの距離の近さ、客先VIPとの接点の多さによる学び
・会社の代表として仕事をすることで、トップマネジメントの視点を身につける
・海外における事業のゼロからの立ち上げ、難局への対処の経験
・家族の在り方、働き方に対する価値観の変化


⑤悲惨な部門・業務の改善と再構築(再建・EXIT):

・かなり厳しい状況に置かれても逃げ出さず、やり抜く姿勢
・タフな意思決定と、難しいタスクの実行
・人を動かす経験、解決策を模索する経験
・逆境下での経験を通じて自分自身を見直すこと


⑥ラインからスタッフ部門・業務への配属:

・高度な専門知識の習得、全社的視点の獲得
・全く新しいキャリア形成の可能性


⑭社長経験:

・グループ会社の社長経験を通じた経営の実践


⑮経営企画・経営管理:

・経営方針・戦略立案の策定、定量管理、社内制度・プロセス等の習得
・全社を俯瞰(ふかん:全体を上から見ること)することによる視野拡大
・マネジメントからの薫陶(くんとう:人徳や品格のある人から影響を受け、人格が磨き上げられること)


⑯部門間異動:

・異なった業界、商品知識、業務プロセスの習得
・要素の新しい結合によるイノベーション創出
・受け入れ部署における思考・組織文化の硬直化の防止



私自身の商社における経験

私は伊藤忠商事の人事部に22年間勤めました。その間、それぞれのステージに適した「一皮むける経験」を積んできました。私自身の経験を参考までにみなさんと共有したいと思います。

【新入社員】学生から社会人への意識改革、基本動作・知識の習得、チームプレーの重要性の理解:

商社の新入社員は、今までグループの先頭集団を走っていた人が、グループの一番後ろに並ぶようなものです。先輩たちの優秀さに圧倒されるとともに、自分の未熟さを痛感し、学生気分が一気に吹っ飛びました。商社パーソンとしての第一歩を踏み出した実感と、これから商社パーソンとして活躍する覚悟を強く持ったことを覚えています。

商社の仕事は、学生時代にやってきたこととは大きく違い、何もかもが新鮮に感じられました。まずは、与えられた「作業」を一つ一つ習得し、人事パーソンとしての基本動作・知識の獲得に努めました。また、なぜその「作業」をやる必要があるのか、トコトン追求しました。そして徐々に「仕事」の割合が増えていきました。幸いにも若手社員に「仕事」を任せてもらえる環境にあり、自ら課題を探し、自分なりの解決先を模索しました。私は入社後、新卒採用を担当しましたが、優秀な学生とはどういう学生なのか、優秀な学生を採用するにはどうしたらよいかを自分なりに考え、実行に移していきました。当時ちょうど、大学別のリクルーター制からより公正でオープンな採用・選考方法に移行していった時期であったため、東京国際フォーラムで5,000人規模のセミナーを先輩と共に企画・開催しました。何かインパクトのあることをしないと大多数の学生には伝わらないということで、商社志望の学生を主人公とした「劇」をしたことを懐かしく思います。

うまくいったことよりも壁にぶつかり、立ち止まってしまったことの方が多かったですが、そのたびに、上司や先輩が救いの手を差し伸べサポートしてくれました。「仕事」は決して一人ではできないということを、早いうちに実感できたことは非常にプラスになりました。
【3年目】:後輩を育てる責任、自分の言動の影響力、一段高いレベルの仕事

3年目になると新入社員が同じ組織に入ってきました。私は「指導社員」として、上司とともにその新入社員の成長を支援する責任を負うことになりました。希望に満ちあふれた新入社員の影響により、組織が明るくなり活性化されたように感じたことを覚えています。組織の中に「新しい血」を入れて新陳代謝を図っていく重要性を認識しました。また、新入社員と自分自身を比べると、自分がこの2年間でどれだけ成長できたかを実感することができ、成長意欲が増していったことも覚えています。

一方で、自分の言動の一つ一つが、周囲に大きな影響を与えているということに気づいた時期でもありました。軽い気持ちで言ったことに周囲が反応してしまい、周りの人に面倒をかけてしまったことがありました。自分自身の言動に責任を持つことの大切さを学びました。

右も左も分からない新入社員に仕事を教えるのは、正直、時間と労力がかかり大変です。でも、新入社員に今まで自分がやってきた仕事を渡すことによって、自分は一段高いレベルの仕事を担うことが可能となります。また、「ラーニングピラミッド(*)」が、「人に教えること」により学習定着率が90%にまで高まると示しているとおり、新入社員に仕事を教えることを通じて、自分自身の知識・スキルが整理され、定着していったと感じました。

ラーニングピラミッド


【4~7年目】企画・立案、プロジェクト遂行、自己認識、海外出張経験:

