内部取引消去の本当のペインは消去ではなく差異の照合業務!
こんにちは!「マネーフォワード クラウド連結会計(以降“クラウド連結会計”)」のプロダクトマネージャーをしている、HORI です。主にクラウド連結会計の「仕様の背景」を不定期で連載しています。(たまにキャンプとかスキーの記事も混ざってますが、難しい記事の合間のアイスブレイクとしてお楽しみください)。
こだわり仕様シリーズ第14回
クラウド連結会計のこだわりシリーズ第14回目は「内部取引消去」について解説していきます。
今回の記事はちょっと長めですが、連結会計業界が解決できていなかった積年の課題を、アイデアとテクノロジーで解消する渾身の機能の解説となっておりますので、是非最後まで読んで頂ければと思います。(クイックに概要だけ把握したい方は下記のプレスリリースをご参照ください)
▼先日、AIサポート付の「内部取引の照合・相殺消去」機能を提供開始しました!
現行の内部取引消去の業務フロー
現状の業界標準ともいえる業務フローはおおむね以下のような感じかと思います
連結パッケージを配布(内部取引消去用の残高を登録するフォーマットを含む)
グループ会社で財務諸表の作成と同時にグループ会社を相手にした残高をピックアップして、内部取引消去用のフォーマットを埋める
グループ会社が連結パッケージを提出する
親会社側で会社-相手会社ごとの照合表を作成し差異の発生状況を確認
差異がある組み合わせについて、親会社が調査するか、それぞれの会社に調査を依頼
連結パッケージの修正になる場合もあるので、そのケースは修正を反映
内部取引の差異原因を把握
差異が一定基準以下になったら、事前に決めてある差額消去ロジックにしたがって、内部取引の消去仕訳を作成・計上する
割と煩雑なフローになっているのですが、グループ会社担当者とのキャッチボールが必要な照合・差異調整業務を単体決算が締まった後の数営業日前後で終えないといけない日程になっていることが多く、瞬間風速的にかなり負担の多い業務となっています。
内部取引消去の業務ペイン(担当者の困りごと)
内部取引消去業務の「何が大変ですか?」と尋ねると、以下のようにいろいろなポジションから各種の困りごとが上がってきます
親会社連結担当者
連結パッケージのメンテナンスが面倒。特にグループ会社が増えた時とか科目が増えた時のメンテナンスが大変
差異の照合表を作成する作業が大変
メールで回収して転記していると最新版がわからなくなる
海外の会社への説明、リマインドは困難。時差もあるから期日に間に合わなくなること多い
差額の理由を確認しても、要領を得ない回答が来ると路頭に迷う
子会社間の取引の差額の「どちらが正しいのか?」を判定する裁判官みたいなことになってしまうことも
差額を埋めるロジックの理解が大変
子会社側の担当者
グループ会社間取引の集計表を別途作成しないといけない
(単体会計システム側では連結の科目、連結の相手会社の情報は入ってないので、明細からのピボット集計作業が必要)相手会社との差異調整を依頼されるが、相手会社側でどのような処理をしているのかわからない
両方で修正が必要なケースなどは相手側の修正後の数値が見えないと、こちら側が正しく修正できているか判断が難しい
監査人
今、どこで差額が出ているのか?を把握することが難しい(調整している間はすぐに動くから)
差異の調整理由が本当に正しいのか?を確認するための情報が少ない
差額の調整パターンが複雑で、差額調整ロジックが正しいのかわからない
経営者
正直、そこまで正確でなくてもいいから、素早く結果を出してほしい
特に月次の消去などは照合作業を後回しにしてでも、内部取引を抜いた速報数値を見たい
従来型の内部取引消去プロセスの限界
Excelでの連結ではこの業務ペインが解消できないのはもちろんなのですが、
現状、国内外にある連結会計システムでもこのペインは解消できてないことが多いと感じていました。
連結パッケージの配布・集計、照合表の作成、消去仕訳の自動作成、あたりまではできるシステムが多いのですが、内部取引消去の大きなペインである以下の2点が解消されていないのです。
連結パッケージを作成するためのデータ集計が大変
差異原因の調査が大変
そして、この2点はともに「連結パッケージの作成時に連結システム外でデータを集計する」という行為に起因しています。「連結パッケージ登録時に手間をかけて集計してしまう」がゆえに、「差異調査時には逆にその集計を分解する手間が発生する」という、二重の業務ペインを生み出してしまっています。
なんで、こんなことになっているのか?考えてみると、現行の連結会計業界では
子会社が「定型フォーマットの連結パッケージを作成して登録する」という行為をスタート地点にして考えてしまっているから
ということに行きつきます。
