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『快楽の果ては退屈』

『Notes of a Dirty Old Man』 
 Charles Bukowski

カネ持ちのクソ野郎が泣きながら水蒸気風呂に入っている
そいつはバッハのすべてのレコードを持っているが、
何も満たされていない
そいつの家の窓はステンドグラスで、
尼がオシッコしている絵を飾っているが、
何も満たされていない
そいつは一度満月の夜のネヴァダ砂漠で、
タクシードライバーが殺されるのを眺めていたが、
ータクシードライバーは30分で腐ったー
何も満たされていない
そいつは犬を十字架に貼りつけて、
1ドルの安物葉巻で犬の両目を焼きつけても、
何も満たされていない
そいつはスベスベキラキラした脚の
若い女の子を多く犯してきたが、
もちろん何も満たさていないし
何も感じなくなった

そいつは水蒸気風呂に入っているあいだ、
外国産のシダを燃やし、
そばにあった酒を執事に浴びせかける

陰湿でベタベタしたカネ持ちのクソ野郎、
落ちた老いぼれジジイ、
バラの花園に唾を吐く
そいつはテーブルに突っ伏して泣きわめき、
オレはそいつの1ドル葉巻を吸っていた
「助けてくれ、オー、ジーザス、助けてくれー!」そいつは叫んだ
時間だった、「ちょっと待ってろ」オレはそいつに言った

オレはロッカーに行き、ベルトを取った
テーブルにかがんで、
ーブヨブヨした白い塊、気分を害するために存在する毛で覆われたケツー
ベルトを打ち据えた
ベルトのバックルの部分で思い切り何度も何度もそいつを打った
バシッ!バシッ!
バシッ!バシッ!バシッ!
そいつはテーブルから崩れ落ち、
海を求めるカニのように這いつくばった
そいつはヨチヨチ地面を這い、
オレはバックルを振りかざし後を追った
バシッ!
   バシッ!
      バシッ!
そいつが2,3度叫び声を上げるなか、
オレはそいつのほうへかがみこみ、
1ドル葉巻をそいつに押しつけた
そいつはべったり倒れ込み、笑っていた

オレはキッチンへ向かった
弁護士が座ってコーヒを飲んでいた
「終わったか?」
「ああ」
弁護士は10ドル札5枚を取り出し、
テーブル越しに投げつけた
オレはコーヒーを注いで座った
手に持っていた葉巻をキッチンのシンクに投げ捨てた
「まいったぜ」オレは言った、「ホント面倒くせえ」
「そうだな」弁護士は言った「前のやつは1ヶ月しか続かなかった」
オレたちは座ってコーヒを啜っていた
いいキッチンだった
「また水曜日に来てくれ」弁護士は言った
「たまには自分でやったらどうだ?」オレは言った
「俺が?俺は繊細なんだよ!」
オレたちは苦笑し、2つの角砂糖をコーヒーの中に落とした

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