4〜7年目はいろいろなことを理解し始め、徐々に「仕事」を任されるようになった時期です。人事評価制度改革という大きなプロジェクトメンバーの一員として、もがき苦しみながらも、やりがいを持って仕事に打ち込んでいました。関係者を巻き込みながらプロジェクトを進めることを経験し、その難しさを痛感しました。また、視野が狭く、自分の担当領域にしか目がいかず、全領域を俯瞰(ふかん)する力がまだまだ足りませんでした。

今思うとこの時期は、自分自身を過大評価していて、「自分はできる」と勘違いしており、自分の実力を客観視することができていませんでした。

この頃、出張で1ヶ月半の間に13ヶ国を訪問する機会がありました。エリアとしては東欧(チェコ、ポーランド)、CIS(ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン)、中近東(UAE、カタール、オマーン、イラン、トルコ、イスラエル)、それとパキスタンです。これらの国には駐在員が派遣されており、就労環境や生活環境の厳しさを調査するのが目的でした。1ヶ月半で13ヶ国の訪問は肉体的にかなりしんどかったですが、駐在員が日本と異なる文化・風習の中で価値観の異なる人と働く大変さを実感するとともに、厳しい生活環境で生活している社員や家族と直接コミュニケーションが取れたことは大変意義のあることでした。現場感覚が磨かれました。
【8年目、NY研修】多面的なものの見方、専門知識の獲得、異文化コミュニケーション:

入社8年目に、人事部の研修生としてNYに派遣されました。海外はバックパッカーとしての旅行や、出張で何度も行きましたが、長期にわたり海外に居住するのはこれが初めてでした。

業務内容は、海外駐在員の処遇関係が中心で、日本でやっていた仕事の受け手側の仕事をしました。仕事の反対側を学ぶことで、本社から海外に依頼する際の受け手側の気持ちを理解するなど、仕事をより多面的に捉えることができるようになりました。人事の分野では、アメリカは日本の10年先をいっているので、アメリカの「今」のトレンドは、日本の10年後のトレンドになると仮説を立て、とにかくアメリカの人事の理論や事例などをよく勉強していました。当時アメリカでは「エンゲージメント」という考えが主流でした。その数年後、日本でも「エンゲージメント」が話題に上るようになりました。海外研修のうち1ヶ月間は、ロサンゼルスにある事業会社にて勤務しました。そこは製造業の会社で、多くの工場労働者を抱えていました。その会社で、「エンゲージメント」に関する社員調査を実施し、改善点をマネジメントに提言しました。

最初の頃、アメリカ人の現地スタッフとのコミュニケーションに大変苦労しました。言葉の問題もありましたが、コミュニケーションスタイルが大きく異なり、最初はかなり戸惑いました。相手を変えようとするのではなく、自分が変わることで次第に適応できるようになりました。職場に限らず、米国人とのコミュニケーションがスムーズになると、世界が一気に広がった気がしました。日本と大きく異なる環境で外国人と協業することで、かなりの自信がついた期間でした。
【13年目、初めての組織長経験】部下を育てる責任、リーダーシップの獲得:

入社13年目にはじめて「組織長」に就任しました。それまでは「プロジェクトリーダー」や「チームリーダー」といった「リーダー」としての役割を果たしてきましたが、「組織長」として部下を持ち、評価権(部下の能力やパフォーマンス等を評価する権限)を持つのはこれが初めてでした。海外人事関係の制度企画・オペレーションを行う組織の長で、部下は約20名と大所帯でした。

当時は仕事も順調にいき、「プレーヤー」としての実力がついてきたと実感していた時期でした。今思うと、無意識のうちに、聞く耳を持たず、自分自身の考えややり方を部下に押し付けてしまっていたようです。また、話しやすい人と、そうでない人とで接し方や話しかける頻度が無意識に違っていました。そのため、多面観察(*)の結果は良くありませんでした。多面観察からたくさんの気づきを得て、自分のリーダーシップスタイルを改善するきっかけとなりました。組織長経験はプレーヤーから真のリーダーへと飛躍するきっかけとなった貴重な経験でした。

(*)多面観察:通常、評価は上司が部下、つまり上から下を評価しますが、多面観察は評価というよりは「観察」で、部下から上司、同僚が同僚を、特にリーダーシップスタイルについて観察評価します。
【15年目、NY駐在】異文化マネジメント、視野の拡大、新たな知識・スキルの獲得

その後、北米(米国・カナダ・メキシコの3ケ国)を統括する現地法人の人事・総務担当として、約6年間NYに駐在しました。この現地法人は、ホールディングカンパニーとしての機能を有しており、管下の十数社のグループ会社を統括し、グループ会社と一緒になって企業価値を高めていく役割を担っていました。

前回のNYは研修生としての赴任でしたが、今回はマネージャーとして、日本人と米国人の部下を複数人ずつ抱えることになりました。部下には年上もいましたし、現地採用スタッフもいました。多様な人材をマネージする難しさを痛感し、また、部下の社会人人生に責任を負うことになり、もがき苦しみましたが、異文化マネジメントの経験を積み、大きく成長することができました。

