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本性はちょっとずつ小出しにして、決して全てを明かさないで


「噂話の主人公になりやすい女というのはもの静かな人が多い」

林真理子がエッセイでこう主張していた。
たしかに…!と激しくうなずく。更にこう続く。

「あの人とあの人とはデキているらしい」
という噂に異様に興奮したり、張り切って言いふらす女というのは、絶対に、「デキているらしい」方の女の人になれないのである。

自分が女であれば、明らかにそっち側の人間だ。
噂話の中継役として、飲み会で「誰にも言わないでくださいよ」を合言葉に、息を吐くように言いふらす方である。

ドラマで例えると、主人公の同僚としてたまに会話をする役柄で、信念がまるでないようなポジションのチョイ役に当てはまるだろう。
いてもいなくてもいい役だが、「○○ってさ、彼女とか、好きな人とかいないの?」と焼き鳥をつまみながら主人公の胸の内に触れる程度の展開は広げられそうだ。

そんな僕だが、今までの人生でも主人公になれそうなドラマチックな場面は一度もなかった。
でも、やっぱり、主人公になりたいと思うのが男である。
僕は徹底的に「もの静かな人」を演じることになる。

バーに行っても、女の子とデートしても、まず自分からは話さない。聞かれるまで待つか、相手の話をひたすら聞くかのどちらかである。
最初は仕事のことを聞かれることが多い。
そこでも全ては話さない。とりあえず、〜系の仕事をしていますよ、と。
そこで食いついてくれば、少しずつ情報は増やすが、食いつきがなければそこまで、相手の話にシーソーを傾ける。

一回会ったときに、一つの情報。
一回会ったときに、一つの情報。
一回会ったときに、一つの情報。

小出しにするように心掛ける。
例えば、一回目でカメラが趣味と明かし、二回目でどうぶつの森にハマっていると明かし、三回目でパルクールで世界中の壁を飛び回っていることを明かしたら、四回目なにがくるねん、と無意識に期待してしまう。
あくまで一つの例であるが、小出ししていく順番も大事なのである。
俗に言う、ギャップ萌えである。

自分の中でストーリーを作って、どの順番で言えば一番面白いかを考える。

ゲームが好きで、アニメが趣味で、めちゃくちゃマッチョ、とか。
HIPHOPが好きで、ヘビースモーカーで、ハムスターを飼っている、とか。
キャバクラが好きで、ギャンブルが生きがいで、公務員、とか。

うーん、これらの場合、一編に言ってしまっても面白いから参考にならないかもしれない。
ただ、本性はちょっとずつ、ちょっとずつ、全てを明かさないくらいが、丁度いい。

今日も僕はもの静かで、「こいつなに隠してるんだろう」感を漂わせる。
それがモテると思っているからである。それ以上でもそれ以下でもない。
これから僕のことを知ろうと思ってくれる物好きな方がいれば、そのハードルをひょいと超えられることを、小声で約束したい。

今のところそこまでのサプライズはないので、これから肥やして自分磨きに精進したいと思います。まずは、タロット占いでも始めようかしら。

本当に魅力のある人は、全てを明かさない。
プライベートは謎の方が、もっと知りたいという欲求を刺激する。
どこかミステリアスな人の方が惹かれる、という経験もあるだろう。

僕はそんな人間を目指している。
スピンオフくらいの主人公を目指している。
話の中心にいるが、どこか中心からは外れている、そんな感じ。
でも、ベールを脱いだら実は悪役…と言う展開も嫌いじゃない。
仲良い同僚と思ってたら、裏で情報を流している7話目くらいの新事実。真犯人。
本性は何重にも隠して、身を固めるべきなのだ。そこに裏があるかどうかはわからないが…。


そんなことを最後に言っちゃうあたりが、僕なのです。
どうか、嫌いにならないでください。
なんだかんだで、やっぱり焼き鳥でもつまんでおちゃらける人間なので。

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