見出し画像

周回遅れの青春を今夜歌にのせて


人生に遅すぎるなんてことはないって、どこかの誰かが言っていた。

こどもの頃にやっておけばよかったこととか、大人になったら恥ずかしくてできないこととか。
後悔はどんどんと募っていって、気付いたらその後悔の山が見上げるほどの高さになっていて。首が痛くなるくらい上を見上げた。
やり残したことを問われたら、漠然としすぎるのかありすぎるのか、「これ」といったものがどうも見当たらない。

大人になった感覚は全くないけれど、免許証を見せたらどう見ても大人だと言われる。
顔はこどもみたいだけど、毎年増えていく年齢がそれを証明する。
そうか、もう大人なんだ、と電車に揺られ吊革に掴まりスーツを着ながら、こども達がランドセルを背負っている姿を見、思う。
半ズボンを年中履いていた頃の自分が蘇る。

いつも、カッコよくありたかった。


運動神経が良ければモテるし、頭が良ければモテるし、身長が高ければモテるし、もちろん、顔が良ければモテるし。
そのモテる要素が、僕はどれも中途半端にあって(身長は低かったし、顔は赤ちゃんみたいだったが)、でもズバ抜けてあるものはなくて、いやあるにはあったか、と何周かグルグルとくだらない討論が繰り広げられる。
結果、あ、モテてなかったじゃんと、原点に返り、やっぱりぜんぶなかったという結論に至る。

でもでも、カッコよくなりたいという欲求は生きるうえで大事なことだ。
カッコいい曲をディグって、おしゃれな服をせがんで、大人な行動を真似して。
今では恥ずかしいことも、あのときじゃないとできないことも、たくさんした。
スケボーしたり、ギター弾いたり、バスケしたり、ゲームセンター行ったり。
ぜんぶがぜんぶ、カッコいいからって、それだけの理由で。

万引きもしなかったし、お酒もタバコもやらなかったし、兄貴の部屋に忍び込んで漫画を勝手に借りるくらいしか悪さはしなかったけど、そんな青春がかつてあった。

周回遅れで、僕はそんな青春を取り戻したいと、ふと思った。

もう28だけど、やっぱり、いつまでもカッコよくなりたい。
相変わらず顔は良くないし、身長も低いし、運動神経を測ることもしなくなったし、頭はあの頃のほうがよかった気もするし。
あの頃よく遊んだゲームとか、毎月買っていたバスケットの雑誌とか、小学校で買ってもらったアコギとか、すべてゴミ箱に捨ててしまって、代わりにスーツとか名刺入れとか、いやそんなんじゃないんだよ、と無個性なものが部屋を埋め尽くす。


でも、カッコよくなりたいという欲求だけは捨てちゃいけない気がする。

だから、青春って思春期の頃のことをいうんだと思うけど、そんなの関係なしに、また青春を謳歌したい。
たとえ周回遅れでも、遅すぎたとしても、自分の人生のなかだけはベストを尽くしたい。
それが最低記録のタイムだったとしても、僕にとっては自己ベストになるだろうし、自分の記憶に残ればそれでいい。
こどもだった頃に立ち返って、何がしたかったかな、とか振り返る。
あの頃にできなかったことも、もう一度戻って、やり残したことはなんだろう、とか考える。
YouTubeでカッコいいアーティストのMVをぼんやりと眺めながら、人生のプレイリストを巻き戻して再生する。

人生に遅すぎるなんてことはないって、やっぱりどこかで聞こえた気がする。

というわけで、MVをアップします。明日。
カッコいいって、ただ、それだけの理由で。

もし、私の文章に興味を持っていただけたら、サポートお願いいたします。いただいたサポートは活動費として大切に使わせていただきます。よろしくお願いいたします。