見出し画像

【こころ #44】支援の輪に入れて「日常」が戻ってきた


Lunaさん


 自分を支えてくれる存在がいた。そう気づき、社会と繋がれると、心が楽になることがある。生きづらい子育てを応援するピアサポーターとして、リアルやオンラインで当事者会を主催するLunaさんは、まさにそんな経験をした。4度の精神科入院を経験したLunaさんは医師や自身でも予測できない躁うつの波や我が子の育児に悩んだが、人との繋がりで希望を見出すことができたのだ。


 Lunaさんが初めて心療内科にかかったのは、大学3年生の秋。心が傷つく出来事は、それ以前にもたくさんあったが、地域の子ども会で行ったキャンプで心がより不安定に。総責任者であったLunaさんは指導員と子どもたちの親との間で板挟みとなり、心が重くなった。


 加えて同時期、高校の頃に好きだった先輩が自死。かけこんだ心療内科で、「うつ」と診断された。病名から自分の状態を理解したLunaさんは3ヶ月ほど休学し、カウンセリング受診。


 自分の心と向き合い始めたが、心の病の原因が身内との関係にあったことに気づき、両親と一緒に暮らせないと強く思うように。親の足音を聞くとパニックを起こすようになった。

 そこで主治医に頼み込み、精神科病院へ入院。環境に適応できず、1ヶ月ほどで退院するも親とはやはり暮らせず。そこで、彼氏と半同棲をし、なんとか大学を卒業。卒業後は、ひとり暮らしをしながら大学院に通い、臨床心理士を目指した。


 だが、貧血で3度倒れたり、OD(医薬品の過剰摂取)をしたりするなど、私生活は平穏とは言えず。半年ほど経つと、授業について行けなくなり、大学院を中退した。


 双極性障害であると判明したのは、25歳の頃だ。きっかけは、地元で行う演劇の脚本を手掛けたこと。彼氏と喧嘩を繰り返す中で、自分の心の状態に疑問を持つようになった。


 「こんなに心が傷ついているのに体が傷ついていないのはおかしいみたいな思考になってしまって…」


 自傷行為も行うほど、心身はボロボロ。だが、公演が終わるまでは入院しないと決めていた。


 公演の翌日、Lunaさんは主治医からの呼び出しに応じて病院へ。すると、その場で拘束され、閉鎖病棟に入院。双極性障害と診断された。


 「入院生活の中で唯一覚えているのは、年の近い子がピアノを弾いている時に傍で踊っていたこと。昔バレエをやっていたので、音色が動きに合うなと思って」


 約一ヶ月後、退院したルナさんは結婚し、他県へ。紹介状を持ち、新たな精神科に通院し始めたが、初めは薬の効果をなかなか感じられず。ようやく自分に合う薬と出会え、ずっと振り回されていたジェットコースターな心から脱することができた時には、躁うつの波に悩まされてから10年以上経っていた。


 そんなLunaさん、現在1児の母。息子さんにはADHDとLD(学習障害)の特性がある。


 「夫とは別居して8年。息子は、双極性障害と強迫性障害も持っています。」


 別居後、最初の1年間は自身の母と同居していたが、認知症になりかけていた母と息子さんは激しく喧嘩。一緒に暮らすことが難しかったため、同居は解消。のちに母はグループホームへ入所した。


 持病や我が子の特性と付き合いながら、仕事や家事をこなすのは至難の業。ところが、息子さんはコンビニに行った程度でも、着替えてシャワーを浴びないと落ち着けない潔癖症。他人を家に入れることができなかった。
だが、息子さんが投薬治療を開始したことで、状況は変化。潔癖症が落ち着き始めたため、ようやくLunaさんは、ホームヘルパーの申請書を提出する。そこから約半年後の2024年3月、ついにヘルパーを呼べるようになったのだ。


週1回、ヘルパーに頼れるようになったことで、荒れ果てていた自宅は激変。

「訪問看護も利用できるようになりました。ようやく支援に繋がれたんです」

 また、息子さんが通うフリースペースで月1回行われる、児童発達支援士の親子面談にも救われている。


 「2人で話していても道が開けない時、間に入ってくれる。家族それぞれの個性を理解してくれた上で、全体を客観的に見てくださる。そういう存在って、大事なんだなと実感しています」


 私は、たまたまそういう存在と出会えた。けれど、そうした出会いを得られる人はまだまだ少ないのが現状。家族それぞれの想いを聞き、チーム一丸となって、ひとつの家族を支援する存在が現れてほしい。それが、親子で必死に生きようともがいてきたLunaさんの願いだ。


 なお、Lunaさんは精神疾患や発達障害を持ちながら子育てをしている人のために、行政主導で専門家も参加する「当事者会」が全国に広まってほしいとも思っている。


 「ひとりで苦しんでいるのは自分だけじゃないと知れることは、すごく大事。当事者会と繋がったことで私も世界が開け、社会的な繋がりが持てたんです」


 私がやらなきゃ。その一心で、踏ん張ってきたLunaさんは支援の輪に入れたことで救われた。Lunaさん親子の奮闘は、SOSを上げることが難しい命の支え方を考えるきっかけを授ける。




⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「ミートアップ」の実施や、継続して共に考える「コミュニティ」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。


Inclusive Hub とは

▷  公式ライン
▷  X (Twitter)
▷  Inclusive Hub


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?