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【イベントレポート】EDUCATION×CAREER TALK「教育現場で求められる力とは?~学校と社会の架け橋を目指して~」

6月6日に「教育現場で求められる力とは?~学校と社会の架け橋を目指して~」というイベントを実施しました。今回イベントレポートを書かせていただきます、九州大学の和田千夏と山口大学の岡丸あかりです。

コロナの影響もあり、オンラインでの開催となりましたが、当日は20名以上の多くの方に参加いただき、大盛況となりました。

5月中旬、私たちは今回のイベントのゲストスピーカーである遠藤忍さん(Teach For Japan 7期フェロー)の講演の動画とブログを拝見しました。そのお話や文章から遠藤さんが伝えたいこと、作りたい場の雰囲気がひしひしと伝わってきました。

なぜこんなに上手く場や空気を作り、想いを伝えられるのか、遠藤さんの教育現場での実践のお話をお聞きして、その中からヒントを見つけたいと思いました。自分たち含む教育に携わっている、これから携わろうとする人がこのイベントを通して子どもたちへ「伝える」勇気を持てたら、そんな教育の明日へつながる時間を作りたいと思い、今回のイベントをすることにしました。

今回登壇いただいた遠藤さんは、民間企業から中学校の教員にキャリアチェンジをされた方です。遠藤さんは「学校と社会を滑らかにする」を自身のミッションとして、子どもたちと向き合い、学びのデザインに挑戦し続けています。

イベントでは、「教育現場で求められる”伝える力”とは?」をテーマに自身の歩んできたキャリアや、実践、想いをお話しいただきました。そして、遠藤さんのお話を聞いた上で、「伝えられる」側、「伝える」側の視点に立ち、ディスカッションを行い、その中で「伝える」ということの本質に迫っていきました。

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遠藤さんのお話は「”伝える力”とはと言われても自分にも分かりません(笑)」と始まりました。

自身が学生の時に出場した英語インタラクティブ、福島の子どもたちとのキャンプなどを通して教育に関心をもち、教員免許をとった遠藤さん。そのまま教員になることを選ぶこともできたのに、そうしなかったのは「そのまま教員になっても”ビジネス”の世界について語れない」と思ったからだそうです。社会に出てからも会社のCSRを立ち上げたり、「青春基地」でプロボノ(※1)をしてPBL(※2)のサポートをしたりして教育に関わり続けていました。

そしてビジネスの世界で「それぞれの”できない”をそれぞれの”できる”で支えあう」ということが大切だと実感した遠藤さんは、それをもってTeach For Japanのフェローとして教育現場に入られました。

※1 社会人をしながら行うボランティア活動。
※2 Project-based-Learningの略。「問題解決型学習」

教員は「クリエイター」であり「ディレクター」であり「マネージャー」

遠藤さんは教員になって改めて、教員というのは「クリエイター」であり「ディレクター」であり「マネージャー」である、とんでもない仕事だと実感したそうです。そしてその中に教員の面白さを見出してpepperを使ったプログラミング授業をデザインし、地域の方とも連携を行いました。そして今も「ふるさとと仕事をつくる」というテーマで職場体験の代わりに畑を耕すプログラムを計画していらっしゃいます。

コロナによる休校前 最後の授業

遠藤さんは英語を担当されているのですが、一斉休校を受けて本来よりも早く最後の授業がやってきてしまいました。そこで遠藤さんは子どもたちに向けて語りかけます。思っていたよりも早くやってきた休みで何をするか。「『休みだヤッホイ』と遊んで過ごしてもかまわないが、自分が勉強することでこんな風に人の役に立つことがあるかもしれない。」と自分の経験を交えながら、話をされました。そして、授業時間は残り20分。遠藤さんが「もう時間ないけど、どうする?」と聞くと普段は真面目に授業を聞いていない生徒たちもみんなが「英語の授業やりましょう!」と言い、すごく集中して授業を受けたそうです。

遠藤さんが大切にしているもの

遠藤さんはこのようにキャリアを積んでいく中で自分の生き方について明確化されていきました。

vision: この生きづらい世の中で、勇気と気づきが、まだ見ぬ明日を切り拓く
mission: 学校と社会をなめらかにする
value: 「わたし」とは違う「あなた」と いっしょにうまいことやって 「だれか」に役立つことをする

遠藤さんが思う「伝える」とは?

自分の正義感や考えで生徒たちに何かを伝えたい、というのは強いエゴイズムだと仰いました。でも、それを自覚しながら自分の経験に「どういう意味があるのか」を問い続け、「なぜそれをするのか」ということを言葉で「僕はこう思うんだよね、こうだったんだよね、と自分を主語にした話し方で表現し、押し付けずに伝えようとし続けたことが今につながっている、と語られました。

グループディスカッション

私たちは、遠藤さんの話を聞いて、その後にどういったディスカッションをしようか2週間以上対話を重ねて考えました。このレポートを読む皆さんにも考えてほしいと思い、以下にそのまま問いを書かせていただきました。みなさんはどう考えますか?

