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フィールド言語学者、巣ごもる【読書録】:星3

【書評】★★★(読む人を選ぶが良著)

俺の趣味の一つに語学がある。
もちろん、流暢に話せるレベルには到達していないものが圧倒的に多いが、他言語を学ぶと言語の違いはもちろんのこと、その国の環境や考え方もどことなくイメージできるようになってくる。
日本語は母語として、英語は平易な論文は読めるが日常会話は難しい。
ドイツ語、中国語、イタリア語はごく簡単な挨拶程度ならなんとか。
モンゴル語、ロシア語も少しだけ触れたことはあるけれど、キリル文字がどうにも抵抗があって先に進まない。
その程度の学習であっても、言語を学ぶと違いがわかって面白い。
モンゴル語では『馬』を指し示す単語が5種類以上あり、いかに馬を大事にするか、みたいなね。
会話ができればもっと面白いけれど、国内にいると会話する機会なんてほとんど恵まれないからモチベーションが保てないのが残念だ。

「語学」と似た言葉に「言語学」がある。
名前は聞いたことがあるが、その仔細はわからない。大学の基盤教養で講座があったはずだが、楽単であるというだけで出席し、ずっと寝ていたから内容は覚えていない。
だから、今回読んだ内容は全てが新鮮だった。
大学の授業を真面目に受けていたらつまらなかっただろう。当時寝ていた自身に感謝の念を表したい。


言語学とは、「言語を研究対象とした科学(サイエンス)」のこと

本書 P017

言語を学ぶのは文字通り、「語学」と呼ばれる。語学は学問ではなく、トレーニングである。

本書 P020

言語学は科学である。もちろん理系・文系の括りで言えば文系になる。しかし、仮説を立て、データを集め、論理的に解釈し、推論するというプロセスは紛れもなく科学である。
そして、その科学する対象が言語であれば、それは言語学であるとのことだ。
本書では、言語学の様々な分野に関するエッセイのような構造になっている。
「言語とは」「音声学」「フィールド言語学」「翻訳」「借用語」「方言」などなど
一部は難しい(厳密には言語学の手習がないととっつきづらい)章もあるが、多くは日常によくありそうなエピソードをテーマにしているため、興味のある章を読んだり、読めるところまで読み進めて挫折しそうになったら読み飛ばすのでも良いだろう。
あとがきにも

言語はどう眺めても良いんだぞ、といった話をした心算である。本書を読むことによって、言語学や言語そのものに関心を持ったり高めたりした方が僅かでもあったら幸せる。

本書 P269(注:「幸せる」は誤植ではなく山口の方言とのこと)

とのことなので、軽い気持ちで読むのが良いのだろう。
言語学に興味がある方はもちろん、日常で言語について少しでも疑問を持った人にはぜひおすすめしたい。
個人的に学校教師には特におすすめしたい。

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