長野辰次

フリーライター。「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿。ムック本に『パニック映画大解剖』…

長野辰次

フリーライター。「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿。ムック本に『パニック映画大解剖』『80's映画大解剖』。 電子書籍版「パンドラ映画館」発売中 https://www.amazon.co.jp/dp/B019EXXUKK/  取材やレビュー等の案件あれば、ご連絡ください。

最近の記事

全国の名物書店を巡るロードムービー 篠原哲雄監督の自主レーベル作『本を綴る』

栃木、京都、高松の個性派書店&図書館が登場  流行ばかり追いかけていると、大切なものを見失ってしまう。時代に抗うことはできないと言うけれど、ずっと残ってほしいものがある。それは町の本屋さんだ。自分が暮らす町から書店が消えてしまうのは寂しい。喫茶店や映画館もそうだが、地域の文化拠点はいつまでも賑わっていてほしい。  とは言ってもやはり現実は厳しく、1990年代の終わりには2万3000店あった書店が、2020年には1万1024店と半減している。書店が一店舗もない自治体も増えて

    • オカルトとメディアリテラシーを掛け合わせた『悪魔と夜ふかし』がおそろしく面白い!

      進化しつつあるホラー&ミステリー  まったく異なるジャンルの曲と曲を掛け合わせる「マッシュアップ」と呼ばれる音楽の手法がある。聞き馴染みのある曲でも、別の曲とミックスされることで、新鮮な感動を覚えることになる。映画の世界でも、「マッシュアップ」を思わせる手法を用いた作品が近年は増えつつあるように感じる。  2024年8月に公開され、スマッシュヒットした白石晃士監督の『サユリ』は、従来のJホラー映画をベースにしながら、途中から転調する。主人公が強烈なギャグを発するシーンは、

      • 描かずにはいられなかった初期衝動の物語 藤本タツキ原作の劇場アニメ『ルックバック』

         漫画家・藤本タツキの読み切りコミック『ルックバック』が、上映時間58分の劇場アニメーションとなり、6月28日より全国公開されている。『ルックバック』はクリエイターたちがもっとも大切にする“初期衝動”をモチーフにした作品だ。連載漫画『チェンソーマン』を大ヒットさせた藤本は、2021年7月19日に『ルックバック』を集英社のウェブサイト「少年ジャンプ+」にて発表した。人気漫画家として、これから先に進む上でどうしても描いておかなければいけない作品だった。 運命に引き寄せられた少女

        • 人間が非道化するメカニズムを解き明かす 注目の映画『ゲバルトの杜』『関心領域』

           人はなぜ人に、暴力を振るうことができるのか? また、人が暴力を受けているのを見て、平然としていられるのはどうしてなのか? 暴力のメカニズムをテーマにした映画は、これまでたびたび作られてきた。「スタンフォード監獄実験」を題材にしたドイツ映画『es〔エス〕』(2001年)やそのハリウッドリメイク版『エクスペリメント』(2010年)などは有名だろう。  早稲田大学で起きた内ゲバ殺人事件の真相に迫った映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』(5月25日公開)、第二次世界大戦中のア

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          山田太一脚本、篠田正浩監督の『少年時代』 複雑な内面を持つガキ大将・タケシの魅力

           SF映画やメタフィクション系のトリッキーなドラマでもないのに、ここまで重層的な構造を持つ作品は珍しい。藤子不二雄(A)原作&プロデュース、山田太一脚本、篠田正浩監督による映画『少年時代』(1990年)は、あらゆる世代の日本人にノスタルジー感をもたらすだけでなく、ひとりの人間が持つ複雑な内面を掘り下げた興味深い物語となっている。  2023年11月に亡くなった山田太一は『男たちの旅路』(NHK総合)や『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)をはじめとする数々の名作ドラマや小説『異

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          「仮面ライダー」俳優・中村優一の新しい冒険 初監督&プロデュース作『YOKOHAMA』公開