ディスカッション①
和田:「一つ目のテーマは『先ほどの遠藤さんのスピーチの中で心に刺さった言葉』です。今回のイベントのキーワードとして【伝える】とありますが、皆さんが『伝えられる側』として率直に感じたことを共有してみてください。そして、なぜその部分が心に刺さったのか、理由も話してください。」

ディスカッション②
和田:「先ほどは『伝えられる側』として意見を出していただきました。『伝えられる側』に立ってみることで『伝える側』になったときに大切なことが見えてきたのではないでしょうか。ということで、次は皆さんに『伝える側』になってディスカッションをしていただきます。
テーマは『コロナウイルスの影響で学校生活最後の部活の大会がなくなってしまった中学、高校3年生にどんな言葉をかけるか』です。
最近SNS等で、部活動の大会がなくなったことに関して様々な議論が飛び交っています。それは大人からすれば正論かも知れないけれど、果たしてそれは子どもたちが望んでいる言葉なのだろうか、と疑問に思うことがあります。

大人目線の勝手な持論や慰めは子どもたちに響くのでしょうか。先生として、親として、ということではなく、学生時代の青春の大切さを知っているひとりの人間として、学生よりも少し人生経験がある人生の先輩として、何を、どう伝えるか、そしてなぜそういう言動になったのか意識したことを出してみましょう。遠藤さんのお話を聞いて、先ほどのディスカッションをして、つかんだ『伝えられる側』の目線を忘れないように考えてみてください。」

ディスカッションを通して
二つのディスカッションを通して、参加者の皆さんに「伝える」時に大切なこととして次のようにあげていただきました。(一部抜粋)

★「伝える」ことを意識するだけでなく、「伝えられる側」「受け取られ方」を考える
★抽象的な言葉ではなく具体的に伝えることで生徒のモチベーションに変える
★生徒の気持ちに継続的に寄り添う姿勢
★対話し続ける
★理解しようとする姿勢を持ち続ける

私たちはイベントを通して「伝える」というのは方法論ではなく、伝えられる側の気持ちは完全に理解することはできないのだということを心に留めた上で相手に共感しようとすることが大切なのだという結論にたどり着きました。だから何かを伝えたいときにもしかすると言葉を使わないことがベストの場合もあるかもしれない。でも言語化することから始めから逃げてもいけない。非常に難しいテーマでありながらも、私たちは教育に携わる人間として明日への勇気をつかみました。

参加者の感想

参加者の方から以下のように感想を頂きました。(一部抜粋)

「伝えることが発信する側のエゴイズムになっていないか?」このキーワードが私の今日の学びです。私は今まで誰かを慰めたり、アドバイスをする時に主語を自分にして話すことが共感に繋がると思っていましたが、一概にそうとは言えないのだと気づきました。今思えばそれらの原因は、どう声を掛けるのが正解なのかモヤモヤしてわからず言語化できないため、自論や経験に逃げていたことでした。ディスカッションをする中で、言語化するためには自分を理解すること、相手を理解しようという姿勢を持ち共感することが重要なのだと思いました。
エゴイズムかどうかを認識できているか、できていないか、というのは、すごくハッとしました。それを認識できるようにするためにも、共感力とか、言葉にすることの重要性は大きいと思いました。言葉にすることから逃げがちな私だったので、変わりたいと思いました。また、伝えるという点では、口で言うだけじゃなく、姿勢そのものの大切さを感じました
生徒に向き合うことを想定して、共感、自分の言葉で語る、個人に寄り添う、言葉以外の関わりについて学びました。今日から実践したいと思います。


イベント主催者 編集後記


イベントを企画する際には、「問い」をどこまで自分たちで多面的に深められているか、自分の中のモヤモヤした部分を言語化できているかが大切だと分かりました。

主催者側が「何となく」共通認識を持ってイベントを行うことはよくありますが、それでは参加者側に自分たちの伝えたい趣旨やニュアンスが正確に伝わりません。

事前にきちんと議論、言語化などの準備をしておくことの重要性を身に染みて感じました。また、遠藤さんのお話を聞いて、教員として様々な挑戦をして学校教育を変えていくことはもちろん大切ですが、その大前提として子どもたちと徹底的に向き合い、信頼感を築くことが大切で、その中で「伝える」ということは決して避けては通れないのだということに気づかされました。

自分たちも日頃から「自分はなぜこれをするのか」ということを突き詰め、いざというときにきちんと子どもたちと向き合い、自分の言葉で「伝え」られるような人でありたいと思います。

今回のイベントに参加、ご協力いただいた皆さま、レポートを読んでいただいた皆さま、ありがとうございました。Teach For Japanでは他にも様々なイベントをしています。HPやFacebookなどでも、イベント情報を発信していますので、ご都合が許せばぜひご参加ください!

また、様々な地域からTFJを介して集結したCAたちが開催する『EDUCATION × CAREER TALK』をテーマとしたイベントは今後も続々と行われる予定です!
特に今シーズンはオンラインということで比較的気軽に参加することができるのではないでしょうか。

皆さんのご参加を心よりお待ちしています!

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