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挿絵付き小説サードアイ

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#サードアイ

サードアイ ep14 帝王の矜持

サードアイ ep14 帝王の矜持

 私は生まれた時から王位継承者として育てられてきた。幼い頃から両親は常に公務で忙しく家を空けがちで、私たち兄弟の世話は乳母と家庭教師に任されていた。
 乳母はとことん私たち兄弟に甘く、どんなわがままでも優しくきいてくれて、教師たちは子供たちの気がそがれぬように工夫をこらして学問を教えてくれた。一方で、大人の目の届かぬところでは、兄弟で悪さやいたずらを散々したものだった。
 長じてからは、両親の仕事

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サードアイ ep12 軍法会議

サードアイ ep12 軍法会議

 三次元から魂を運ぶという初任務の完了後、俺はしばらく隔離されて身体中のあちこちを検査された。その結果、異常なしということで、ようやく病棟から出してもらえた。
 どうやら俺のファイアーレッドアイの能力が覚醒したらしい。ブルーノによると、それは予期せぬ早さだったようで、しかも俺の能力は特殊だということだ。
「こんな能力、見たことも聞いたこともありやせんぜ。通常は三次元から帰還するには、行きと同じルー

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サードアイ ep10 心の魔物

サードアイ ep10 心の魔物

 オーエンの演習用の体験ツアーが終わったあと、一緒にテラス席で食事をしながら、ボクは、この間の旅で見てきた自分の過去世についての話をした。
「ボクが七歳になる年に、父が何かの宗教にはまってしまって。あまり知られていない宗派で、戒律が厳しくて、父はそれを家族に強要するようになったんです。以前の父とは別人になってしまって、つべこべ言わずに言うことを聞けと、急にボクと姉に厳しくなって。ボクは怯えると同時

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サードアイ ep 9 過去との遭遇

サードアイ ep 9 過去との遭遇

 ステファンに案内されたところは、先ほど通ってきた廊下の色と同じ赤紫色のドーム状の部屋だった。座り心地のよさそうなソファーや椅子が何台かあり、そこに向かって赤い絨毯が敷かれている。絨毯の上を歩いているのにしっかりと足音がする。やけに音響のいい部屋だった。
「あちらに座ってください」
 ステファンに示されたのは奥にある革張りの一人掛け用の椅子だった。座ってみると、身体がちょうどいい具合にすっぽりと包

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サードアイ ep8 ラボ見学 

サードアイ ep8 ラボ見学 

 俺の術後の回復を待って数日後、ステファンが研究室を案内してくれることになった。三次元の世界からこっちに移動するのは、思いのほか体力を使ったようで、どうやら部隊長との話の途中で意識がとんだらしい。それでもって、俺のサードアイは開いちまってたってことで、額にはめられていた装置は外されたそうだ。額の傷はもう消えていて痛みもないが、なんだかむず痒い感じがまだ残っている。
 ステファンが迎えに来た。今日は

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サードアイ ep 7 仲間割れ

サードアイ ep 7 仲間割れ

 男のサードアイがすでに開いてると知って、ブルーノはなめらかな自分の額をパチンと叩いた。
「あいや!間に合わなかったでやんすか。うまくはめ込んでおいたのに」といって、そのまま頭をかかえこむ。
「うまく適合しやすかね。アリフみたいにならなきゃいいんでやんすが」
「見た感じでは、おそらく問題ないと思うわ」
 すると、男が話に割り込んできた。
「おい、その、アリフってやつ、オレの額に何か貼り付けた老人か

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サードアイ ep3 額に指

サードアイ ep3 額に指

 公園のベンチまで男と連れ立ってきた。緊張からか、息が切れてしまい、変な汗をかいていた。できるだけ平静を装って男に声をかける。
「とにかく、ここに座ってください」
 男は怪訝そうな顔をしながらも、どすんと腰かけた。ボクが男を見おろす形となる。
「なんなんだよ、急にこんなところまで引っ張ってきやがって」
「すみません。ただ、ちょっと、そのおでこの傷が気になって」
「はぁ?でこの傷?」
「ええ、何だか

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