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#2『地域』と『地方』について

本noteを綴るにあたり、今回は『地域』と『地方』という言葉について考えてみたい。

というのも、最近の地域活性化業界では、『地方創生』『地域創生』『地方経済』『地域経営』など、『地域』と『地方』が混在しながら使用されており、両者の違いが曖昧になっていると感じる場面が多い。このあたりをクリアにしていくことで、地域活性化に対する議論の解像度も上がるのではないかと考える。

『地域』と『地方』の意味

まず、両者の意味を調べてみた。

【地域ーちいき】他から区別される特性をもった地表の部分。共通の一体性をもつ場合を等質地域,中心で相互に結びついて一体性をもつ場合を機能地域,または統一 (結節) 地域という(出所:コトバンク)。

【地方ーちほう】国内の一部分の土地。ある国の中のある地域。
首都以外の土地。内閣府では、東京圏以外を地方と定義している(出所:Wikipedia)。

定義の参照元がいずれもインターネットであることはご容赦頂くとして、『地域』と『地方』では、意味が異なることがご理解頂けると思う。

『地域』について

まず、『地域』とは、『他から区別される特性をもった地表の部分』であり『共通の一体性をもつ場合を等質地域』というわけである。この定義から受けるイメージとして『特定のテーマで結びついた面的集合』と言い換えることもできそうだ。最近では、インターネットの登場により、ネットワークで結びついたエリアの集合体(例えば、『美しい村連合』みたいなもの)も登場しているが、基本的には『土地・面』で連続的につながっているものが『地域』と言えそうだ。

『地方』について

一方、『地方』は少し異なる意味を含んでいる。『国内の一部分の土地』
や『首都以外の土地』という意味から伺える特徴として『階層性』があるように思う。具体的には、地方の上位概念として国家や首都が位置づけられているということである。

なので、ざっくり整理すると『地域』は各エリアを並列的に整理する概念であるのに対し、『地方』は中央とその他のエリアを階層的に整理する概念であると言える。

現場での使いわけ

物事の議論を整理する際には、適切な理論や概念が存在して然るべきだが、ここでは『地域』と『地方』で、どちらが良い・悪いという議論をするつもりはない。

ただし、実際の地域活性化界隈の現場では、近年『地域』という言葉が積極的に使用される傾向にあると思う。このあたりを、キーワードの変化から見ていく。

そもそも、『地方創生』という言葉が生まれたのが2014年のことである。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策として誕生した。

その後、関連予算による後押しもあり、『まちづくり』『地域活性化』といった界隈は大きく盛り上がった。全国の市町村の『総合計画』『総合戦略』『人口ビジョン』などを策定するリサーチ系の仕事も増えた。

地方創生マーケットの成熟に伴い、『地方』という言葉の意味が持つ階層性に対する批判が登場する。すべてのエリアは、それぞれに個性を持っており、『違い』はあっても『差』として比較するのはどうなのか、といった問題意識から生まれた議論だと考えられる。

やがて、『地方創生』『地方経済』『地方経営』などの領域は、『地域創生』『地域経済』『地域経営』などという言葉でも表現されるようになり、最近では両者が混在して使用されている状況にある。

注意すべき点は、一般名詞としてローカルを語る際には『地域』という言葉が使用される機会が増えたが、政策等の固有名詞としては『地方』という言葉も数多く使用されており、ごっちゃにしないことである。個人的には検索やタグ付けのキーワード候補がややこしいので、政策や研究の中で、言葉の定義が一層進むことを期待する。

ほなら。

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