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【けつえき #2】脳卒中から気付く、ただ話すだけの重要性


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甲 守弘さん


 43歳の8月15日。甲(かぶと)さんは、暑い夏にひとりで散歩に出た。

 「急に右腕がだらーんとして動かなくなり、歩きづらいなと思ったら、右足も言うことを聞かなくなった」

 明らかにおかしいと感じた通行人が呼んでくれた救急車に乗った先の病院では、激痛もなく、何か手術が始まるわけでもない。「帰ろうかと思ったら、脳内出血していると診断されて、えっ?という感じだった」

 出血したのは、脳の中のネットワークの核をなす要所とも言われる『視床』の左側。故に、甲さんの右半身が麻痺した。左側の出血の場合、言語機能障害を伴うこともあるとされる。


 そこから長期入院が始まった。

 出血量が少なかったため、手術の必要もなく、痛みもない。しかし、院内では歩行器を使いながら「まっすぐ歩けない」。

 体だけではなく、頭もだ。家族の顔はわかっても名前を思い出せない。他の患者に話しかけられても言葉が出てこずに「あ、、、あ、、、ごめんなさい」を繰り返した。

 リハビリで小学生向けのプリントをやれば知っているはずの内容なのに「全然できない」。自分のスマホを見てもどこをどう触ればいいのか「思い出せない」。ノートパソコンも使い方がわからず、それまでサッと打っていた「10文字を打つのに1時間もかかった」

 さらに、リハビリを終えて自分の病室に戻ろうとすれば「部屋の番号を覚えられない」。奥さんが目印にクマのぬいぐるみを入り口に置いてくれても「何度やっても部屋に戻れなかった」

 日常のすべてにおいて「頭に情報があっても、その情報にアクセスできない状況」が起こった。


 当時、甲さんには高校受験を控える娘さんがいた。これから学費もかかる。そんな中、奥さんは、お医者さんから甲さんの今後について厳しい話も聞かされていただろうが、「自分の前では、大丈夫やって!」と接してくれた。

 そんな家族のことを思い、言われたリハビリを毎日無我夢中でやり続けた。それでも「毎日進化しないし、投げられた3つの言葉も復唱できない」日々が続く。

 これから「仕事や社会に戻れるのか?という不安がつきまとう」中で、甲さんの救いになったのは、「セラピストでも何でもない一人のおじさん」だった。社会との結びつきが切れていく中で、「病院の中であっても、気さくに話ができる関係性が本当にありがたかった」


 実は、甲さんが経験した脳卒中の後遺障害は、その人ぞれぞれで大きく違う。例え同じ病名であっても「当事者同士でもわからない悩みも多いし、”あんたはそうかもしれないけど”と理解し合えない」といったシーンも甲さんは見てきた。結果として、実は話を聞いてほしい人でも、結局卑屈になって自ら話をする機会を失ってしまう。

 その後、無事リハビリの成果が実って退院した甲さんは、当時を振り返って、誰にでも気軽に「泣いていいよ的に話しかけてあげる機会があればいい」と話す。


 そんな当事者が抱える多様な悩みへの対処について、甲さんがヒントになるかもしれないと挙げてくれたのが「脳卒中フェスティバル(脳フェス)」だ。ご自身も脳卒中患者でありながら理学療法士免許を取得し、同じ脳卒中患者のリハビリをサポートする立場になった男性が立ち上げたイベントで、「健常者と脳卒中当事者が一緒に喜び、楽しめる場」を掲げている。

 多様な障害を無理に「細かく理解し合うよりも、(それを超えて)楽しもうぜ!の方が集まりやすいでしょ」と話す甲さんも、ボランティアとして脳フェスに参加した。


 「例え全部は理解してあげられなくても、経験している人が”そうやんな”と声をかけてあげるだけでいいんじゃないか」「100人いたら10人でも話せてホッとできるなら正解ではないか」

 そう話す甲さんの言葉は、脳卒中の後遺障害に限ったものではないと感じる。どんな障害にも必ず当事者会は存在するが、どんな障害にも「○○障害と一言で言っても多様で」という枕詞もつく。

 であれば、集まって同じ障害の中で細かく差異を確認し合うよりも、とにかく集まりやすく話しやすい環境から設けることこそ、本当に当事者が救われる場所なのだろう。

 甲さんの経験は、それを教えてくれている。




ここまで読んでくださった皆さまに‥


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