見出し画像

関市のちいさな鉄家具メーカーがミラノ・フォーリサローネ(ミラノデザインウィーク2023)に出展します。出展への想いを代表にインタビューしてみました。

2023年4月に開催されるミラノ・フォーリサローネ(ミラノデザインウィーク2023)に杉山製作所がギャラリーを借りて出展することになりました。
社内で働いているわたしにとっても、楽しみなイベントです。

今回の出展の経緯や見どころ、出展への想いについて杉山製作所の代表・社長の島田にインタビューしてみました。

先日SNSで出展について紹介したところ、「え!すごい!」と、たくさんの方に驚いてもらったのですが、出展の裏側(!?)を知っていただけたらと思います。


出展までの道のり


ーいつから出展を考えていたんですか?

島)そもそもは20年以上前(前職のインテリアコーディネーター時代)にミラノ・サローネを視察にいったことがあり、その時から家具といえばミラノサローネという認識がありました。
でもその頃はまさか自分の会社が出展するなんて思ってもみませんでした。

ーーーーー

杉山製作所が鉄家具のメーカーとして動き出したのは2011年。
家具のブランドを始めたころから、「いつかは…」とミラノ・サローネを意識はしていたそうです。

本格的に出展を考え始めたのは2016年。
「felice」という椅子が発売された頃。

最初の本格的な椅子、feliceチェア



社長の中では「家具といえば椅子」という考えがあり、椅子を作るならサローネに出展したいという想いに繋がったそう。

それまでにもいくつか椅子を発売はしていましたが、feliceが完成したことで、出展をはっきりと意識するようになりました。

家具のブランドを立ち上げ、ブランディングをしていくなかで、ある時から「鉄で日本一座りやすい椅子を作りたい」というテーマを掲げるようになりました。今回の出展も椅子(ラウンジチェア)を中心にした展示になっています。


鉄椅子の開発で学んだこと



ー本格的に椅子を作るようになったきっかけは?

島)家具を作ってきて、職人さんたちの技術があがってきました。
もともとは店舗什器などを作っていましたが、家具のブランドとして3年くらいブランディングをしてきて、だいぶ技術があがってきたので、次は椅子を作る技術を身に付けたいと考えるようになりました。
そんなとき、以前から交流のあった家具デザイナーの村澤一晃さんに椅子を作りたいという相談をしました。
職人さんたちの技術が、そこまで来ているな…と肌で感じたので。
村澤さんには、「売れる椅子」を作りたいわけではなく、時間がかかってもいいから、他の鉄の椅子にはない「座り心地のよい椅子」を作りたいというお願いをしました。


家具デザイナーの村澤一晃さんとの取り組みにより、最初の椅子「feliceチェア」ができました。
村澤さんとの商品開発はスタッフみんなが参加して意見を言い合うワークショップ形式。それまでの杉山製作所の商品開発とは違った新しい方法が取り入れられました。

ワークショップの様子。試作品に対してみんなで意見を出し合います。


ーfeliceチェアができたときの感想は?

島)できあがったものよりも、作る過程が大事だなと感じました。
椅子を作るハードルはすごく高いわけではなく、ひとつひとつの技術の積み重ね、いつもやっていることの積み重ねで作ることができるんだ…ということがわかりました。
それは村澤さん(デザイナーさん)に入っていただいたこともあり、椅子を作り上げるゴールが見えたように思います。



サローネに出そう!


ー実際に出展しようと決めたのはいつですか?

島)2017年にあらためて視察に行き、2018年にはもうギャラリー探しを始めていました。2020年の4月に出展を目標にしていたので、2019年にはギャラリーさんと契約しました。2020年にはレイアウトを決め、もう荷物も発送するだけのところまで準備をしていたのですが…

ー …が?

