3年計画の総括を読み解く。「スピード感」や「環境設定」の意味するもの エルゴラ浦和担当、沖永雄一郎さんと振り返る(中編)

<全3回中の2回>

浦和レッズの2022年シーズンが終わりました。2019年末に3年計画を打ち出したクラブは、その総括も発表しています。ボリューム感のあるものをどのように読み解き、フットボール本部のメッセージをどう解釈していくべきなのか。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」で浦和を担当する沖永雄一郎さんと今季を振り返りながら議論していきます。

前編では、ピッチ上に表現されたサッカーについて意見を交換しました。

※文中で敬称を省略します。
前編はこちら
後編はこちら

沖永雄一郎(エル・ゴラッソ浦和担当)
山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』の浦和担当に。
https://twitter.com/RMJ_muga

轡田哲朗(フリーランス)
埼玉県出身。浦和生まれの浦和育ちでイタリア在住経験も。9つの国から11人を寄せ集め、公用語がないチームで臨んだ草サッカーのピッチで「サッカーに国境はない」と身をもって体験したことも。出版社勤務の後フリーに。
https://twitter.com/tetsu11k

縦への速さとボール保持の両立は時間軸を読み取るもの

轡田 11月9日にクラブから、今季並びに2019年末に打ち出された3年計画の総括が出されました。もちろん、細かく分野ごとに見ればピックアップすべき要素もあるんですが、まずは全体に目を通しての感想や、こうしたステートメントが出ることの意義について感じることはありますか?

沖永 最初に感じたのは、事前に西野努テクニカル・ダイレクター(TD)のツイートで資料がチラ見せされていた影響もありますが、思ったより簡潔な内容だったなというものです。

ただ、こういった総括はどこまで内容を開示するか、どの程度サッカーに詳しい層へ向けた内容にするかなど、出し方が非常に難しいと思います。なので、あまり一言一句を取り上げて賛否を論ずるのは違うのかなとも思いますが、大枠としてクラブがどう考えているかを知るのに貴重な資料だと思います。こういったことが提示されたこと自体はポジティブだと思います。

轡田 まさにその通りで、内部資料や内部文書ではなく公開されたことに一定以上の意義があると思っています。それと同時に、恐らく本当に痒いところ全てに手が届くような文書にしようと思えば、どこかで個人に対しての責任、個人への批判に近いニュアンスが入らざるを得なくなると思います。それが公開文書に必要かと言われると疑問符が付きますから、「このような不具合があった」ということに対して、その原因をどう考えているかを深堀りしたことを文書には載せづらいでしょう。そこはきちんと内部で共有されて対策がされていれば良いですし、これと同系統で1つ踏み込んだ内部文書があれば良いと言いますか。だからこそ取材機会の設定は欲しいところでしたが、すでに新監督の就任が予告されているので全くのノーチャンスということもないかとは思います。

沖永 ステートメント発表に際して、会見で質疑ができると思っていたのでそこは少し残念でしたね…。

轡田 そういうことなのでステートメントを順に見ていこうかと思いますが、まずは「チーム」の項目について。このポジショナルの要素と縦への速さを両立すべくやってきたという前提に始まる部分について、沖永さんの所感はいかがですか?

ここから先は

3,867字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?