見出し画像

「能力」の理論

えっ、「能力」ってそういうことだったの!?というお話。
そして、やはりそのベースとなる人と人との関係において重要なのは「心理安全」


Well-beingな人生を送るためにも、その人の能力を活かすこと。そして、そんな「能力」を開発できるお手伝いをしたいと常々思っている。
でも、「能力」を分解したことがなかった。強み、価値観を生かしたところくらいに思っていた。そして、出会ったのがこの「能力」の理論である。

「能力」という概念
企業ができること、できないことを決定する要因、つまり能力は、「資源」「プロセス」「優先事項」の三つの分類のいずれかにあてはまる。

『イノベーション・オブ・ライフ』クレイトン・М・クリステンセン

この本は、ハーバードビジネススクールで人気のある授業ということで、手に取ったもの。読み進めると、『イノベーションのジレンマ』等で有名なクリステンセン教授が、経営の理論を人生の理論として応用していく様が実に見事で、そして生きるうえでの大事な理論になるほどの連続!その一つの理論をここで私なりに解釈してみる。

ビジネスにおける「能力」

この本の中では、DELLがPCメーカーとして台湾のASUSにアウトソーシングし、そして、その中身がすべてASUSにアウトソーシングされるようになり、個人向けPCメーカーとしては下降していってしまったという例が書かれている。それは、①「資源」はバランスシートに載る見える部分、そして、②「プロセス」 ③「優先事項」は表れない部分であるということ。アウトソーシング部分が増えることによって、未来の企業の成長部分も失ってしまったのである。


人の「能力」3分類


これを、人の「能力」で考えてみよう。
①「資源」部分に注目すると、金銭的、物質的資源、時間、労力、知識、素質、人間関係などがある。この「資源」はもちろん必要だ。親はこの「資源」という能力に注目し子どもに与えてあげようと努力していることが多い。
しかし、②「プロセス」の部分が欠けてしまうと、資源があっても行動することができない。「プロセス」は、どうやって行動するか?の方法のところである。指示通りにしか動くことができない人は、この「プロセス」が欠けている。つまり、今まで自分で成し遂げて、どうやって行動してきたか?という「経験」があるかどうかで、行動できるかできないかが決まってくる。
③の「優先事項」は、理解が難しい。これは、言ってみればどこに向かって行くかというベクトルに対する基準とも言えるのではないか。私の好きな言葉に「真善美」という言葉がある。ルールが正しければ、ルールに従っていればいい。しかし、特に現代は目まぐるしく世界が変わり、ルールも追いつかない。だから、自分の基準を持つ必要がある。それが、「真善美」の基準を持つということ。そこには、自分の大事にしている価値観が入っている。美意識が入っている。その基準を持てるから、ベクトルに向かう判断ができる。判断ができるから、行動できる。

さて、つまり、例えば親のエゴ「子どもに不自由のない暮らしを」などということで、ほぼ「資源」のみを与えたとする。これが、クリステンセン教授の言うアウトソーシングにあたる部分だが、例えば、習い事をたくさんさせて経験させるという考えがある。どれが興味があるか分からないから、たくさん経験させる。その「経験」は、プロセスの「経験」とは違う。何か困難を経験して、そこを工夫して成し遂げるから、それは能力としての「経験」になるのである。習い事で、言われたことをするだけのスキルは、持っていても使いようがない。だから、IQからEQの大事さが言われているのではないか?困難が伴う経験は、人間関係だったり、一緒に作り上げたりと人との関わり合いが伴う。その時に、どうやって成し遂げたか、そのノウハウが「経験」と呼ばれるものだ。

習い事が悪いわけではない。習い事で、「プロセス」や「優先事項」が身に付くのであればそのような習い事も良い。
例えば、日本的なマナーを価値基準として身に付けることができればそれは、「優先事項」の部分でも能力となる。その場限りでなく、目標に向かって成し遂げることができるようなものであれば、それを本人が自分で決めてプロセスを切り開くのであればよいのであろう。

マッコールの理論 

『ハイフライヤー 次世代リーダーの育成法』モーガン・マッコ―ル教授
の理論
「正しい資質」について
彼らが人より優れたスキルをもって生まれたからではない。むしろ、仕事での適切な経験をとおして、大きな利害のかかった状況で挫折や極度のストレスに対処する方法を学び、優れたスキルを磨いてきたからなのだ。
マッコ―ルのモデルはプロセス能力を測ろうとするもの

『イノベーション・オブ・ライフ』クレイトン・М・クリステンセン

クリステンセン教授が人材採用において、探し求めてたどりついたこちらのマッコ―ルの理論、能力の「プロセス」の部分を重視するということ
本では、履歴書に載るような肩書や会社名は「資質」にあたるものだが、そこで人を採用するのではなく、この「プロセス」どのような経験をしてきたか、過去形の動詞に注目すべきともある。

随分前に私も「プロセス教育」という記事を書いていたが、このプロセスの能力、意識して個々が主体的に動けるようにサポートできたらいいと思う。

能力を伸ばすために、親、リーダーができること

では、会社でリーダーとして、または家庭で親として、どう育てればよいかというと、

  • 自分でプロセスを経て成し遂げる経験をさせてあげる

    • 問題があったときに、自分で解決する

    • 目標に向かって、何をすればよいかを考え行動する

    • 達成感・自尊心を養う

  • 自分の行動をとおして、優先事項や価値観、真善美を示す

    • 何が大事な価値観か、自分も意識する

    • 子どもは教えられて身に付くのでなく、自分で気づく

  • 見守る・挑戦させる

    • セキュアベースになる ココロが安心した状態を作る

    • 挑戦を応援する

何だか難しいことをたくさん書いてきたが、つまりは、味方となって挑戦させる。そして、見守る。大事なこと、伝えたいことは、自分が自分の行動をとおして見せる。たくさん、経験させてあげて、大変な山でも自分で超えられるように見守っていこうねということ。それには、「ここにいるよ」「見てるよ」「応援しているよ」という心理安全のベースになること。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?