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「ストーリーを売る」を考える 1

皆さんもご存知のとおりここ最近の大きな傾向として、モノやサービスを売っていくうえで『ストーリーが大事だ!』ということがしきりに喧伝されています。

猫も杓子もストーリー礼賛状態といってもいいような雰囲気に対し、行き過ぎたストーリー・マーケティングみたいなものに対する警鐘を鳴らす意見も出てきています。




私自身も自分たちの結婚指輪事業を育てる中で、実際にストーリーを意識した施策や活動も行ってきましたし、その結果としての効果や効能みたいなものもおおいに実感しています。

各所で言われているようにストーリーのある商品やサービスはやっぱり売れるし、そうでないものは埋没していくということは事実かなと思います。

ただストーリーというものがちゃんと価値を生み出すためには、それ相応の条件みたいなものがあるんじゃないかなということも感じています。

結論からいうと、IKEUCHI ORGANICの池内さんが語っておられるのと似たようなことになると思うのですが、

つくったモノ自体や、モノづくりに向き合う姿勢、モノを届けていく姿が、結果的に「ストーリー」になっていく

自分たちの事業に照らしてみて、改めてストーリーマーケティングのあり方(なんじゃそりゃ笑?)みたいなものを、考えてみたいと思います。

経験経済という概念

ストーリーを売る的な概念が芽生えたのはいつ頃なのか正確にはわかりませんが、私が知る限りでは経験経済(エクスペリエンス・エコノミー)という本の中に、ストーリーを売るという考え方が明確に示されています。

ご存知の方も多いかと思いますが、世の中が成熟し多くの商品がコモディティ化する社会において、商品・サービスの次に、経験価値というものが消費の対象となる、というのがその趣旨です。

経験経済の中で必要となる企業の構成要素も提示されていますが、その下敷きとなっているにはエンタメ(お芝居や映画など)の世界です。

最も有名な事例でいうとディズニーランドの事業活動でしょうか。物語を届けるために、前提となる設定(世界観)があり、そのための舞台装置があり、キャスト(出演者)が演技をする。そしてそこに顧客も自ら参観することで物語を共有し、消費する。そして満足を得る、という仕組みです。

ここで定義されている、

1.世界観 2.舞台装置 3. キャスト 4.参加を促す仕組み

業種や業態によってディティールは異なりますが、括るとこの4要素が、経験価値を届けるための仕掛けということになります。この要素の下敷きには、お芝居や映画・ドラマをつくる際の脚本やそれに基づく構成要素があります。

この4つの要素に基づき自分たちの事業を紐解くと共に、ストーリーを売るということの正しいあり方について考えてみます。

物語の背景となる世界観

オーダーメイドでブライダルリングをお仕立てするのが私たちの事業です。結婚指輪自体がいわゆる買い回り品でなく、基本的に一生に一度の買い物なので皆あまりピンと来ないかもしれませんが、実際のところオーダーメイドで結婚指輪を作っている、というだけであれば同じことをやっている人たちは、法人/個人を問わずまさに星の数ほど存在しています。

そんな中で、まず何より大事なこと、それが自分たちの世界観をどう確立するかということだと考えています。物語には必ず背景が必要です。この背景がクリアであることがその後の様々な要素や活動に影響を及ぼしていきます。

たくさんよりも ひとつをたいせつに

ithはひとりの女性職人の小さなアトリエで生まれました。
ゆるやかな時間が流れるアトリエで、
心ときめく結婚指輪をひとつひとつ大切につくっていく。
その想いがithの指輪づくりの原点です。

https://www.ateliermarriage.com/made_to_order/about.html

これが私たちの世界観を言葉にしたものですが、基本的にはここに私たちの活動や目指す方向を表す中核要素がほぼ含まれています。

世界観というとなんだか大層なものに聞こえますが、誤解を恐れず大雑把に言うならば、自分たちの事業のルーツである場所、仕事の内容、大切な思いや価値観を言語化する、ということだと考えています。

私たちの例でいうとこんな感じです。

場所:女性職人のアトリエ
仕事:オーダーメイドの指輪づくり
思い:ひとつひとつ大切に

世界観づくりで大事なこと

ここが明確になってくると、舞台装置(店舗やビジュアル)、キャスト(働く人たちのあり方)などが自ずと決まってきます。そういう意味で大事なことは、言葉を頭の中に浮かべてみて、舞台やそこで働く人の情景が想像できるか、ということですが、同時にそこに嘘がない、できる限りリアリティがある、ということが、継続的な強さに繋がってくるように思います。(その点が完全フィクションOKのエンタメとの根本的な違いなのかなと思います。)

さらっと書くと簡単そうに思える作業なのですが、実際にやってみるとここにたどり着くまでにそれ相応に苦労するのではないかと思います。

事業を始めてある程度の基盤がある状態まで続けてきている場合はまだしも、新規事業でそもそも前提となる仕事をこれからつくる状況だったり、長く続けている生業があったとしても、そもそもその仕事にあまり自信が持てていない(故に、何か新たな取り組みをしなければと思っている)という場合、自分たちがこれだと思う定義に自信を持つこと自体が難しい、というのが人の心理だと思うが故です。

私たちも当初おおいに迷いながら言葉を定めていきましたが、そのための指針になるのがいわゆる事業・マーケティング分析(3C分析,STP分析など)だと思います。この角度での話もそのうちできればと思います。

※ここまで書いてきてなかなか長文になりそうなので、何回かに分けて書こうと方針を転換しました。

今回のまとめ

ということで、いったんまとめますと、

・「ストーリーを売る」という流れのもとに経験経済というものがある
・経験経済では経験価値が消費の対象となる。
・経験価値を生み出す仕組みの下敷きとして、エンタメ的(というか脚本的)な構成が役立つ(1.世界観 2.舞台装置 3. キャスト 4.参加を促す仕組み
物語の背景として世界観がとても重要
・世界観をつくるとは、自分たちの事業のルーツである場所、仕事の内容、大切な思い、価値観を言語化すること
・世界観で大事なことは、頭の中に浮かべてみて、舞台やそこで働く人の情景が想像できるか、そしてそこに嘘がない、できる限りリアリティがあるか

次回からは、世界観に基づいてそれぞれの構成要素をどう具体化しているか、その際に大事だと考えていることなどについて書きたいと思います。





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