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別府は音楽カルチャーが根付く街?現役大学生DJから見た別府の音楽シーン。

2021年もついに今日で終わり。そんなギリギリのタイミングまで記事作成に勤しむ年末、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?思いつきで始めた企画ですが、前回のnoteは想像以上に多くの方に読んで頂けて嬉しい限りです。「年末最終日にアップしても誰も読まないんじゃないか」という不安もありますが、年末に読まなくても年始のだらだらしてる時間にでも読んでくれたら嬉しいです。

さて!the HELL MAGAZINEの2021年12月は、別府の大学に通うDJ2名に話を聞いてきました。日々至るところでイベントが行われている東京や大阪などの大都市ではなく、人口もクラブの数も圧倒的に少ない別府という街でどのようにDJをしているのか。編集長であり、the HELL オーナーの深川謙蔵を中心に、2人へのインタビュー形式でお届けします。

音楽好きの家庭で育った2人

謙蔵:今日はよろしく!まずは自己紹介からお願いします。

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海里 : 海里です。APU(立命館アジア太平洋大学)4回生で、今は一年間休学してます。別府に来てからDJを始めて、今はThaleってDJネームでやらしてもらってます。主に別府・大分、最近は九州近郊の県にも呼んで頂いてDJしています。

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Gura:インドネシア出身のGura(グラ)です。僕もAPUに通っていて、2019年からDJを始めて、2020年から別府のバーやクラブでDJをしています。よろしくお願いします。

謙蔵:2人はいつから音楽をよく聴くようになったの?

Gura:ドイツにいた頃からですね。音楽好きな家族で、お父さんからレコードやCDやカセットテープを聴かせてもらって、好きな音楽のテイストを理解できるようになっていきました。
誕生日に父がドラムセットを僕にプレゼントしてくれたことをきっかけに、小学6年生の時から同い年の5人でバンドを組んだんです。

高校の終わりの頃には、大会にも出てパフォーマンスしたりしてました。

DJを始めたのは19歳からで、インドネシアにいた頃に友達から機材を借りて基礎的なところを練習して、実際に人前でプレイしたのは別府が初めてですね。

海里:僕も同じで父親の影響が大きくて、自宅で宇多田ヒカルとか鎮座ドープネスとかTUBE、ボン・ジョビ、Zeebraとかめちゃくちゃ幅広く聴いてました。いわゆる2000年代のクラブミュージックとかヒップホップとかを中心に聴き始めたのも今DJをやってることに大きく影響している気もします。
DJに関して言えば、高校一年の時にSUMMER SONICに行って、RadioheadとかLinkin Parkとかを見て「DJってなんなんや?」って感じでしたね。そこからDaft Pankに出会って、初めてDJとは何かを知りました。当時はギターを始める友達は多かったけど、誰もDJやっていなかったから、じゃあ僕はDJやろうみたいな(笑)



謙蔵:二人は幼い頃から音楽が身近にある環境で育ったってことだね。

海里:そうですね。まあ、グラは特別すごいっすけどね(笑)

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DJ人口増加の背景にはEDMブームがある?

謙蔵:2人ともDJとかクラブに触れるタイミングが早いよね。


海里:僕らの世代はEDMがバーって流行って、それがきっかけになってましたね。


Gura:僕もAviciiとかMartin Garrixとかは当時よく聴いてました。2015年あたりの彼らの活躍がきっかけでみんなEDMを聴くようになったし、クラブに行ったりDJをやりたいって人が増えていったと思うので、EDMってとても強烈な影響を与えてると思います。


海里:それは大きいですよね。だって今までロックとか聴いてた奴らからすると、あのEDMとかダンスミュージックの音ってやっぱ衝撃的なんですよ。「なんやこの音は?!」みたいな(笑)「DJって何してんねん?!」ってなるから、そこから(DJを勉強する道に)入っていく人は多かったなと。

謙蔵:確かに確かに。EDMと出会ったタイミングでDJを知るみたいなのはあるかもね。ただ、おれにとってのDJって、一部のオシャレでかっこいい人たちがやってることみたいなイメージだったかな。それこそ大学の先輩でもあるChilly SourceDJ KROさんたちが「ICE BOX」っていうイベントをRootsでやっていて、そこに遊びにいくのがおれらの大学生活。そこではEDMはほとんど流れてなかったから、EDMを聴いてDJを始めるっていうのはおれらの時代にはない感覚だね。まず同世代にDJはほとんどいなかったのに、今はいっぱいいるのが驚き(笑)

海里:そういう意味では、別府の(DJたちに対する)器が広くなったんかなとは思います。the HELLもできて。CREOLE CAFEもありますし。

謙蔵:確かに音楽に触れられる場所としての距離は近くなったかもね。それに加えて今はかなり手ごろに機材を手に入れられるよね。メルカリとかで探せばすぐに手ごろな値段のCDJとかスピーカーとかミキサーも見つかるし。


海里:そうっすね。それもかなり大きいと思います。新しい機材を買いたい時は絶対確認しますね。

謙蔵:おれが学生の頃はメルカリはなかったから、機材持ってる人なんてほんの一部。購買行動の変化が、DJを始めやすくさせてるのは面白いね。

海里:始めやすくなったからこその悩みもあって、これだけDJが増えるとその中で個性をどう出すのかってのはずっと悩んでますね(笑)

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日本と海外の音楽が混じり合う独自の文化圏「別府」

謙蔵:別府の音楽シーンって2人からはどう見えてるの?

