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ファーストテイクのような、一発撮りの文章を


音楽とは、何か。
一発撮りで、向き合う。

こんなコピーを携えた「THE FIRST TAKE」というYouTubeチャンネルがある。
「アーティストが一発撮りでパフォーマンスをする」コンセプトのもと、「一発撮り」のルールさえ守れば何でもOKというシンプルなチャンネルである。

失敗は許されない極限の状態で、緊張感も伝わる静寂の中、魂を込めて歌う姿は見てるこっちも感情が込み上げてくるほどだ。
本当に即興かと疑うほどのクオリティでありながら、手の動作や表情の変化にも着目できるのがまた一味違って面白い。
北村匠海(DISH//)の「猫」が特に素晴らしく、声も演奏も映像も歌詞も全部いい。ぜひ、見てほしい。


「撮り直しができない」というのは逆にいうと、その一発に全てを懸けるということである。
裏返る声や外したテンポも一発撮りだからこその産物で、つぎはぎして録音したCDでは味わえないリアルがそこには詰まっている。

文章とは、何か。
一発書きで、向き合う。


文章も、一回こういうのを書いてみようかと思った。
ファーストテイク文章。TAKE2はない。
僕の場合、書いた後に読み直して推敲する。悩みに悩んで、こっちの表現の方がいいかとか、平仮名にしようかとか、助詞をどっち使えばいいんだろう、とか。
何回も何回も編集して、ブラッシュアップされていくようなイメージだ。
書いた後に誤字や意味の通じない箇所を発見することも少なくない。

「書き直しができない」文章は、どうなるのだろう。

スラスラと思ったことを書いて、詰まることなく、止まることなく書き続ける。
前の文章とのバランスとかも考えて後戻りもしたいけど、それができない。
後になって見返して、直したいけど、それもできない。
逆にそれが良くなるだろうか。深く考えないで、感情のままに書いた方が面白いだろうか。
文章のつながりや接続詞がおかしくても、ならではの良さに変わるだろうか。

「文章に感情を込める」というのは難しい。
歌や演技にはたっぷり込めることができる。表情にも込められる。声にも込められる。
告白をするときに一番感情が伝わるのは対面というのは明らかだ。

しかし、文字は難しい。
どれだけ絵文字を使おうが、行間を空けようが、長文になろうが、伝わらない部分も多い。
無機質な文字は感情とは真逆の、冷たい一面を持っている。
それがいいというときも、もちろん多分にある。

それでも、僕は文章に感情を込めたいと思った。
思ったことをそのまま書いてみて、脳内に溜まったコトバをそのまま吐き出してみて、今の感情をそのままぶつけてみて。

月曜日の夜のスーパーからの帰り道、なぜかはわからないが泣きそうになった。
この気持ちのまま、感情に任せて書こうと思った。
夜風に吹かれながら溢れ出そうな想いを抑えながら部屋に戻った。

やっと吐き出して書いて、ここまできた。
とりあえず思ったことを書いたので、違和感の感じる文章かもしれない。

ただ、これが僕が今、カタチにできる文章の全てだ。

見返すのも怖いので、これで「公開設定」を押す。ほんとは「下書き保存」したいのだが。
予防線を張ったので、ミスっててもいいか、とも思う。
正直、文章にファーストテイクは向いていない。

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