           俳優でありながら、映画監督でもあるという才人たちがいる。米国で言えばクリント・イーストウッドにメル・ギブソン、それにロブ・ライナーやベン・アフレック。日本でも北野武、竹中直人、田口トモロヲ、近年はオダギリジョー、斎藤工、山田孝之らが映画監督やプロデューサーを務めるようになってきた。映画が好き過ぎて、カメラの前に立つだけでは満足できず、映画づくりそのものが好きになってしまったクレバーな映画狂たちだ。  多くの俳優たちも「監督してみたい」と思ってはいるはずだが、なかなか実現は

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          レスラー一家を襲った「呪い」の正体とは? プロレス界の光と闇を描いた『アイアンクロー』

           科学的に証明することができない「呪い」は実在するのか? 映画『アイアンクロー』は、米国の家族愛に溢れたプロレスラー一家を悩まし続けた呪いの正体を突き止めた力作だ。ただし、オカルトめいたホラー映画ではなく、実話をベースにしたリアルな人間ドラマとして描かれている。  主演はザック・エフロン。『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』(08年)などで活躍したアイドル系のイケメン俳優だったが、近年は米国犯罪史に名前を残すシリアルキラーを演じた『テッド・バンディ』(17年)に主演

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          「家族」という檻を破壊する新種モンスター! 内藤瑛亮監督と押見修造のコラボ作『毒娘』

           この映画を観た人は、新しい都市伝説の誕生の瞬間に立ち会うことになるかもしれない。そう思わせるのは、内藤瑛亮監督のオリジナル脚本による映画『毒娘』だ。内藤監督はネットの掲示板で読んだ実在の出来事をモチーフに、新時代のホラーアイコンとなる「ちーちゃん」を生み出している。  これまでも『先生を流産させる会』(12年)や『許された子どもたち』(20年)といった実話からインスパイアされた社会派の問題作を、内藤監督は撮ってきた。今回のモチーフとなったのは、2011年に子育てブログに投

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          美形俳優の岡田将生には犯罪者役がよく似合う 金子修介監督の傑作サスペンス『ゴールド・ボーイ』

           実績を残し、溢れる才能を持ちながらも、充分に評価されているとは言い難い現役の映画監督として、金子修介監督が挙げられる。『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95年〕をはじめとする平成「ガメラ」三部作(95年~99年)は日本の特撮映画を新時代へと導いた。『デスノート』二部作(06年)は現在も続く人気コミックの実写化ブームの火付け役となった。  若い俳優たちの魅力を引き出すことでも定評のある金子監督は、40年におよぶ監督キャリアを娯楽作品づくりに捧げてきた。作家性を打ち出した作品を発表

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          ロマンティックあげるよ 古川琴音主演の異色ラブコメ『雨降って、ジ・エンド。』

          「ロマンティックあげるよ ロマンティックあげるよ」  古川琴音が主演した映画『雨降って、ジ・エンド。』には、TVアニメ『ドラゴンボール』(フジテレビ系)のエンディング曲「ロマンティックあげるよ」が挿入歌として使われている。「ロマンティックあげるよ」という歌詞そのままの、軽快なロマンティックコメディだ。また、映像ユニット「群青いろ」の17年ぶりの劇場公開作としても注目される。  物語の主人公となるのは、フォトグラファーを目指している女の子・日和(古川琴音)。SNSに自撮り写

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          大人のためのイマジナリーフレンド ウディ・アレン脚本作『ボギー!俺も男だ』

           子どもの頃に空想上の友達と会話した記憶はないだろうか。ひとりぼっちのとき、空想上の友達と会話し、一緒に遊ぶことで、孤独さをやり過ごすことができた。次第に成長し、社会性を身につけていくにつれ、空想上の友達とは疎遠になっていった。ずいぶん後になってから、空想上の友達のことを「イマジナリーフレンド」と呼ぶことを知った。  誰もが大人になるとその存在を忘れてしまう「イマジナリーフレンド」だが、大人になってからも付き合い続けた人物がいる。俳優であり、映画監督でもあるウディ・アレンだ

