見出し画像

セットアップとスーツは似て非なる件

4月に3週連続でオヤジファッションネタ、しかも『禁断の頭髪ネタ』をお届けしてきましたが、今回はオーソドックスにオヤジファッションのお話しを。

いや、今回についてはミドル&シニアを想定した『オヤジ』だけでなく、20歳代で社会人デビューした男性全体にもお届けしたいお話しです!

春になると、このお節介オヤジがもう毎年決まってイライラし、指摘したくてウズウズするのが、『バッテン族』と『前ボタン全留め族』の2つの残念な人たち。
そして今回は、その2つに加えて昨今急激に増え始めている、『ビジカジ勘違い族』について注意喚起したいと思います。

ビジカジ自体は、いいんですよ。
1979年、大平首相から羽田首相に引き継がれた『省エネルック』はさておき、バブル崩壊後の『ノータイ出勤』に端を発し、2000年頃からは『オフィスカジュアル』・『ビジネスカジュアル』として定着。

左端が大平首相、右端が羽田首相。真ん中は?

さらにはIT関係やクリエーター等の一部の職種で『ジャケット+パンツ+Tシャツ(或いは秋冬にはタートルシャツ)』という着こなしが流行し、現在では一般企業の内勤職や営業職でさえ、その組合せが広まりつつあります。

(拾い物イメージ画像)

もともとは、トラディショナルなビジネスウェア領域でも『ジャケパン』というジャンルは存在していました。
というよりも、トラッドファッションに於いては『紺ブレザー』は絶対的なフォーマルジャケットであって、それにダークグレーからライトグレーのスラックス、或いはチノーズやコットン系のパンツを合わせて『ジャケパン』というオフィススタイルが認められていたわけです。
紺ブレの下にはワイドカラーシャツにネクタイであったり、或いはBDシャツでノータイというスタイルも、普通に受け入れられています。
ことほど左様に、『ビジカジ』のルールは緩くなり、広い世代や業種で許容されるようになってきました。

ノータイでキメてるオヤジの例

では何を以て『ビジカジ勘違い族』と嘆いているのか?

先日、通勤電車の中で見掛けた30歳前後と見受けられる若者の着こなしに、なんとも言えない違和感を覚えたのです。

その彼は、大谷翔平ばりの甘く整ったルックスで髪型も爽やかで、背中には厚みの少ないレザーのビジネスリュック。
足元には磨かれた革靴。
一見して問題ないのに、何かが違う?

彼が着用していたのは、紺系のスーツに白いTシャツ、そして黒の革靴なのですが、そのスーツが一般的なビジネススーツなのです。
そして足元の革靴が、黒のストレートチップ。

恐らく彼は流行りの『Tシャツ+ジャケット』に憧れて、UNIQLOではなくセレクトショップでちょっと高級な白Tシャツを買い、手持ちの紺スーツに合わせてみたのでしょう。
ここで彼が選ぶべきは、『ビジネススーツ』ではなく『セットアップスーツ』でした。

『セットアップスーツ』については過去にも書いたことがありますが、『ビジネススーツ』と『セットアップスーツ』の一番大きな違いは、上下セットで販売されているか、上下別々で売られているか?
とはいえ、『セットアップスーツ』では共布で同じ色の上下も購入できますので、そうした時に『ビジネススーツ』と何が違うのかというと…
実はデザインというかシルエットが微妙に、いや全く異なります。

『ビジネススーツ』の場合、バブル期ほど巨大ではないにせよ多少なりとも『肩パッド』が入れられ、カッチリした印象を重視します。またスーツ全体のシルエットを維持する為に、『芯地』や『裏地(春夏者は半裏地、秋冬物は総裏地)』も不可欠です。
一方で『セットアップスーツ』の場合は、肩パッド・芯地・裏地ともに最小限か、軽量で柔らかい素材だったり、或いは全く施されていないこともあります。
この手のパッドや芯地がないジャケットを『アンコン(アンコンジャケット)』と呼んでいますが、『アンコン』とは『アンコンストラクテッド(unconstracted)』の略であり、非構築的、つまり建築でいうならば柱や梁がない状況とも言えます。

加えて、一般的なビジネススーツがウールのみ、もしくはウール+ポリエステル混紡で生地もしっかりしているのに対して、セットアップの場合はコットンやリネン、或いはテンセルや化繊など、様々な素材が用いられます。
ビジネススーツのカッチリ感に較べて、ドレープ感や軽量感、発色や光沢を楽しめるものもあります。

あとデザイン的に見ても、セットアップの方がビジネススーツに較べてジャケットはやや短めであったり、パンツもやや短かったり細かったり逆に太かったりとスタイリッシュにデザインされています。
ジャケットのポケットも、ブレザーで見られる貼り付けパッチドタイプのものも多くなります。

パッチ(パッチド)ポケット

なので、ジャケットの下にBDシャツ等ではなくTシャツを着用する場合には、ビジネススーツではどうしてもアンバランスさが拭えず、セットアップスーツを合わせるべきなのです。

加えて足元に関しても…
ビジネススーツであれば、黒無地のストレートチップは絶対であり万能であるのですが、セットアップに合わせるにはカッチリ過ぎます。
ここは同じ黒無地の革靴であってもスリッポン(slip on=かかとを滑らせて履く)と呼ばれる紐無し靴、即ちローファーであったりビットモカシン等の方がしっくりきます。もっと言えば、黒無地にこだわらず茶や紺のスエード等、ビジネススーツではちょっと遠慮していた革靴(逆に休日にジーンズに合わせても履ける革靴)の方がマッチするはずです。

ビットローファー(ビットモカシン)

無理にカジュアルっぽい革靴を合わせずとも、シンプルな白か黒無地の大人スニーカー(できればローテクタイプ)でもいいくらいです。

言わずと知れた NIKE Airforce 1

というわけで、中にビジネスシャツではなくTシャツやタートルネックを着用したい時のスーツは、カッチリしたビジネススーツではなく、よりスタイリッシュなセットアップスーツを着用するべき!ということは絶対に覚えておいてください!
手持ちのビジネススーツを羽織って、インナーだけTシャツやタートルにしても、それはセットアップとは言えません…

最後に、世間の認知も高まり市民権を得てきたともいえるセットアップですが、下記だけは頭に入れておいてくださいね。

●セットアップスーツはキレイめな印象ですが、フォーマルではありません。(それなりの場所で失礼にならないように…)
●ビジネススーツはカッチリしているので誠実な印象ですが、カジュアルではありません。(お遊びの楽しい場をシラケさせないように…)

仲間内のイベントに呼ばれてビジネススーツでは野暮な時もありますし、逆に誠実さが求められるシチュエーションでセットアップで失敗する事例もありますので…

通販広告より、50代モデルの事例

最後までお読みいただき、ありがとうございます。『♡スキ』いただければ励みになります!
フォローやコメントも、さらに嬉しいです!
2023年以降は週ごとにテーマを決めて概ね土曜日に書き綴っています。ご興味あるカテゴリーのバックナンバーも是非ご一読ください。下線部をタップいただければ、各マガジンに飛びます!
キャリア・定年・週末起業の部屋
音楽・ギター・楽器の部屋
オヤジのファッションウォッチングの部屋
グルメとお酒のお話しの部屋
ええ歳こいてクルマ好きの部屋
徒然なるままにノンジャンルの部屋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?