子会社側が連結パッケージ用のデータを作成する という業務を、システム化の範囲外と考えているので、子会社側でのデータ作成業務や子会社側の明細データとの照合は従来の連結会計業界ではなかなか解消できない課題になっていました。
クラウド連結会計の課題解決の方向性
上記のような内部取引消去業務の業務ペイン(担当者の困りごと)を解決すべく、クラウド連結会計では以下のようなコンセプトで内部取引消去業務をシステム化しました。(特許出願済み)
なお、消去すること自体が課題ではなく、照合することが大きな課題である という意識から、内部取引照合・消去に対する機能群という位置づけになっています。
内部取引は明細からの登録を可能に
グループ会社の取引先別残高のようなフォーマットに加えて、明細形式や仕訳帳形式のデータ登録を可能にしました。明細アップロード時に勘定科目と取引先を連結ベースの科目、相手会社に変換するというロジックを入れることで、仕訳レベルのデータから相手会社別債権債務と相手会社別損益をピックアップ&自動生成します。
(なお、集約されたデータの登録でも問題はありません。まずは現行業務を置き換えてから徐々に明細突合の構想でも実現可能です)
この際、取引先から連結の相手会社別への集計作業にはAIのサポート機能もついているので「連結パッケージ用の集計作業」が劇的に軽減されます。
(会社名の表記ゆれや、単体の取引先との粒度の差なども吸収できます)
この機能を活用することを前提に、手作業での集計を当たり前にしていた内部取引の登録業務を「明細ベースでの登録」だけで終わるようして、子会社担当者のペインを解消しつつ、後続の照合業務で必要となる明細データをシステム内に保持することができます。
照合差異発生状況のリアルタイム表示
クラウド上でデータの最新状況を確認しあえるメリットを生かし、差異の発生状況はリアルタイムに一覧で確認できるようにしました。
これにより、各所から取り寄せてきた情報を反映した照合表を更新する手間がなくなります。
また、明細を登録した後に「処理実行」しないと照合状況が見えない ということもなく、常に最新の差異調整状況を把握できます。なお、細かい点では、更新の発生状況の一覧化や、消去漏れ科目のピックアップ機能もあるのですが、その辺の詳細は後日解説できれば と思っております。
差異照合業務の効率化
グループ会社間で差異の調整作業をしやすくするために、自社が特定の相手会社に計上した取引の確認画面から、「会社⇔相手会社の反転機能」で相手会社が自社向けに計上している取引を確認することができるようにしました。
この際、集約結果だけでなく、集約前の明細データを表示することができるため、差異原因のトレースがしやすくなっています。
親会社の担当者にとっては「子会社間取引なのになんで親会社が確認しなければいけないのだろうか?」ということがなくなりますし、各社の担当者にとっても「相手がどのように処理したのか?」が見えますので、差異原因の確認のための手掛かりをつかむことが容易になります。(むしろ、総額の差額だけで原因が分かるヒトはエスパーか何かだと思いますので、お互いで明細データの相互確認は、メールや電話で今までもしていたかと思います。その業務がクラウド上でできるようになりました)
内部取引消去仕訳の作成
内部取引パターンごとの差異金額が一定基準値に収まっていることを確認できたら、連結仕訳を一括起票します。この際、差額をどの会社、どの科目に寄せて仕訳を計上するのかをプレビュー確認してから計上できるため、「よくわからない差額処理が発生している」という事態を避けることができます。
全連結処理の自動処理で仕訳を起こす というスタンスですと、
1、自動処理を実施してみる(最低でも数分はかかる。)
2、他の連結処理との変化点がないかチェック
2、内部取引の差額発生状況を再確認
3、イメージ通りでない場合、データを直して1から処理し直し
という感じで何回も処理の再実行が必要になりますが、クラウド連結会計では内部取引消去仕訳にフォーカスした状態でプレビューで確認ができますので、スピーディに連結仕訳に反映することが可能となり、連結担当者のペインをかなり削減できます。
なお、「パターンに従って差額を処理する」だけのシンプルな機能にとどめているが故に「月次の連結では親会社側データを正として処理する」というような、簡便的な対応も可能になっています。
「月次では工数をかけずにシンプルに内部取引をざっくりと消去したい」というような要望も問題なく対応できるため、スピーディに連結結果を把握したい経営者の期待にも応えやすいようになっています。
最後に
いかがでしたでしょうか?
この記事では内部取引消去に絞って、各ユーザーのペインの解消方法を解説しましたが、「マネーフォワード クラウド連結会計」にはまだまだ魅力的な機能がたくさんあります。
お客様の課題に合わせた豊富な導入支援プラン等もございますので、気になった方は下記のリンクよりお問合せをお願いいたします。