          大人のためのイマジナリーフレンド ウディ・アレン脚本作『ボギー!俺も男だ』

          東海テレビの新作ドキュメンタリー『その鼓動に耳をあてよ』が映し出す、医療現場とテレビ局との意外な共通点

           カメラが映し出すものは、レンズの向こう側にある被写体だけではない。レンズのこちら側にある撮影者の心情まで、赤裸々に映し出してしまう。カメラは被写体だけでなく、撮影者までも素っ裸にしてしまう。  北野武監督の7年ぶりとなった映画『首』(23年)は、戦国時代の武将たちの愛憎劇をコント風に描きながらも、監督自身の内面をリアルに映し出していた。かつての北野映画にはダンカン、柳憂怜ら「たけし軍団」が重要な役で出演していたが、いつしか彼らは北野映画から姿を消してしまった。北野監督は再

          東海テレビの新作ドキュメンタリー『その鼓動に耳をあてよ』が映し出す、医療現場とテレビ局との意外な共通点

          数字に追われるメディア関係者に観てほしい 東海テレビのドキュメンタリー映画『その鼓動に耳をあてよ』圡方プロデューサー×足立監督対談

           不慮の事故や急病になった際の命綱となるのが、ERこと救命救急センターだ。救急医がヒーロー的に活躍する医療ドラマはたびたびテレビ放映されているが、東海テレビが製作したドキュメンタリー映画『その鼓動に耳をあてよ』は、救命救急センターで働く医療スタッフの素顔をありのままに映し出している。  愛知県名古屋市にある「名古屋掖済会(えきさいかい)病院」の救命救急センターは、年間1万台もの救急車を受け入れている。運び込まれてくる患者は、自殺者、保険証を持たないホームレス、独居老人といっ

          ¥200

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          ¥200

          映画館は“人生の不条理さ”を学ぶ学校だった 『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

           航空機乗っ取り犯のことをハイジャック犯と呼ぶが、この映画は「青春」を乗っ取られた若者たちの物語となっている。純真な若者たちから大切な青春を奪った犯人は、いったい誰か? それは映画であり、映画館であり、そして挑発的な映画を撮り続けた若松孝二という映画監督だった。井浦新、東出昌大、芋生悠、杉田雷麟らが出演した映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』が3月15日(金)より全国順次公開される。  劇中でも語られるが、若松孝二はヤクザから映画界に転身した異色の映画監督だった。

          映画館は“人生の不条理さ”を学ぶ学校だった 『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

          “和製トランボ”馬淵薫の最高傑作 八千草薫に魅了される『ガス人間第一号』 

           多くの男性に忘れられない一人の女性がいるように、多くの人に忘れられない一本の映画がある。鮮明に脳裏に焼きつき、折を見て見返したくなってしまう。自分の人生において、とても大切なことを教えてもらったような気がしてならないからだ。笑われるかもしれないが、私にとってのその一本が東宝の特撮映画『ガス人間第一号』(60年)になる。  怪獣映画の金字塔『ゴジラ』(54年)を撮った本多猪四郎監督と円谷英二特技監督との黄金タッグ作であり、東宝の「変身人間」シリーズ『美女と液体人間』(58年

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          こんな仕事をしてきました。

           ライター長野の職歴を紹介します。週刊ザテレビジョン編集部を退職後、フリーライターとなりました。2001年に、テレビ業界や映画制作の現場で働く裏方さんたちを取材した初の単行本『バックステージヒーローズ』を上梓。その後は「キネマ旬報」「映画秘宝」「月刊サイゾー」などに寄稿してきました。日刊サイゾーで週間連載を15年にわたって続けた映画コラム「パンドラ映画館」は電子書籍化もされています。今はなき月刊誌「DVD ビジョン」で、鈴木清順監督をインタビューできたことは大切な思い出になっ

          こんな仕事をしてきました。