今でも赤ひげ先生はいるのか?
赤ひげ先生。山本周五郎作「赤ひげ診療譚」に出てくる医師のあだ名。貧しい人からはお金を取らず、他の医師が嫌がる患者さんも快く診てくれるという患者側に立った先生。
私はこの本も映画化された作品も見たことがないため、詳細はわからないけれど、「赤ひげ先生」は聞いたことがあるフレーズ。理想の医師の代名詞で使われている。
今の日本で、困っている人に無償で医療を提供してくれる医師がいるのだろうか。医療費が無料となる公的制度は赤ひげ先生とは違う。医師の配慮でお金を取らなかったという話は、聞いたことがない。
かかりつけのクリニックであれば、保険証忘れは次回でも良いとなるくらいはありそうだけれど。
日本では赤ひげ先生に会ったことはないけれど、海外ではある。
リアル赤ひげ先生
無料の応急処置〜留学編〜
カナダ留学中、銀歯が取れた。
神経まで治療したことのある歯で、全体を覆うタイプの銀歯だった。大きな穴が空いてしまい、海外での歯科治療は高いと覚悟しつつ、現地の歯医者へ行った。
1件目では、治療に約2000カナダドルかかると言われた。おおよそ20万円、、、加入していた海外旅行保険は歯科治療対象外だった。さすがに払うのは厳しい。帰国後にちゃんと治療するから、応急処置で穴だけ埋めてくれないかと頼んだけれど無理だった。
抜歯なら700カナダドルだったけれど、抜くのは嫌だったし、700カナダドルでも十分に高額だ。
次に友人から教えてもらった歯医者へ行った。
おじいちゃん先生というほどではないけれど、ベテランの先生だった。治療した場合の費用感は同じ。留学生で収入がなくて払えない、応急処置をして欲しいと頼んだ。
そうしたら、応急処置をしてくれることになった!これだけでもかなり感謝だったけれど、なんと最後にお金はいらないと言われた。
ビックリした!ちゃんと聞き取れていないのかと思った。日本ではあり得ない。
他の人には言わないでねと言われたけれど、もう時効だろう。
無料の治療〜ワーキングホリデー編〜
そしてまた、ワーキングホリデーで同じ町に戻ったときのこと。
再び歯の悲劇に見舞われた。奥歯が欠けた。詰め物はない歯だったけれど、固いものを噛んだら自分の歯が欠けた。
幸い痛みはなかったし、削ってプラスチックを詰めるだけで済みそうだった。ネットでそれくらいなら3万円くらいだと見たため、また赤ひげ先生のところへ行った。
前回のお礼をしなくてはと思い、日本から持参していたインスタント味噌汁をいくつかプレゼントに持っていった。
もちろん、このときはちゃんと治療費を払うつもりだった。働いていたし、お金ないアピールもしていない。苦笑。
治療は予想通り、削って詰めて終わった。詰め物の色が私の歯より白く、日本に帰ったらまたちゃんと見てもらってと言われた。
とりあえず良かったーと思って会計に向かったら、またもやお金はいらないと言われた!
このときは働いていたため、日本で言う健康保険証を持っていた。カナダは医療費が無料、クリニックや病院は無料で診てもらえる。が、歯医者は対象外。現地の人たちは自分で歯科の保険に入るよう。
インスタント味噌汁の物々交換的な効果か、働いてはいたけれど保険もないし遠い国から来て大変だと思われたのか。
いずれにしても、どれだけ素晴らしいのですか!!!と思った。
私にこの先生を紹介してくれた友人(日本人)も、無料にしてもらったのかはわからない。友人にお礼をしたとき、無料だったことは言わなかった。向こうも言っていないだけかもしれない。
でもカナダは移民も多いし、難民も受け入れている。日本から来た私にこんなに良くしてくれたということは、きっと日常的にもあるのだろう。
まさに赤ひげ先生だ。
日本の健康保険の素晴らしさと、その後
帰国間際だったから帰るまで我慢したけれど、上に書いた以外でも歯が欠けて痛い思いをした。親知らずが虫歯になったのだ、、、激痛だった。
抜くのに700カナダドル(7万くらい)かかるのを知っていたし、渡航前に抜かなかったことを心底後悔しながら、痛みに耐えた。
帰国の翌日に歯医者に駆け込んだ。
確か抜歯したときの治療費は、薬を入れても3000円もいかなかったはず。
「神経まで達している、よく我慢したね」と言われるほどだったけれど、7万円と3000円。我慢したかいがあったというものだ。
3割負担はあれど、病院のかかりやすさ含め、日本の健康保険、医療制度は素晴らしいと思う。
ちなみに、20万円を払えず応急処置をしてもらった、大きな穴の空いた歯。
帰国後に治療したけれど、半年放置した影響なのか、予後が悪かった。
4,5年なんとか持ったものの、最終的には抜歯となった。抜歯した箇所にブリッジを入れるのに、自費だったからだけれど、30万円を払った。
赤ひげ先生の話は置いておき、現地でどうにか20万払って治療するべきだったかもしれない、、、歯は再生しないし。痛い勉強代だった。苦笑
おまけ、日本で一番赤ひげ先生に近いと思った先生
ある年、自治体のサービスで風疹の抗体値検査、抗体が足りなければワクチン接種を無料で受けられた。検査を受けたところ足りなかったため、ワクチン接種も受ける予定だった。ところが、体調を崩して受けられず。
無料期間が終わった後、別の病院で受けた(有料)。
そのときに抗体値検査を受けたクリニックの先生が、事情を説明し、無料で受けられないかと行政の窓口に掛け合ってくれた(そうだ)。
私はそれを、自分でも同じく確認する電話をかけた際に、担当者の方から聞いた。
診察が終わった後も気にかけ、どうにかしようとしてくれたということだ。その先生の気持ちがとても嬉しく、心温まった。
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