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これまでの人生のあらすじ


人生のあらすじが書けない。

あらすじは漢字で書くと粗筋と書くのだろうか。荒筋と書くのだろうか。
どちらにせよ、おおまかな筋のことだろう。小説の背表紙にあるような、ドラマの冒頭に流れるような、わかりやすく短時間で見ることのできるような。


日記も広い意味でいえば、あらすじのような気もする。
一日24時間の中でいろんなことがあって、いろんなものを見て、いろんなことを考えて、感じて、コミュニケーションをとって。
でも、それらを事細かに文章にして、全てを伝える人はいないはずだ。
いくつかのトピックを取り上げて、印象的なことや思考に耽ったことを綴る。

一日を荒く、粗く、まとめる。
昨日のあらすじがあって、今日があり、今日もまたあらすじとなって、明日がくる。
そして、昨日のあらすじなんて忘れてしまう。そんなものだ。

ちなみに、僕の昨日のあらすじは、
『雨が降って、酒を飲んだ』
これはこれで詩的でかっこいいけど、なんとなく悲しい。早く忘れたい。


これまでの人生のあらすじに使えそうなワードを、頭の中でふわーっと考えてみた。

生まれた日?家族構成?幼少期?学生生活?部活動?受験?青春時代?初体験?アルバイト?たまに恋愛?就活?社会人?転職?一人暮らし?お酒?音楽?趣味?価値観?

ある程度のキーワードだと出てくるが、どれもパッとしない。
フォーカスを当てると、なにかしらの文章として形にはなりそうだが、面白くもない。
どこまで話すかとか、これはいらないかとか、取捨選択も難しい。
具体的に描写すると長くなるし、抽象的な表現でまとめると忘れてしまう。


もっと波乱万丈な出来事があればよかったのに。
5歳でショパンに衝撃を受けてピアノを始めるとか、12歳でお姉ちゃんに勝手に履歴書を送られてオーディションに合格するとか、16歳でタバコを吸って歌詞を書くとか。

人生を変えるような衝撃的な一文があって、方向づけられて、今を表す姿があって。
それがあらすじとして相応しい気がする。


今のところ、あらすじが書けない僕の人生は、今日も何事もなく進む。
音楽は流れ、時計の針は進み、空は暮れる。
一行で綴る一日は、それなりに美しくもなるし、寂しくもある。

明日明後日明々後日と、続く先の未来は何事もないあらすじかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
一日一日と歳をとって、どこかで何かが起きて、またあらすじを考えたときに浮かぶキーワードが一個一個増えていくのだろう。
これまでの人生のあらすじと、これからの人生の予定で、被るワードは少ないだろう。
積もり積もる今後のあらすじ候補に、ありったけの期待を寄せて。

ちなみに、今日のあらすじは、

『珈琲を二杯、文章をいっぱい』


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