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しまのがっこう

僕の名前は蒲田 炭吾郎(かまた たんごろう)。小学3年生。僕が生まれる少し前、大人気だったマンガの主人公からいくつか漢字をもらったらしい。なにやら僕の両親は、強くやさしい子に育ってほしいと思ったんだって。

僕は昨年、自然が豊かで海がきれいなこの島に、都会から引っ越してきたんだ。田舎だけど、学校も遊びも不自由ないし、自然の遊びが多いぶんこの島暮らしのほうが好きかな。

「じゃあ学校やってくるね」
僕は母さんと父さんに声をかけた。

「はーい、がんばってね」
「おう、お昼ごはん一緒に食べような」

こうして僕の学校の時間が始まった。

僕の学校では週に1回の特別授業があって、外国の先生が授業をしてくれるんだ。今日はイスラエルの「れきしがく」の先生で、小学生向けに話してくれるみたい。先週はアメリカ人の先生だったかな。

「今のような高度に発展した現代だからこそ、人類が古代からどのように発展していったかを学ぶことに意義があります。なぜなら人類がどんなに高度に発展しても、ホモサピエンスの遺伝子は古代から大きく変わらず、われわれの行動や思考の根本は古代と変わっていないのです」

先生は英語で話してるみたいだけど、同時通訳されるから困らないや。けど言ってることは、なんだか難しい。

さて、お昼の時間。

いつも母さんと父さんと、家で一緒にお昼ごはんを食べている。

「この野菜の天ぷらも、お魚もおいしいね!」
「母さんがこの前、山菜を採ってきたのよ」
「その魚は父さんが今朝釣ってきた魚だ。海が近いからすぐ釣りに行けるな。本当にこの島に住んで良かったよ」

僕はこの島のおいしい野菜も魚も好きだ。

午後の授業は、僕が好きな授業を受けれるんだ。たくさんの先生の中から、僕が興味を持っている授業を受けることができる。
僕は小学3年生だけど、漢字だけは大得意で、もう5年生の漢字だって書けるんだ!だから僕は小学5年生の漢字の授業を受けている。ほとんどの生徒は5年生だけど、僕と同じ3年生も少しいるし、4年生はもう少し多くて、漢字が苦手な6年生も少しいる。なんと2年生がひとりだけいる!すごいなこいつ。

僕は漢字は得意だけど、計算は少しだけ苦手で、ときどき2年生の授業を受けることもある。

午後の授業が終わったら、放課後に学校の図書館から本を借りよう。
ここの図書館は、本棚にある本はなんでも読めて、貸出中で読みたい本が読めない、ていうことがないからすごい便利。

少しだけならマンガもある。そうだ、僕の名前の由来となったマンガを借りてみよう。かなり人気だったっていうから、たぶんあるだろう。かなり前のマンガだけど、きれいに読めるな。大正時代に鬼と戦う物語らしい。

さて、授業も終わって図書館から本も借りたから、学校をおしまいにしよう。

「ふー、今日の授業終わり!」

そうして僕は、VRゴーグルを外した。

僕は今まで自宅から、インターネットを介したVR学校に行っていた。仮想空間の中でアバターを通して教室に行き、クラスメイトに会い、授業を受けていた。
クラスメイトも、それぞれお気に入りのアバターの姿で教室にいる。数人しか素顔は知らないし、実際に会ったことのあるクラスメイトは少ないけど、僕は特に気にならない。

このVR学校は、技術的には1クラスに100人でも200人でも入れるけど、担任の先生がAIの力を借りても、そんなに多くの生徒とコミュニケーションするのが大変だから、だいたい1クラス50人までが目安だ。

僕の学校には担任の先生や決まった授業の担当の先生はいるけど、半分くらいは他の学校や、他の国の先生だ。外国の言葉でも、仮想空間の中で日本語に同時通訳されるから、言葉の壁は感じない世界だ。

父さんも同じで、自宅からVRの企業に出勤している。だからいつもごはんは、家族みんなで一緒に食べる。

「これから海に遊びに行ってくるね!今日は善二くんいるかなあ」
「あら、でも今日雨よ」
「そうかあ。じゃあアメリカのジョンくんとゲームやろうかな。この前、ゲームの建築対決ですごい盛り上がったんだ」
「わかったわよ。夕飯前にはゲーム終わらせるのよ」

そういって僕はVRゴーグルをつけて、ジョンくんがオンラインかどうかを確認した。

僕は、今の生活が気に入っている。食べ物もおいしいし、自然がいっぱいの中で遊べる。
学校の授業も、僕に合った授業が受けれるし、世界中の人の話を聞くことができる。

昔から技術的にはこういう生活が可能だったらしいんだけど、僕が生まれる少し前に、世界中で病気が流行り、人となるべく会わないために、インターネットの学校も増えていったらしい。

VR学校のない生活を考えたら、なんてつまらないんだろうと思う。僕は今の時代に生まれて良かったなあ。

最後まで読んでいただいきありがとうございます。 定期的にアップしていきたいので、今後もよろしくお願いします。