Gura:APUに入学して、新入生歓迎のフレッシュマンパーティに参加した時に、別府には音楽のカルチャーがしっかり根付いていると感じましたね。それこそthe HELLとかCREOLEみたいな、ハウスやディスコ、ジャズなどのさまざまなジャンルが楽しめるお店が多くてすごく面白いと思いました。

日本の他の地域はよくわからないですが、東京や他の主要都市と比較してもかなり音楽カルチャーが強い街だと思います。

海里:別府がこんなに音楽カルチャーの濃い街だとはみんな知らないと思います。僕も別府に来るまで全く(別府が音楽の街っていう)イメージがなかったんですけど、入学した頃にダンスミュージックにハマり出して、「別府でDJできるのかな?」と思って入学したらDJ始められたみたいな感じです。
フレッシュマンパーティーに参加した時に、主催していた国際学生の先輩に「今度DJやらしてください」って相談したらどんどんチャンスを頂けて、繋がりが広がって行きましたね。



謙蔵:別府には日本人だけじゃなくて、国際学生もたくさんいるからパーティに幅が出るのもいいよね。国際学生と日本人のDJで何か違いとかはあるの?


Gura:国際学生は、(オーディエンスにも)親しみのある音楽をよくプレイするんですが、日本人は僕らとは異なるジャンルの音楽をプレイするので、独特な感性を持ってるなと思いました。


海里: 逆に面白いのは、国際学生が日本のシティポップをプレイしたりすることですね。



謙蔵:そうだよね。Guraは日本のシティポップはいつから聴いてるの?


Gura: 2017年頃から聴いてます。シティポップを聴き始めたきっかけはYung Baeですね。最近インドネシアンシティポップがかなり人気で、ディスコリアっていうアーティストは、独自のスタイルでインドネシアンシティポップを作り上げています。彼らのムーブメントは2017年頃から活発になっていて、踊りたくなる楽曲が多くて人気ですね。

海里:今は日本人ですら逆輸入(海外のアーティストの楽曲で日本の音楽/アーティストを知る)の人が多いですよね。Night Tempo 夜韻の楽曲を聴いて松原みきを知るとか、Ticktok経由で「真夜中のドア」を知る人が多くてすごい。



謙蔵:音楽に触れるチャネルは確実に広がってるよね。

海里:僕も国際学生に負けじとアジアの音楽カルチャーに対する知識を深めようと、インドネシアとかタイとか韓国のポップスを聴いてます。アジアのインディーズのシーンってめちゃくちゃ面白いんですよ。インドネシアのアーティストでいうと、Ikkubaru(イックバル)とか好きですね。




謙蔵:2人がDJで流すジャンルって、同世代の人たちが普段から聴いているような曲ではないよね。例えば、EDMとかみんなが知ってる曲を流した方がわかりやすくて、そういうジャンルを聴きたい人も多い気がするんだけど。

海里:クラブシーンを知り始めた時から、クラブって新しいものに出会える場所だと思ってます。知らないDJに出会って「この人のDJかっこいいな」とか「この曲なんですか?」っていう会話が生まれるのがクラブの良さやなーと。もちろんEDMの中でも好きな曲は当然ありますよ。ただ、みんなが知ってる曲だけで踊るのも楽しいんですけど、誰かが新しい自分だったり新しい体験を見つけられる場所を作りたいなと思って選曲してます。

Gura:僕はディスコだったりハウス寄りのジャンルが好きなので、バーや落ち着いた雰囲気の中でみんながよりフレンドリーになれたり好き嫌いが極端に表れないジャンルでDJするのが好きです。その方がDJする側の僕も、来てくれたお客さんもみんな平等に楽しめることができるんで。

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ローカルでDJをやり続ける楽しさと辛さ

謙蔵:2人はどうやってDJを練習してるの?

Gura:いつもチームで練習するんですけど、最近よく練習しているのは別府駅北高架下の「オフィス酒場 hood」ですね。そこで練習して、クラブやバーでプレイするみたいな。とてもオープンな場所で、音の響き具合を確認するにはちょうどよくて、chillな空間でリラックスしながらお酒と音楽を楽しむのにも最適な場所です。

海里:僕らの場合は、先輩のパーティーへテクニックを見に行くみたいな感じです。上の世代の方々からはたくさん吸収したいと思ってます。ただ、それだけじゃDJを始めにくいしやりづらいと思うから、練習会とかを開いて練習して、実際にクラブでプレイしてます。

謙蔵:別府でDJとかパーティーやってて大変なこととかある?

海里:うーん、集客(小声)

謙蔵:あー、人を集めることか。でも、グラのパーティーは結構人来るじゃん?この前とかうちの店に80人くらい来てたし。


海里:なんかおれが少ないみたい(笑)おれも頑張ってるのに(笑)



謙蔵:ごめんごめん(笑)グラはどうやって人集めてるの?