2回目のNYでしたし、赴任前は日本で北米の人事関係を担当し、事前に課題を認識していましたが、赴任直後あえて頭を真っ白にし、先入観を持たず「おかしいと思うこと」「違和感を覚えること」をリスト化しました。それを駐在予定の5年間で「取り組むべき10つの課題」として掲げ、長期的な視点に立ち、それらの課題にひとつひとつ取り組みました。

駐在員の人事・総務面でのフォローに加え、管下の米国・カナダ・メキシコにあるグループ会社の企業価値を、人事の観点からいかに高めていくかが重要なミッションでした。一つは、グループ会社のマネジメント(社長等)のインセンティブプラン(報酬制度)の見直しです。短期的な収益アップと長期的な成長の種まきの両立を、インセンティブプランによってどう促進していくかというかなり難易度の高いミッションでした。短期的なインセンティブ(Short Term Incentive Plan:STIP)と長期的(2ー3年)なインセンティブ(Long Term Incentive Plan:LTIP)の効果的な組み合わせを模索しました。日本にはLTIPという制度は一般的ではなく、またインセンティブプランを検討するには、ビジネスや決算の仕組みを理解していなければいけないため、大変勉強になりました。二つ目は、デューディリジェンス(Due Diligence:DD)に関してです。DDは投資やM&Aを行う際の事前調査のことを言いますが、人事の視点でのDDのチェック項目を設定しました。たとえば、経営者の適性、企業文化の分析、労働法の順守状況などについてです。これらの重要なミッションをマネジメントや米国人スタッフとの協業を通じて行いました。経営そのものに関与した貴重な経験でした。

イントラネット(組織内に限定した情報共有ツール)の改修プロジェクトもありました。日本だと、事前にいろいろな人の意見を吸収し、トライアルを経て、完璧な状態で立ち上げます。不具合が生じるとクレームが発生します。一方、この現地法人では、50%の完成度でも立ち上げました。そうすると、「こういう情報が必要」「こういう機能を追加してほしい」といった建設的な意見がたくさん出てきました。そして、少しずつ完成度の高いイントラに仕上がっていきました。このプロセスは、まさにアジャイル(素早い、俊敏な)的な手法であり、イノベーションの世界では当たり前の手法でした。日本では経験できないプロジェクトの進め方でした。

海外では、マネジメントに近いところで仕事をすることができ、また他業界の人たちと交流する機会が格段に増えます。これもまた海外に駐在するメリットであると思います。
【21年目、営業人事】現場経験、営業部署の経験

営業人事として、ビジネスの現場に近いところで人事業務に携わる機会がありました。ちょうどデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれ、ビジネス環境がうねりを起こして変化している時期でした。既存のビジネスモデルが陳腐化する可能性があり、商社に求められる人材像も大きく変化していく時代でした。この時に注力したのが、メンバーのデジタル・テクノロジー・リテラシーの向上です。商社に最も求められていて、最も不足しているのがこのリテラシーですから、研修や経験付与を通じてその向上に努めました。また、強靭なバリューチェーンの構築も課題でしたので、部門間異動を積極的におこない、メンバーの視野や経験の幅を広げるよう努力しました。

「一皮むける経験」の中に、⑥ライン(営業)からスタッフ部門・業務への配属というのがありますが、私の場合はスタッフ部門から営業の部署への異動でした。北米の経験はありましたが、本社の営業部署での勤務の経験がありませんでしたので、視野が大きく広がりました。人事部にいた時は机上のことのような感覚がありましたが、現場の近くで実際のビジネスに根差した人材戦略を立案・実行できたのは、貴重な経験でした。


私の「キャリア」や「成長」に関するストーリーは以上のとおり「人事」を軸としたものでした。職務ローテーションを通じて、さまざまな新たなチャレンジが与えられ、それらをやり抜くことによって、能力的にも精神的にも成長を遂げてきました。
商社パーソンのみなさんは、それぞれの「キャリア」や「成長」のストーリーを持っていますが、「一皮むける新しいチャレンジ」とそれを「やり抜く」ことを通じて成長していることは共通していると思います。



【まとめ】
・商社には、幅広く深い成長機会が豊富に用意されている。
・商社では、「一皮むける新しいチャレンジ」を、ローテーションを通じて、意図的・計画的に付与し成長を促す。
・ただし、本人自身が「Growth Mindset」を持ち、与えられた機会を「GRIT」することが「成長」の前提である。
【​参考文献】
・金井壽宏(2016年)『仕事で「一皮向ける」−関経連「一皮むけた経験」に学ぶ』光文社.

次回は、【商社就活】#3 「次世代商社」における求める人材像 です。お楽しみに!


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