見出し画像

ピンチをアドリブで乗り越える技 42/100(即興術10) -他人ごと

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


他人ごと、は話しやすい

前回は、実際に私が即興の公演で、ピンチに陥った時のお話をしました。

自分の中には答えがないとき、それはゼロからゼロを生むようなものです。

37/100では、空間に傾聴することにより、会話のヒントが見つかるかも?と提案しました。

外に目を向けて、目の傾聴をすることによって、ゼロ以上の何かをそこに見つけることができれば、それをヒントに展開していくことが出来るかもしれません。

ピンチに陥った時、

しーん

と、沈黙の時間が流れてしまい。何か話さなくてはいけない、という状況に陥ることもあるでしょう。

今日は、何かを話さなくてはいけない状況にある時、話しやすい内容と、そうでない内容があるという実体験をご紹介します。

前回からの続きで、一人語りの第一声は

「分かった…話すよ。聞きたいんだろ?レッドについて。俺たちがあいつをどうしたか。」

というセリフから始めました。

実はこの時点で、私としては勝算がありました。

演劇の中で、独白が出てくる場合、シェークスピアの『ハムレット』に代表されるように、自分の心情や悩みを、観客と共に共有することが多いです。
しかしこれを即興で行うのは、ハードルが高いです。

「ああ、自分は一体どうすれば良いのだろうか、あいつのことは腹わたが煮えたぎるほど憎んでいる。しかし、どうだろうか、いざこの手であいつの命を奪おうという時、私は自分の良心に、いや、自分自身の心の奥深くにひそむ、彼に対する友としての愛情が、その手を邪魔することはない、なんてこがあり得るだろうか?彼と重ねてきた時間、最良の友と過ごす、この上なく幸福で、他の何にも変え難い一瞬一瞬を、私は胸の内の最も深いところに突き落とし、その暗闇に紛れさせ、すっかり忘れることができていると思っていた…」

みたいなことを、その場で考えながら話すのは難しいです。

今こうやって、キーボードに打ち込む時ですら、上のような文章は時間を要します。

では、即興の一人語りではどうするか、自分ごとではなく、他人事にします。

情景を頭に浮かべ、その描写をするのです。

「彼のこめかみに拳銃をこう押し当てた時、私はある日のことを思い出していた…それは良く晴れた公園の昼下がり、今となってはもうドラえもんの作品の中でしか目にしないような、典型的な公園だった。積み重ねられたドラム缶、ブランコで空高く飛んで行こうとする子供たち、砂場にできたお城、あっちの鉄棒では一生懸命に逆上がりを練習している女の子がいる。僕は大きな時計の脇にある、4階建てのマンションのように大きな木の幹に隠れてあいつを見ていた。あいつは僕の名前を大声で叫びながら、今にも泣きそうな顔つきだった。『ねー、どこいっちゃったのー!ねええ!』周りの大人が心配するほどの大声で、何度も何度も僕の名を呼ぶ。」

はい、こっちの方が書きやすいです。

35/100でご紹介した、ワード・アソシエーションのように、一つの事柄から関連した次の事柄を思い浮かべています。
公園
ドラえもん
ドラム缶
ブランコ
砂場
鉄棒
逆上がり
練習
時間
時計
高い
大きい

木かげ
かくれんぼ

みたいなことを、していたわけです。

それでも、ワード・アソシエーションで次の単語が出てもなくて、「nothing」というのと同じように、どうしても詰まる瞬間は、もちろん起きます。

そんな時は、『セリフ』を使って、時間を稼いだり、「間」をとる為の技法を用いたりしてました。

日常でも、体験談とか、噂話の方が話しやすくないですか?

それに比べて、自分の考えや気持ちというのは、話しにくいものです。話しにくいというか、言葉が出てきにくいですよね。

自分ごとよりも、他人ごと、

頭の隅に留めておいていただけると、いつかお役に立つかもしれません。


ご参加お待ちしてます!

連載50回を記念して、オンラインのQ&Aを開催してみようと思います。
わたしの文章力の乏しさから、上手くご説明できていない部分も、多々あるかと存じますので、この機会に何なりとお尋ね下さい。

また、この連載は「出し渋っていてもしょうがない!」と思い、シェアコミュニティーの意識で、無料公開しておりますが、Q&Aには3000円の参加費を頂戴したく存じます。

今後の展開へ向けての投げ銭と思い、ご支援を賜われますれば幸いです。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?