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一日で習得できる メンズモデルのためのポージング速習法 

1 なぜ速習法が必要なのか

広告撮影において最もカメラマンが困る状況、それは、10枚シャッターを切ったのに、その10枚が全て同じような写真になってしまったときです。

まさか、そんなことはありえないと思うでしょうが、新人のモデルの時によくある状況らしいです。本人は動いているつもりなのでしょうが、出来上がった写真を見ると足はベッタリと地面に吸い付き、よくわからない顔で一点を見つめ、心もとなく申し訳程度に手を動かした、大して代わり映えのしない10枚の写真が出来上がっているのです。

初めてなのだからしょうがない。
少しずつ現場経験を積んで成長すればいい。
そう思うでしょうか?

商品撮影の現場は常に真剣勝負です。悠長に成長を見守ってくれる余裕のある会社はありません。プロとして報酬が発生する以上、当然クライアントが期待する100%のパフォーマンスが求められます。期待値を下回れば次からは呼ばれなくなりますし、期待値を上回れば次も呼ばれるようになります。

それに、モデルのポージングが素人同然では、クライアントは何のために報酬を支払ってプロにお願いしたかわからなくなりますし、事務所の看板にも傷が付きます。

あわせて、モデルという職業に最も求められることは素材だということです、結局、どんなにテクニックがあろうが外見がクライアントの求めるイメージに合わなければ採用されることはありません。

まさに「見た目が9割」の世界です。

それに、アパレル関係のクライアントは近隣のモデルたちの事はほぼ把握しています。その上で常に新しい素材を探し続けているのです。

かといって事務所のモデルたちはテクニックがあるかといわれるとそれも微妙です。メンズモデルはアパレル撮影の機会が圧倒的に少ないということもポージングの上達に歯止めをかけているのかとも思います。

仕事につながるからこそ必死に一生懸命勉強します。モデルになって数年間、アパレル撮影などが入らなければ上達のモチベーションが上がらないのも当然かと思います。たいていは仕事が入ってから焦って練習することになるのです。

結果、商品撮影の現場には事務所に入ったばかりの新人(外見の良い素人)を連れてくることになります。どうせテクニックは期待できないのだからせめてイメージ通りの素材をということです。
学生が多く、猫背だったり、表情が乏しかったり。女子ほど自撮り経験もないので写真自体に慣れていない人が大多数です。

だからこそ、メンズモデルが速やかにプロとして最低限のテクニックを身につけることができる速習法が必要になってくるのです。

まず、品質の向上と現場の速やかなる進行が期待できます。 

適切なポーズをとることで、服のシルエットやスタイルを最大限に引き立て、会社の印象や商品価値を上げ、見る人に興味を引かせることができます。広告業界では、モデルのポージングは、写真の品質を左右する重要な要素であることには変わりません。クライアントが求めているものを瞬時に表現し、撮影のプロセスをスムーズに進めることができます。

さらに、メンズモデルとしての自信も高まります。

自分の身体を使って自在に表現できるようになることで、カメラの前での緊張感が和らぎます。自信に満ちた表情やポージングは、写真を通じて強いメッセージを伝える力を持ちます。スチールだけでなくオーディションや動画やショーの現場においても、最高のパフォーマンスを発揮できるでしょう。

2 ポージングの基礎トレーニング

自然なポーズを作るためには、身体のラインや角度の意識が重要です。立ち姿では、直立した姿勢を保ちながら身体の角度を微調整します。真っ直ぐな体幹を動かすだけでも、ある程度サマになる写真が撮れることに気づきます。また、胸を張り、肩を下げることで自信を表現しましょう。

そのためにできる効果的なトレーニングが「壁立ち」です。

…というかモデル事務所に入ったらウォーキングレッスンの準備運動で真っ先に行うトレーニングです。ところが、昨今はコロナのために大勢が集まってのウォーキングレッスンが減少しています。しかも、ショーなどの仕事が少ないメンズモデルはレッスン自体受けたことがなく、壁立ちをしたことがない人も増えているそうです。

姿勢の良さはモデルとしての必須技能です。
是非毎日の習慣に壁立ちを入れていただきたいと思います。

3 ポージングの速習の心得

先ずポージングの速習において最も心がけることは「撮れ高」です。

撮れ高とは撮影した写真で目的のクオリティに達したもの。またそのクオリティの写真が、どれだけ撮れたかという割合や総量の事です。
「撮れ高が足りない」=「クオリティに達した撮影素材が足りない」ということで、この速習の最終目的はその状態を避けることにあります。

簡単に言うと、10枚の写真を撮られたら10枚とも違う写真にする。ということです。

カメラマンが頑張って10枚も20枚も撮ったのに、ほとんど同じポーズなのでクライアントに1枚しか納品できないという状態を作り出してしまうことは、その撮影にかかわる人たちの時間を奪い、作品の質を低下させる恥ずべき行為なのだ…。まずはこれを肝に銘じていただきたいと思います。

次に「型」です。

全てを違う写真にすると聞くととても難しそうに感じます。初めてのころはそんなに引き出しもありませんし、緊張の中でたくさんの違うポーズを覚えて、しかも表現しなくてはならないとしたら気が遠くなります。

しかし、それぞれ3つならどうでしょう。

具体的には「頭3手3足3」の組み合わせです。それぞれを順番に繰り返すだけでバリエーションを作り出すことができるとしたら少しは簡単そうに思えてこないでしょうか。

次章からそれぞれの実践的な動きを解説していこうと思います。

最後に心がけることは「違和感」です。

モデルとしての技術向上にとってこの違和感を消していく作業がとても大切だと考えます。
姿勢の癖を壁立ちによって矯正する。正しい歩き方をウォーキングレッスンで学ぶ。顎が出がちな人は顎を引く、女性っぽい人は男性らしいしぐさと多く入れてみるなどです。

新人は個性を伸ばすことが長所を伸ばすところと考え、自分なりの作品撮りなどに凝る傾向がありますが、仕事に直結しない作品撮りはただの記念撮影にしかなりません。

商品撮影において主役はあくまでも商品です。本来、モデルは商品より目立つようではいけなく、商品価値を引き上げるための動くマネキンでなくてはいけません。
着用感を想像させたり、会社のイメージを向上させるために、爽やかな人間を使うだけであり、相当な有名人で広告効果を狙うのでなければ個性すらいらないと思っています。

もちろんモデルにとって個性は大事ですが、個性を意識して消せる技術もモデルにとっては重要です。そもそも個性は消えるものではありません。自然とにじみでてくるものだと思います。
だから安心してマイナスなもの、違和感を消していって一人前になった時に初めて個性を磨いていってもらいたいと思います。

この違和感を消す作業は、6章の「カメラの前での実践トレーニング」で解説します。

以上の三つ。「撮れ高・型・違和感」これらに気を付けて速習を進めていっていただければと思います。次章からはいよいよ具体的な実践例に入っていきます。


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