Gura:チームメンバーそれぞれが色んな場所でDJしながら国籍関係なく色んな人と話してvibesを共有するようにしてます。それを続けた結果、僕たちのパーティーは心地よいと感じて来てくれる人たちが増えていきました。

海里:パーティの楽しさを伝えるの超難しいんですよね。やっぱり普通の人からするとクラブって怖いイメージが絶対あるんですよ。だけど、そこで諦めるんじゃなくて「クラブってこんなことをしていて、こういう楽しみ方があるよ」って伝えてやっと一人来てくれて、そこから繋がっていくみたいな感じですね。もちろん集客が全てではないですけど、ちゃんと自分たちが何をやっているのかを示すことは大事だなって。



謙蔵:集客以外で難しいことはある?

海里:ローカルだとどうしても露出が少ないんで、パッといいDJしても見てる人がそもそも少ないからいきなりスターにはなれない。例えば東京の大きいパーティーで一本いいDJしたら一気に有名になるかもしれないですしね。もちろんそこにはかなりの苦労がいると思いますけど。

謙蔵:そういう時はさ、どうやってもっと自分のDJをうまくしていくの?例えばこういうDJを見にいくとか、色んなパーティーに足運ぶとかもそうだし。

海里:んー、同世代にはやっぱ敏感になりますしそれこそ上の世代の成功してる人のやり方とかどう思ってやってたんかとかを勉強しながら自分がそれを完全に真似るわけじゃないですけど、それを参考にしながらどういう動き方をしたらいいのかなみたいなのは考えながらやってます。

Gura:僕はコロナ禍になってから、実家(インドネシア)に戻れずにずっと別府にいたのでコントローラを買って、毎日ずっと自分の家でこもって練習してましたね。どこも出歩けないから(笑)

謙蔵:すげぇストイックだな(笑)

Gura: 毎日練習して、「あー、このミックスいい感じだな」とか「この曲めっちゃいいな」とか色んな発見を2ヶ月間ずっとしてましたね。毎日練習してるとパーフェクトの結果が出せると信じてたんで、楽しみながらしてましたよ。

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大学生DJの活躍を後押しする世代を超えた繋がり

謙蔵:福岡とか大阪とか東京みたいな他の都市と別府は何が違うんだろうか?どういう違いがあるのかとか別府の特徴とか。


Gura: 東京や大阪のような日本の大都市のクラブ・バーでは特定のジャンルに絞った選曲が多いし、大体どこも同じような雰囲気の場所が多い気がしますね。別府だと、RootsやBSBみたいなEDM系の場所や、ハウスやディスコ系のthe HELLやCREOLEみたいな感じで、狭いエリアにそれぞれの特徴が強い店が多くありますよね。これが他の大都市のバーやクラブとの大きな違いだと思います。


海里:僕は、別府は「上の世代と下の世代の幅がギュッとしてるな」というイメージがありますね。大阪とか東京とかやと、上の世代の方々と繋がろうとすると結構通り抜けないといけない壁みたいなものがあると思うんですけど、CREOLEの俊大さんみたいなバリバリ現役でDJをやっていた方々が若い人たちにこう歩み寄ってくれたりするんですよね。僕たちはそういう方達にリスペクトもありますけど、親しみを覚えて「DJ教えてください」とか「遊んでください」とか言える人や場所があることには感謝しなあかんなと思います。



謙蔵:じゃあ最後に。今後どんなDJになって、別府をこうしていきたいとか、どういうパーティー作りたいとかありますか?

海里:この街に受けた恩恵はでかいので、この街で続けるっていうのはもちろん大事ですけど、僕が有名になって「この街でやってたんだよ。」「この人たちにお世話になったんだよ。」て感じで恩返しできれば一番綺麗な形かなとは思います。

Gura:シンプルに、楽しいパーティを作り続けたいなと思います。

謙蔵:ぜひ頑張ってください!ありがとうございました。

海里&Gura:ありがとうございました。

2人の音楽性に影響を与えた10曲

◎海里セレクト
JUSTICE / D•A•N•C•E
Zedd / Stache
Rehanna / Umbrella(feat. JAY Z)
宇多田ヒカル / time will tell 
サカナクション / 夜の踊り子
◎Guraセレクト
Somewhere I Belong :Linkin Park
Giorgio by Moroder :Daft Punk
TRACK UNO :KAYTRANADA
can't (Get U Outta My Mind):mall grab ※YouTubeのみ
TravelIing Without Moving:Jamiroquai
深川謙蔵 / the HELL オーナー, 編集長
1990年佐賀県生まれ。立命館アジア太平洋大学卒。卒業後は株式会社オプトに入社し、新卒採用担当として勤務。2019年3月から別府に移住し、「遊びの入り口」をコンセプトにしたレコードバーthe HELLを開業。コロナ禍では、別府の風景を販売するチャリティの企画や、複数の飲食店と協力して朝ごはんを提供するイベントを運営。2021年5月より、「街の人が、街の人に学ぶ『湯の町サロン』」を主宰。
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