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生きる/LIVINGを観た。


⚫︎『生きる/LIVING』を観た。

 1952年公開の黒澤明監督の邦画『生きる』のリメイク作品で2022年公開の洋画。舞台は第二次世界大戦頃のロンドン。主人公はロンドン市役所の市民課の課長。
 いかにもつまんね〜公務員って感じのおじさんが余命宣告を受け人生を見つめ直すというのがこの映画のあらすじ。

 前評判はある程度聞いていた。
 「公務員が観るべき映画」
 原作は未視聴だけど、公開時期に社会人として働き始めていたので、ずっと観たいな〜とは思ってはいた。社会人3年目の春にしてAmazon Primeビデオに追加されたので、定時あがりの夕下がりにさっそく鑑賞した。
 結論から言うと、今の自分自身が抱える問題を解決するヒントとなるような映画で、非常によかった。よかったから感想を書いてみることにした。映画の感想を書くのはこれが初めてなので、お見苦しい文章かと思いますがご容赦ください。

⚫︎つまらなさ

「わかる〜〜〜〜〜。」
これが映画を観た率直な感想。

 あまりにわかる。わかりすぎる。
 机に積み上げた書類の山、なんか全体的につまんなそ〜な雰囲気の職場、めんどくせー陳情をしに来た市民団体をたらい回しにする感じ。なにかをずっと書いてるよくわかんねー仕事をしてる同僚。わかる。ぜんぶわかる。
 まず、大前提として、僕は、僕というやりたいことがない、しょーもない、スキルもない人間を雇ってくれて、社会人として育ててくれている職場には本当に感謝している。同僚は"善い人"が多いなって思うし、誰かがやらないといけない仕事であるという点で、自身の仕事を誇りに思っている。それに映画を観たりカフェに行ったりするのが好きだから、17時に仕事が終わって、平日からのんびり映画を観たり、土日祝が休みで、休みの日にカフェで一服できるような生活のリズムを愛してる。
 ただ、本映画の開幕数十分間の、主人公の職場を描写する数々のシーンの中で、克明に描写された"なんとなくつまらない感じ"。これがおそろしく自身の身に突き刺さって悲鳴をあげそうになった。(ちなみに本作品の主人公も映画鑑賞が好きで、映画を観ることで、日々のつまらなさを誤魔化していたのが、一番、僕の心を抉った。)

⚫︎生きる

 平々凡々な日々を送る主人公とその職場紹介の映像が流れた後、場面は変わって、中年の主人公が検査か何かの結果を聞くために、仕事を早退し小さな病院へと向かう場面へと展開する。

 そこで、医者から「ガンであること」と、「余命があと半年程度しかないこと」を告げられる。ここから主人公は生きながら死んでいたこれまでの無為な日々を振り返り、残された時間を少しでも有意義に過ごすことができるように「生きるために生きる」ような生活を送ろうともがきはじめる。
 今の生活にうっすらとつまらなさを感じているならば、Amazon Primeビデオで公開中なので、ぜひ本作品を観てみてください。人生を取り戻そうとする主人公の姿に何かヒントを見出すことができるかもしれないです。





※以下、本作品の重大なネタバレを含みます。未視聴の方はお気をつけください。







⚫︎救い

 本作品の主人公は、余命宣告を受けた後、しばらく会社をサボって放蕩したのち、急に職場に戻って、人が変わったかのように働き始める。具体的には、映画の前半にでてきた、主人公自身がたらい回しにした「めんどくせー陳情をしに来た市民団体」の人たちの意見を真摯に聞き、子どもたちが安全に遊べるように、街に小さな遊び場を作ろうと奮闘する。
 ぼんやり働いている自分の部下はもちろん、めんどくさがってやろうとしない他の課の人たちに積極的に働きかけ、最後にはみごとに、小さいながらも素敵な遊び場を作りあげ、自身が手がけた遊び場のブランコに揺られなが最期を迎える。というので本作は終わる。
 心を打つのは、主人公の葬儀に出席した部下たちが、急に人が変わったように仕事に前向きになり、小さいながらもひとつの仕事を成し遂げた主人公を評するシーン。
 「課長は成し遂げた!」
 「俺たちがマジになれば仕事は進む!」
 「課長の生き方に習おう!」
 「俺たちも一所懸命に仕事に取り組もう!」
 「俺たちはもう二度とたらい回しにしない!仕事から逃げない!今日ここに"誓い"を立てよう!」
というふうに。
 傑作なのは、場面が切り替わって、誓いを立てたその数ヶ月後には部下たちが再びぼんやりと働いているさま。めんどくさい仕事が来れば、ぼんやりとしたことを言いながら他の係に押し付けて、またぼんやりとする。
 人間のしょーもなさを痛感させるシーンだが、この一連のくだりが"救い"であるように僕は感じた。しょうがないよね、人間だもんね、
 僕もこの映画を観た次の日とかは、悔いのない人生を送りたいと強く思って、いつもより真剣に仕事に取り組んだけど、三日もすればまたぼんやりと仕事をしてました。
 何かに触発されて、安直に誓いを立てては、日々の中でぼんやりと忘れていく。そんなことを繰り返しながら、死ぬ時に少しでも悔いのないように生きていきたい。

以上

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