キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.2.1


=2nd Act.Ver.1.2.1========================

「青月先生」
 職員室到着はHRのちょうど30分前だった。なぜか空衣君もいたため、声がけは空衣くんが一任した。
「おう、妃乃杜……って姉とセットかよ。どうした?昨日の面々プラス弟か」
「部室どちらにするか決まったので、その報告を」
 姉で部長の結可が引き継いだ。
「元技研部?」
「はい。今のところ満場一致です。なので、一度見学させてもらえないかと」
「ん……時間あるな。今のうち軽く案内しとくか。今日放課後職員会議だし。よし、行こう」
「お願いします」
 なぜか空衣君まで頭を下げた。あれ?入部決定?部員じゃないよね。
 そのあとで私たちは部室に案内された。私たちが入った入口を前とするなら後ろ側の入り口横の壁に部室の鍵が集約されているらしく、青月先生はそこから一枚のカードキーを取り出して職員室を出た。場所は職員室も位置する特別教室棟の3階、ほとんど職員室の真上だ。奥に軽音部の部室もある。さらにその上から朝練している吹奏楽部の音も漏れ聞こえてくる。
「教室からほぼ直結?」
「同じ階層だね」
 私のぼやきに結可が答えてくれた。
「そうだな。同じ3階だ。で、ここ」
 階段を渡り切って数歩で到着した。確かに、セキュリティモニタには技研部の文字がある。が、青月先生がカードを通すとFTCに切り替わった。
「おお。変わった」
「ああ、表示な。これ、所有権移動すんでも、初回にカードキー通さないと表示変わんない仕様なんだよな。多分システム的な反映がそっからなんだろ」
「と、いうことは?」
「今の瞬間からここが正式にFTCの部室ってことになった。名実ともにな」
 うわー。なんかすごいワクワクしてきた、と思ってみんなの顔を見ると、同じだったのだろう。笑顔がそこにあった。
「はーいこちらでーすよっと」
 青月先生を先頭に部室に足を踏み入れる。
「おわー。これが部室かぁ!」
 浬がはしゃぎ出す。
 まず入り口横も含めた四方の壁にパソコンが配置されている。集中力を上げるためなのかもしれない。真ん中には大きめの丸い円卓があって、集まれる形。これもそこそこ大きくて、この部室何畳あるんだ?って感じだった。しばらく使っていないから少し埃は溜まっている。放課後掃除は必要だろう。
「部室管理権限移譲前、まあ昨日か。そのタイミングで岸咲先生が各パソコンが置いてある机の引き出しに、IDとパスワード入れた紙入れといてくれてるから…あと25分あるか。よし、4人で全部起動してログインできるかだけ確認しよう。5分もかからんだろうし。ほい、電源入れてー」
 その号令で、各々適当な机に着く。たまたまあたしは窓際になった。
「エラーがあったらすぐ言えー」
「はい」
 号令かけながら円卓に備えられた椅子の一つに座る青月先生が携帯を取り出した。その青月先生の号令に結可が代表して答えるとみんなその後に続く。
「あ、なんかログインできないみたいです。一致しないって表示が」
 その結可が声を上げた。私の方は問題ないみたいに見える。
「お、ちょっと見せて」
「はい」
「……あー。よし、今ヘルプ来るからちょっと待ってて」
 と、言い切った瞬間。
「かーえー!どうしたのですか!」
 と、ものすごく勢いよく現れたのは岸咲先生だった。
「あら、みんないたか。失礼。どうしたんです?」
「ほらヘルプきた。これ、今妃乃杜……結可が使ってるのがアイパス一致しないって出る」
「んー。妃乃…結可さん一回紙見せてもらっていい?」
「はい」
 と言って結可が机に格納されていた紙を渡す。
「……あーごめん。一文字間違ってた。パスの、このeがrだ。ごめんごめん。ミスタイプー。そっちで入り直してみて」
 その後無事に通過したらしく問題解決したようだった。
「よし、んじゃあ、4台全部一応使用可能だな。ここのセットアップは放課後で。今は一旦解散しとこう。もうそろそろHRだし」
 青月先生の指示で一旦部室を出る私たち。
「部長は妃乃…結可でいいんだよな」
「はい」
「じゃあ、今日は鍵預けとく。昼休みとかも使っていいからな。下校時にカード返却しといて」
「わかりました」
「で、妃乃杜弟も入るの?FTC」
 と、青月先生が疑問符を投げる。それは当然だ。いることは自然だけど、別に正式入部って形じゃない。
「あ、いえ、体験入部状態です、先生」
 と、空衣君が返答すると、
「ああ。なるほど。まあ数合わせでもいいから入っちゃえば?そしたらもう1人で部活になるからさ。そうすると色々やりやすいし。俺も」
「そう、ですか。前向きに考えておきます」
「……生意気な。まあ、無理にとは言わんがな。じゃ」
 笑いながらそう言って、青月先生と岸咲先生が階段を降るのを合図に先生たちは職員室へ、私たちはそれぞれの教室に散っていく。
 なんか、いよいよ始まった感じがじわじわくる。

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基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw