小さな復讐
「太めの針を刺します」
うちの常連さんには看護師さんがいまして。
それはそれは大変な仕事なのです。
「夜は酔っ払った人が運ばれてきたりしてですね」
そんな事を嘆いていて、それは腹が立つよなと勝手に同意して。
(決して腹が立つとは言ってない)
「本当に治療が必要な人がいるのに、酒を飲みすぎて運ばれてくるなんて迷惑だ」
僕は酔っ払いには人一倍厳しく、自己責任おじさんでもあるので、酒を飲んで運ばれてくるなんて許せないのです。
だから
「そんな奴にはウコンの力でも飲ませとけばいいんだ」と、飲む前に飲むやつを処方しようと提案した所、返ってきたのが冒頭の言葉で。
「太めの針を刺します」
恐ろしいぜ、看護師さん。
「酔っ払ってるから気付かないですしね」
ちょっと怖いです、看護師さん。
いつ何時も、サービスをしてくれる人を、敵に回すのは悪手です。
(看護師さんの仕事をサービスと捉えるのは違うかもだけど)
(便宜上ね)
お店の人も敵に回すべきではなくて。
確実に一ミリも得しません。
マニュアルが確率されたチェーン店ですら、扱いに差はでます。
「えっ?そんな事ある?」
そう思ったあなた。
良いお客さんか、気付いてないバカのどちらかでしょう。
僕らはギリギリの復習を企てたりするのです。
(露骨だとクレームになる可能性があるので)
(面倒は増やしたくない)
お酒の量が少ないとか。
脂身が多いお肉とか。
芯が多めのキャベツとか。
業種によって様々な小さな復讐の機会があるのです。
僕の場合は露骨に接客が雑になるかな。
タメ口の人にはタメ口で返すとか。
声のトーンが下がるとか。
冷たい目線だとか。
可愛いもんです。
(自分で言うな)
ただ、商品を雑に作る事が出来なくて。
本当はしたい。
ちょっと語弊があるな。
出来るもんならやってみたい。
でも、カフェラテという商品特性上、それが出来ないのです。
時間が経ったエスプレッソを使うとか、ぼこぼこにスチームしたミルクを使うとか。
やりようはあるけれど、そっちのほうが手間でして。
さっさと提供して帰ってもらいたいし、ミルクは目を瞑ってても滑らかに出来てしまうし。
(急に自慢)
だから、どうやっても美味しいカフェラテが出来てしまってね。
いやはや、残念です。
何をすれば美味しくなくなるんだろうか。
(天狗)
太めの針で刺すのもね、治療なのは間違いなく。
ほんとは悪化させてやろうと思ってるはずで。
(違う?)
(歪みすぎ?)
「こんな運ばれ方しやがって、こっちだって忙しいんだ」
そんな事を思わない訳がないんです。
でも、処置はしなきゃいけなくて。
だから、せめてもの抵抗が、太めの針なのです。
敵に回したらいけない人は分かりましたね。
飲食店の店主と看護師です。
「私も」って方、お店で話を聞きますので、お待ちしてます。
小さな復讐話を聞かせてください。
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