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かゆみ学#5 ~どうしても掻くのがやめられない~

小中学生のころ、クラスメートに顔や腕をボリボリ掻いている、アトピーなどのお友達はいませんでしたか?

見ているだけで、こちらまでかゆくなりそうなくらい、エグいくらい掻いてますよね。

また、子供はそれを見て、本人が傷つくことを言ってしまうことも少なからずあり、問題になっています。

どうして、あんなに引っ掻いてしまうのでしょうか?


かゆみは、
掻きたいという衝動を生み、耐え難い苦痛を引き起こす感覚
と定義されるように、
引っ掻くことからは逃れられないように聞こえます。

アトピーなどの慢性掻痒疾患においては、イッチスクラッチサイクルという悪循環に陥ります。

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かゆみを感じ皮膚を引っ掻くことによって、皮膚が破壊され炎症が起きます。
炎症が起こることにより、皮膚にあるマスト細胞などが刺激され、かゆみ因子が放出されます。
それによりさらに皮膚を引っ掻くという悪循環に陥るわけですね。


ですので、理論的にはかゆくても引っ掻かなければ、イッチスクラッチサイクルが起こらず病態が悪化することもないわけですが、そういうわけにもいきません。

医者や親から「掻くな」と言われても、我慢できずに掻いてしまうのです。


なぜなら、引っ掻くと気持ちいいからなんですね。

正確には、"かゆみ"が不快であるあまりに、引っ掻いてかゆみを止めるとその不快さから解放されるから、なんです。

その時、脳内では報酬系という機能が働いています。

例えば、私たちはアルバイトをして給料、お金をもらいますよね。
たいていの方はお金をもらうと「嬉しい!」(=報酬)と思い、「もっと働こう!」などと思うわけです。

「嬉しい!」を感じた時、脳内でドパミンが放出され報酬系が働き、さらに働くとお金がもっともらえるだろうと報酬が予想されるので、「もっと働こう!」と思うのです。

ちなみに、このドパミンを大量に放出させるのが麻薬覚せい剤です。
報酬系が過剰に働いているため、彼らは中毒になってしまうのです。

かゆみでも同じです。脳内で引っ掻くことが報酬となってしまっているため、やめられないのです。

ですので、掻いてしまうのは仕方のないことなのです。

掻きすぎて骨まで削って顔に穴が開いてしまった患者もいます。


現在、アトピー性皮膚炎に有効な薬の多くは抗炎症薬です。

人によってはよく効きますが、そうではない患者もたくさんいます。

炎症を抑えるだけでかゆみ自身を直接抑えているわけではなく、炎症が治まるまでには時間がかかるのでなかなかイッチスクラッチサイクルから逃れられないからです。

ですのでやはり、かゆみを抑えることが一番大事であり、薬の開発が急がれている今日であります。


↓前回のかゆみ学

↓かゆみ学総論


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