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夢幻星#19

「真珠遅いな〜」
相変わらず真珠は待ち合わせ時間に遅れている。まぁいつものことだから慣れてるけど。
待ち合わせ時間から10分ほど経った頃、走ってこちらに向かってくる真珠が視界に入った。
「おーい、こっちこっち」
俺は真珠に分るように大きく手を振った。笑顔と申し訳なさそうな顔が混じった表情で真珠が近づいてくる。
「ごめーんまた遅刻しちゃった」
走ってきたのか真珠は息が上がっている。
「まぁいつものことだからな」
そう言って俺たちは街を歩いた。
10月中旬の過ごしやすいこの季節は、いつにも増して人通りが多いような気がする。

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どうやら今日は真珠が何か買いたいものがあるらしく、俺はそれに付き合う形になっている。女の子の欲しいものなんて全く詳しくないから、俺はただただ真珠についていくだけ。
何件かお店を回った後に立ち寄った古着屋のアクセサリー売り場で、足が止まった。
「ねぇねぇ、これ可愛い」
ガラスケースに並べられているバングルを、目を輝かせながら眺めている。
「へぇ、バングルか。確かにここのお店のアクセサリー可愛いよね。買う?」
「うん!一目惚れした。買う。おそろっちにしよう」
真珠はおそろっちがいいというが、見た感じ同じものはないように見える。多分全部ハンドメイドで作ってあり、どれも世界に一つしかない商品なのだろう。
店員さんにガラスケースを開けてもらい、似たようなバングルを二つ取り出してもらった。
バングルの裏には「t」と刻印がしてあった。
多分作った人が自分のイニシャルを掘ったのだろう。
バングルを手に取り早速手首につけてみると、ピッタリだ。
真珠の方を見ると、つけるのに少し手こずっているように見えるが、少しすると、得意気にバングルがついた手を俺の前に見せつけてきた。なぜかとてもドヤ顔だ。
「ピッタリ。よし決まりだな」
「うん、めっちゃ可愛い」
「すいません。これください」
一度手首からバングルを外し、レジへと向かった。
一目惚れしてからレジで購入するまで、一度も値札を見てなかったけど、バングルって結構いい値段するんだな。レジに表示された金額を見た時、少し狼狽してしまったけど、気がつかれてないことを祈ろう。そんなダサいとこ見られたくない。彼女の前ではいつだってかっこいい男でありたいものだ。

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「まだ、夕飯を食べるには少し時間が早いけど、どうする?」
本日の目的を達成した私たちはぶらぶらしていた。
う〜ん確かになんか中途半端な時間だな。あ、そういえば先週美咲が麦くんに会わせて欲しいって言ってたな。
「そういえば私の大学の友達が、麦くんに会ってみたいって言ってたよ。バイト先この近くだったから行ってみよっ」
「おっけ。みさきって人?」
「うん、なんでわかったの?」
「大学の友達の話するとき、そのみさきって人しか登場しないから、その人かな〜って」
私が通う大学の話をする時は、必ずと言っていいほど美咲が登場するからそれで麦くんも名前を覚えたのだろう。
「あ、そっか」
美咲はここから歩いて5分くらいにあるアパレルショップでバイトをしている。前に一度行ったことがあるけれど、私が普段着ている服とは系統が違いすぎるからそれ以来行っていない。
いきなり行ったらきっと美咲はびっくりするだろうな。ってか、この道で合ってたっけ?迷子になったらどうしよ。いやでも確かこの通りで合ってるはずだ。
あ、やっぱり合ってた合ってた。見覚えがあるお店が視界に入ってきた。
「あのお店?」
「そうそうあのお店」
「また俺が入りにくそうなお店だな〜」
「そうだね。麦くんは絶対にこんなお店行かないもんね」
お店が近づくにつれて明らかに歩くのが遅くなっていく麦くんがとても可愛く見えてきた。

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美咲はすぐに見つかった。まだ私が店に来たことには気がついていないみたいだ。
「あの人が美咲だよ」
「へぇ、なんかみた感じ真珠とタイプ全然違うように見えるな」
「確かに見た目は私とは全然違うタイプかも。あっ」
どうやら美咲が私たちの存在に気が付いたっぽい。かなりびっくりしている様子だが、すぐに満面の笑顔になりこっち来て的な感じで手招きをしている。
「あ、気が付いたっぽいね。みさきって子呼んでんじゃん」
「うん。いこ」
幸いなこと?にお店はそれほど忙しくなさそうだったので、話すことができそうだ。
「まさかお店に来るなんて思ってなかったから、めっちゃびっくりしちゃったよ」
「思いつきだからね。びっくりさせようと思って」
「初めまして麦です。真珠からみさきさんの話たくさん聞いてたんで、一度会ってみたかったです」
「初めまして美咲です。こちらこそ真珠が麦さんの話ばっかりするもんだから、早く会ってみたかったですよ」
なんか友達と彼氏が話しているのを見るのは何だか変な気持ちになった。そして何だか少し恥ずかしい。
「話に聞いてた通りめちゃいい男ですね。年下のうちにも敬語で話してくれるもん」
「え?そうですかね?普通じゃないですか?」
「うち敬語苦手だから、タメ語で話しちゃうんだけど」
「あ、いいっすよタメ語で。俺そういうの全然気にしないので」
さすが美咲だ。距離の詰め方が異常に早い。もうタメ語で話してる。
「この後って2人でご飯とか行くの?」
「うん。あともう少ししたらご飯食べ行こか〜って話してた」
ね?みたいな感じで麦くんを見つめてみた。
「うちも行っていい?なんか色々聞きたいことあるし」
「私はいいけど、麦くんは?」
「俺も全然いいよ」
「よしじゃあ決まりね。仕事終わったら連絡するっ」
これ以上仕事の邪魔をしてはいけないので、私たちは美咲のバイト先を後にした。

#20に続く

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