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New Zealandがくれた宝もの 16 Rock Pool 1th day ロックプール1日目

 コーゾーのおすすめポイント、ワイタハヌイリバーのミルプール、通称ロックプールへ。
川幅はほんの3mほどだが水深は2~3mと深いので、水は澄んでいるが底の様子はまったくわからない。
両岸には木が生い茂り、森の中をゆったりと流れている感じだ。
 プールのちょうど真ん中あたりに一箇所だけ、流れの上に覆いかぶさるように岩が平たく突き出ていた。
そこに立って上のプールでも、下のプールでも、ウェーディングせずに狙えるという、コーゾーいわく「お立ち台プール」なのであった。
 流れは一見ゆるりとして単純そうだが、チョークストリームによくあるように、水中で複雑に渦巻いているようだった。
まず、お立ち台より下流のプールを探ってみることにした。
インジケーターから重りのニンフまでのリーダーを長くとり、タナを深くした。

 まず足元にキャストし、というよりはフライを落とし、すかさずメンディングして向こう岸の流れにのせる。
うまくその流れにのせて、フライを巻き込ませないと、手前の浅瀬を通り過ぎていってしまうのだ。
魚はいちばん深いところにいる。
 シンイチが流してみた。コーゾーの指示どうりに流すと、インジケーターにプルプルというアタリがあった。
あわせると、勢いで飛んできたフライが木にひっかかってしまった。
シンイチがフライを回収している間に、私もトライしてみた。
何投目かのキャストのあと、深みのスジでインジケーターがゆっくりと沈んだ。
半信半疑でロッドをたて、あわせるとニブイ重さが伝わってきた。
「ストライク!」コーゾーが叫んだ。
魚は上流に走った。
「手前のエグレに入られるととれませんから、下流のプールの浅瀬に魚を誘導してください。」コーゾーの指示がとんだ。
誘導ったって、ロッドをささえるだけで精一杯なのだ。
魚が高くジャンプした。
真っ赤な体をした6ポンド60cmはあるかと思われる、厳しい顔をしたオスのレインボウが、お立ち台に立つ私のすぐ目の前を、スローモーションのように通りすぎていった。
その瞬間、ロッドが軽くなった。
私はヘタヘタとその場にしゃがみこんだ。
「残念ーっ!」コーゾーの声が響いた。
シンイチもカメラを構えたまま、マヌケなことにバラしてしまった直後にシャッターをきってしまった。

 こんなに小さな流れに、まさか本当にあんなにデカイやつがいるとは。
実際に目のあたりにするまでは、私はとても信じられなかった。
「まだ、メスがいるかもしれません。」コーゾーが言った。
半分気の抜けた状態で、もう一度キャストしてみた。
何投かして、フライがいい流れのスジにのったところで、またもや鈍いインジケーターの引き込みがあった。
あわせる。
魚がジャンプした。
なんと、メスのレインボウだ。
さっきのオスより小ぶりだが、コーゾーの言った通りだった。
今度はとれるか、、、と手前に寄せたところでまた、ロッドがふっと軽くなってしまった。

 ウィンザーロッジに帰る道すがら、トボトボ歩きながら私はボンヤリと思った。
「もうきっと、ニュージーランドでは釣れないかもしれない。」
でも、キャッチこそできなかったけれど、あれほど足の震える体験をすることができて、それだけでよかったではないか。
明日はもう、ニュージーランドで釣りができる最終日。
「これで、打ち止めかな。」そんなことを考えていると、コーゾーが言った。
「まだ、諦めるのは早いですよ。明日もう1日あるんでしたら、ぜひもう一度トライしてみてください。チャンスは最後に必ず巡って来ますよ。」 
ワイタハヌイの河口近くは、強い西風が吹いていた。
「タウポから風が吹くとワイタハヌイに魚が上がる、って地元の人は言うんですけどね。」
コーゾーがポツリと言った。

 コーゾーが強く勧めてくれるので、最終日もワイタハヌイにチャレンジすることにした。
ロッジに帰ってから、シンイチと2人で明日の対策を考えた。
なぜ、いつもストライクしても最後にバラしてしまうのか?
レイクタウポのボート釣りでは、魚が何度ジャンプしてもバレなかったのに、川ではフックがはずれてしまうのはなぜか?
2人で出した結論はこうだ。
 まず、フックのゲイプがワイドでなかったこと。
大きな魚のぶ厚い唇を貫通させるには、ワイドゲイプでなければ不利だ。
そして、強いフッキング、アワセはもちろんのこと、フッキングした後のロッドのホールドの問題だ。
私は身長が男性に比べ低い分、高く頭上にロッドをキープして、フックのアイの部分を、常に上に向けておかなくてはならない。
ホールドの位置が低いとフックは寝てしまい、ハズレやすくなってしまうのだ。
 そういえば、トンガリロで会ったワイルドなお兄さんも、ストライクした時はロッドを高く上げていたっけ。
考えられることは、すべてやって明日に臨もう。

17. Rock Pool 2nd dayへつづく

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