見出し画像

僕の英語武者修行〜外資系企業(英語圏)で活躍するには(4)顧客と仕事することでこそ学べる実践英語

前回は英語力が不足しているがゆえに社内で感じるフラストレーションを成長機会に変えることについてお話しました。結局のところ社内は仲間うちなので自分の努力次第で協力が得られやすく打開策は見つかりやすいと思います。ところが顧客は相手が対価を支払ってサービスを受けることを前提としているので同じようには行きません。発揮されるパフォーマンスに対して厳しい目が向けられます。特に僕が行っている人事や採用の仕事はコミュニケーションがサービスの中心になるので言葉の重要度がとても高くなります。しかし、やはり厳しい状況こそ成長の機会です。そして難易度が高い仕事こそやり遂げたときのリターンは大きいものです。今回は僕が個人的にとても難しいと感じつつ、大きな学びとなった顧客との仕事についてお話したいと思います。

人材サービス会社で人材紹介の仕事をしていたときのことです。ニューヨークにいる同僚が、とあるアメリカ東海岸に本社があるIT企業の日本の技術部長を見つけるプロジェクトを受注しました。その同僚がプロジェクトマネージャーで、日本にいる僕が有力な人材を見つける実働部隊です。実際に当たりをつけた人材の何人かとミーティングを重ねるうちに、この仕事が大変困難なものであることが次第にわかってきました。というのは、概ねこの会社の製品は優れているものの、日本で当然必要とされる機能を備えていないことがわかったからです。また、アメリカと比べてこの分野の人材の数はかぎられていて、日本での転職はアメリカほど頻繁ではないということも、アメリカにいる彼らには全く理解されていないということを感じていました。

僕は決してこの仕事を諦めたわけではありませんでしたが、この困難さをアメリカの同僚と顧客に伝えなければいけないと思いました。日本時間の深夜に眠い目をこすりながら始まったアメリカ東海岸との電話会議で、僕は彼らにこのプロジェクトの難しさに関して話し始めました。説明を始めてほんの少し時間が経ったときです。顧客が突然怒り始めました。そんな泣き言を聞くためにこの会議をしているわけではないと。僕は驚きました。なぜなら僕は決して泣き言を言っているわけではなく、しかも説明はまだ始まったばかりでした。僕が説明を始めた意図は、この困難なプロジェクトを成功させるためにはまず自分たちの置かれている状況に関して共通認識を持たなければいけないと思ったからです。また、うまく行かない可能性が高いのであればプロジェクトの初期にそう伝えなければいけないという責任感もありました。

程度の差はあると思いますが、日本では前提となる情報をまず伝えて結論は後から切り出す傾向にあると思います。そして、プロジェクトを成功させるためにはできる限りリスクを考慮してから始めなければいけないと考える傾向もあるかと思います。しかし別の国ではまず結論をはっきり述べてからそれをバックアップするための情報を補足する傾向にあります。また、リスクは全て取り除けないので、不完全でもまずはやってみることが求められるということもあるかと思います。

僕は顧客を怒らせてしまったことに打ちひしがれ、泣き言を言っていると思われたことをとても悔しく思いましたが、大きな学びも同時に得ました。そこで、次のミーティングでは、バックアップとなる情報は周到に用意した上で、別の伝え方をしました。まず、僕はこのプロジェクトを成功させるために全力を尽くすし、やるべきことをやれば成功できるはずだと伝えました。成功する確信など全くありませんでしたが、成功させる意思とガッツをまずみせることが大切だと気づいたからです。そのあとで、しかし今のままではうまく行かないと思うことと、なぜそう思うかについて、準備した情報を共有しました。ミーティングはうまくいきました。彼らは最終的に日本の転職市場の状況をわかってくれたし、製品機能に関しても日本向けに開発しなければいけないことを製品開発部門に伝えてくれることになりました。

今回は英語という言語自体のはなしというより、英語を使う上で考慮するべき文化の違いのはなしでした。なかなかこのようなことは英会話スクールや教科書だけで学ぶのは難しく、実地のなかで学んでいくのが早道だと思います。外資系の支社で働いているときに大変ではあるが学びとなることは他にもあります。そのことについて、次回にお話できればと思います。どうぞお楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?