島)世の中の状況が難しくなり、ミラノサローネの開催が中止に。
そうして3年経って、2023年、いよいよ出展できることになりました。


3年の月日を経て


ー今回の展示のテーマが椅子になった理由などをおしえてください

島)もともと「椅子」をメインに展示しようと思っていました。
理由として、家具の技術の最たるものは「椅子」に詰まっていることがあります。そして杉山製作所の技術が詰まっているのも「椅子」であると思っています。

世界の評価と考えたときに、椅子は共通のものであります。
日本はヨーロッパに比べたら椅子の歴史は浅いですが、(世界の共通のものである)椅子を評価してもらうことで海外からの評価につながると思っています。

ー展示を、椅子の中でもラウンジチェアに絞った理由はなんですか

島)この3年間コロナ禍で動けなかったこともあり、会社としては内向きな取り組みに力を入れてきました。社内の技術を上げたり、社内の改善をしたりといったことです。
それによって、椅子を作る技術もさらに発展しワンランクレベルアップしました。その成果として出来上がった製品がラウンジチェアです。
出展が3年間延びたことによる成果として、ラウンジチェアを展示することに変えました。

出展が延期された3年の間に開発されたラウンジチェア


構造美、見てください


ー今回の出展の見どころをおしえてください

島)見どころを展示のコンセプトにしたのですが、「構造美」です。
チェアやラウンジチェアを説明するときに、もちろん座り心地というのが1番にはなるのですが、デザインとして「座」や「背」などの(躯体である)
鉄の骨組みを見てもらうだけで、とても美しいフォルムとして見えてきます。それが、技術やデザイン性に繋がっているのではないかなと思います。
躯体だけ見てもらうと、補強とかそういうものも全て(余分なものを)そぎ落としたものになっていて構造とデザインが一緒になっているような作りになっています。
それはデザイナーさんと職人さん・設計さんを含めダイレクトに一緒に商品開発をしているからこそ、(強度や補強なども)きちんと考えられたものとして出来上がってくるのだと思います。
それが杉山製作所の良さです。
裏返しても見てもらえるような、何も無駄のない美しい構造になっているところが製品の見どころであり、展示の見どころです。

ーまさに今回の展示のテーマである、構造美というところですね。

島)ラウンジチェアを開発しているときに、職人さんたちから「目立たないように補強はここに入れたほうがいい」などの提案がありました。みんなで商品開発しているからこそ、図面をみて作るだけではない、ものづくりができているように思います。


ー構造の美しさや取り組みについても会場に来た方に伝わるといいですね

島)展示の工夫として、構造の美しさが伝わるようなポスターを製品と合わせて展示します。良い家具ってどこから見ても美しいんじゃないかなと思うので、そういうところも伝わるといいなと。
鉄だからこそ細くても強いということも、生かされていると思います。
お越しいただいた方には、裏返して見せたいと思います(笑)

後ろ姿が美しい、SHINラウンジチェア


小さなギャラリーで展示します


ー今回展示するギャラリーさんについて教えてください

島)ブレラという地区のギャラリーで展示を行いますが、日本のメーカーさんもたくさん出展されている場所なので、日本の方も立ち寄りやすいと思います。
通りに面していない、あまり大きくないギャラリーですが、雰囲気がとても良いです。
大きな会場にブースを借りて出展している日本のメーカーさんも多いのですが、今回は雰囲気を大事にしてギャラリーでの出展にしました。
お客さんの数は少ないかもしれないですが(笑)
ゆっくりじっくり見てもらえたらと思います。

ー椅子の裏側までじっくり見てもらいたいということなら、それくらいゆっくり見られる会場のほうが良かったのですね

島)何度も足を運んでいろんなギャラリーさんを見て回りましたが、今回の展示内容に対してベストかなと思える場所を選びました。
来てもらえる人がいるかどうかが、不安材料ではありますが…(笑)
日本の方にも来てもらえたら嬉しいですね。

実際に展示を行うギャラリー ガッレリア・アントニオ・バッタリア


ー出展にあたって社内のみなさんへメッセージはありますか

島)今の杉山製作所を(来場する方に)見てもらいたいというのが本音です。
取り組んできたことがどう評価されるかわかりませんが、次への課題を探っていく機会になればと思います。

