2022年の浦和レッズ、ピッチ上では何が起こっていたか エルゴラ浦和担当、沖永雄一郎さんと振り返る(前編)

<全3回中の1回>

浦和レッズの2022年シーズンが終わりました。2019年末に3年計画を打ち出したクラブは、その最終年となる今季の最大目標を2006年以来のリーグ優勝に定めましたが、それは早い段階で現実的でないものとなり最終的に未達成となりました。すでにリカルド・ロドリゲス監督の退任や新監督就任、クラブからの総括も発表されていますが、サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」で浦和を担当する沖永雄一郎さんと今季を振り返っていきます。

前編では基本的にピッチ上の事象について振り返っていきます。すでにシーズン前半戦までの振り返りを6月にしていますから、総合的な観点で見ていきました。

※文中で敬称を省略します。

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沖永雄一郎(エル・ゴラッソ浦和担当)
山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』の浦和担当に。
https://twitter.com/RMJ_muga

轡田哲朗(フリーランス)
埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。
https://twitter.com/tetsu11k

数字を見れば悪くない「相手なり」になってしまったチーム

轡田 浦和レッズの2022年シーズンが終了し、リーグ戦は勝ち点45の9位。内訳は10勝15分9敗で48得点39失点でした。失点数は比較的優秀で、良い方から見て5位タイ。40失点を切ったのは6チームだけでした。一方の得点数はリーグ4位。3位までに入ったクラブの次に来ています。横浜F・マリノスの70得点35失点はちょっと抜けて素晴らしいですが、こうやって得失点の数字を見ると悪くない。まずはトータルしてどんな印象がありますか?

沖永 仰るとおりで、順位以外の数字を見ればそれほど悪くなかった。満足いくシーズンではなかったですが、悪いシーズンとも言い切れないかと思います。4失点が2試合、3失点が2試合と複数回大量失点をしながらも失点数はリーグ最少5位タイで、クリーンシート(無失点試合)が10試合あります。これはチームの守備力が高かったというよりも、リスクを最小化する攻撃ができていたことを示しているのではないかと。ただ一方で、得点数についてはジュビロ磐田などから固め打ちした面もありました。

リカルド監督2年間のざっくりした印象として、チャンスを決めきれずに勝点を落とした試合もありましたが、一定以下の力のチームに確実に勝つ力、というのは備わったのではないかと思います。

轡田 いったん、データとして事実を確認すると沖永さんの印象通りに磐田には2勝していますが、実はシーズンダブルを決めた唯一の相手です。逆に、セレッソ大阪以外にダブルを決められた相手もいません。4位の鹿島アントラーズは上位3チームとの対戦に6戦全敗している。でも、7位の柏レイソル以下のチームには1敗もしていないんです。彼らは途中で監督が代わっていますが、典型的な力の差がピッチに表れやすいチームと言えるでしょう。

その観点で浦和を見ると、確かに1試合あたりの平均獲得勝ち点を見れば下位を相手にした方が多少は数字が良いですが、明確な差がありません。どんな相手にもそれなりの試合をしているといえます。もう少し噛み砕いた言い方をすると「相手なりのチーム」となる。この辺はリカルド監督の展開するサッカーの志向が影響している部分が大きいでしょう。

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