ピンチをアドリブで乗り越える技 37/100(即興術05) -5Steps 1/4
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
5ステップス 〜その壱〜
今日は、アドリブ力を養うにあたって、外すことの出来ない、基本についてお話し致します。
これまでアドリブ≒インプロと位置付け、インプロ(即興)についてのお話をして参りました。
ピンチに陥った時、そのピンチにも実に様々なケースがあると思われます。インプロの基礎を理解しておくことで、今がどの部分なのか、そしてどこへ向かうべきなのか?
そもそも、それはピンチなのか?の判断がつくようになるかと思います。
5ステップスという、即興で物語を作り上げるにあたり、押さえておかなくてはいけない、5つの手順です。
Environment
Relationship
Conflict
Escalation
Resolution
です。
まずは、原文のまま英語で表記しました。
これらを、どう解釈し、読み取るかが重要な部分です。
まずはEnvironment
直訳すれば「環境」ですが、「空間」と訳すべきでしょう。
あなたが今どのような空間にいるのか、屋内や屋外、公園やオフィスという広義なものではなく、出来るだけ具体的に、リビングならば窓はどこにあり、テレビやソファがどこで、床や壁、天井の様子まで詳細に定めることが出来ていると、それらに傾聴することにより、次へのヒントを導き出せます。(17/100など参照)
実際の舞台では、セットは無く、まっさらな空間に椅子がいくつかあるだけですので、無の空間に、それらを見い出さなくてはいけません。(22/100参照)
次の言葉に詰まった時、アイディアが浮かばない時、あなたの置かれている「空間」に目を向けると、答えは自ずと出て来るものです。
「まあ、一緒にテレビでも見ようよ」
こんなセリフは、テレビがどこにあるか、把握出来ていないと、なかなか出てきません。
日々の生活においては、相手の存在にばかり気を取られるのではなく、しっかりと空間を捉えることが重要であると、言い換えることができると思います。
例えば、社長室でピンチに陥り言葉に詰まった時、
「社長、あの額は芹沢銈介ではありませんか?」
(完全に私的な好みです…)
の一言が、状況を一変させるかも知れません。
「君、よく分かったね」
「いえいえ、実は今回のご提案もまさに『暮らしの中』にございまして…云々」
というのは完全に妄想ですが、空間を把握することは、けっこう忘れがちです。
インプロ初心者の場合、2人で何かしら話しているけど、中身がない。何も見えてこないし、本人たちもどこへ行ったらいいか分からない、ということがよく起こります。
これは「空間」を作り上げられていないからです。
次に重要なのはRelationship
「関係性」ですね。
登場人物の関係性、さらには
「どこから来て、どこへ行くのか」
というのも重要です。
これも初心者が陥りやすいミスで、どういう関係で、自分たちは誰なのかを明言しないまま、何分間も取り留めのない会話を続けたりしがちです。
「おはよう」
「おはよう」
「今日の予定は?」
「うーん。特にない」
「じゃあどっか行く?」
「うん、いいよ」
「どこにしようか?」
どこへも行ってないですねー。
いまキッチンにいるのか、寝室なのか、玄関先なのか?
夫婦なのか、同僚なのか、受刑者たちなのか?
何も分からないし、このまま続けていてもどこへも行きません。
玄関先ならば、
「おはよう」
「おはよう」
「今日の予定は?」
「うーん、特にない。出かけるの?」
「ゴミ出し。じゃあどっか行く?」
「え、夜勤帰りで、、、」
「ずっとすれ違いじゃん。最後にデートしたのいつ?」
「結婚生活なんてそんなもんだろ」
みたいになるわけですね。
受刑者たちなら、
「おはよう」
「おはよう22544」
「今日の予定は?24601」
「うーん、特にない」
「じゃあどっか行く?」
「うん、いいよ」
ほら、すでにちょっと面白いし、可能性が広がるじゃないですか?!
しかし、ここで注意が必要なのは、同一人物にならない、ということです。
「関係性」が大事なのであって、「同類ふたり」で物語を紡ぐのは難しいです。
なぜかというと、そこにはconflictが生じにくいからです。
ピンチ禍においても、相手がどこから来たのか、自分との関係性は何なのかに目を向けることで、突破口となるケースもあるでしょう。
昇進したばかりの相手で、もし自分が初めての商談相手ならば、それなりの進め方がある筈です。
その「関係性」を知らずにいるのでは、進むべき方向が、見えてきません。
明日はお休みとします。続きは来週で!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?