ーステップアップのためなんですね

島)長い目で見て、ステップアップの場所だと思っています。もちろん買ってくれる人がいればベストですが、それだけが成果だとは思っていません。



職人さんの技術の価値を、世界へ伝えたい



ー(来場される)みなさんへのメッセージはありますか

島)現物を見て、実際に触って座って、(鉄の良さを)感じてもらいたい。
写真で見たときもフォルムの綺麗さなどは伝わると思うのですが、鉄の魅力である素材感のようなものは、写真では表現できないので。実際に触って座って感じて欲しいと思います。
会場に来られない方も、後日ショールームなどで見られるようにしたいと思います。
会場ならではの空気もあると思うので、たくさんの方に会場に来ていただけたらと思います。
なかなか宣伝もできないので、どうなるかわかりませんが(笑)


ー出展してどうだったのか、この記事を読んでくださったみなさんはその後の感想も気になると思います

島)出してみないと自分たちもどうなるのかわかりませんね。
自分たちが出展してみてどんなことが起こるか想像がつきません。
ただ、何かが大きく変わることはないかな…ということは想像がついています。
(出展は)ステップアップの1つであり、何か大きな結果を出すというよりは、このことをどう次のステップアップにつなげていくのが大切かなと思っています。
出展することで周りの方に「すごい」と言っていただきますが、選ばれて出展するわけでも何か賞を取ったわけでもなく、まずは行動するというだけなので、別にすごくないんです(笑)


ー出したいという想いはあっても、それを行動に移すまでがなかなかハードルが高いのかなと思うのですが…

島)なぜ出そうという行動に移ったか、突き動かされた理由があって。
それはやっぱり職人さんの技術を見てもらって、職人さんの価値を認めてもらいたいというのが一番の理由です。

もともとやっていた誰かに教えてもらったわけでもなく、全部自らのアイデアとノウハウでやってきてできあがったものなので、彼らのがんばってきたことを認めてもらいたいし見てもらいたいという想いから、行動に移すことができたんだと思います。
そうでなければたぶん行動していなかった。

世界で通じないなとか、中途半端にやっているなって思ったら出展したいと思わなかったと思います。
でも、通じると思ったからみんなに見ていただきたいと思いました。

もしかしたら全然ダメかもしれないけど、それはそれで次のステップを見つけることに繋がればと思います。



ー出展したことによって、職人さんたちの想いがどんなふうに変わるのかも楽しみですね。ありがとうございました。



出展概要
タイトル:The Beauty of Structure(構造美)
SUGIYAMA, Japanese Minimalist Solid Iron Furniture
会期 :2023 年 4 ⽉ 18 ⽇(⽕)〜23 ⽇(⽇)
開催時間:10:00〜19:00 カクテル:4 ⽉ 21 ⽇(⾦)17:00〜20:00
会場 :Galleria Antonio Battaglia(ガッレリア・アントニオ・バッタリア) HP http://www.galleriaantoniobattaglia.com
所在地 :Via Ciovasso 5-20121, Milano(ミラノ市街チョヴァッソ通り)

詳しくはこちら

http://tetsukagu.jp/images/top-news/20230324.pdf


ーーーーーーー


展示会の様子や感想なども、またお伝えできたらと思います。
もし実際に現地へ行かれる方がいたら、杉山製作所の展示ギャラリーにもお立ち寄りくださいね!!

それでは、また。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


*岐阜県関市で自社製品の鉄製家具を販売しているお店「鉄家具と暮らす・テツクリテ」のスタッフnoteです。商品のことや日常のこと、工場のことなどを気の向くままに綴っています。

lit.link tetsukurite lit.link(リットリンク) SNSなどはこちらから。

オンラインストア 


いいね、フォローしてくださると励みになります!

https://twitter.com/tetsukurite


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?